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RPG~召喚から始まる魔王討伐~  作者: 柊雪葵
第3章 魔王城への道
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 それはいざ魔王城へと意気込んでいた進攻初日のことだった。



「マスター、始まりの街ですか?」



「ああ、始まりの街に行きたい」



「ミュナーから進攻した方が効率的だと思いますが……」



 これはあれだな。

 話が噛み合ってないやつだ。



 別に好き好んで始まりの街から冒険を開始したいわけではない。

 だからそんな憐れむような目で見ないでくれ。



「違うよ。何かあった時のために保険をかけておきたいんだ」



「それと始まりの街がどう関係あるんでござるか?」



「別に始まりの街である必要はないが、あそこなら周りを気にしないで済む場所を用意しやすいからな」



「はい! もう少し分かりやすい説明をしてください」



 エリスは相変わらずだな。

 いや、これはこれでいいんだけどな。



 ただこいつが俺よりも歳上だと思うと、やっぱり良くない気もしてくる。



「多重召喚をし過ぎたせいで誰をどこから呼び出しているのか分からなくなってだろ? だからそれをみんな同じ場所に統一しておきたいんだ」



「……何度か解除された場所が悪くて人様に迷惑をかけたことがあったからな」



「召喚って便利なようで不便な能力なのね……」



 なんであれだけ火花をバチバチ散らしていたゼノとミリスがここまで意気投合しているのかはしらないが、これを不便だと言われてしまったら俺のアイデンティティが無くなってしまうだろ!

 ホントやめろよ!



「つまりは緊急退避専用の場所を用意したいというわけか。(それがし)は賛成だ」



「それならば拙者に任せるでござる」



「ござるの子もたまには役に立つのね……」



「ミリス殿までござる呼ばわりでござるか!? 拙者は正成(まさなり)でござる……」



「場所の確保はできたし、それじゃ始まりの街へ行こうか」



「スルーは酷いでござる……」



 少し拗ね始めた正成はさておき、俺たちは始まりの街へと向かった。






「──召喚士殿、無事場所を借りられたでござる」



「そうか。ならみんなは中へ入って待機していてくれ」



「…………お兄さんは?」



「俺は外でみんなを召喚するから少しの間別行動な」



「…………」



 説明を聞いて納得してくれたのか、サシャがコクコクと頷く。

 そしてリリィに手を引かれて喫茶店の中へと入っていった。



「それじゃ早速呼び出すとするか──召喚!」



 エスシュリー(仮)を操作して第一陣を呼び出す。



 まずはリリィ、ゼノ、エリスの3人。

 これは今始めて気が付いたことだが、召喚は3人までしか同時にできないらしい。



「召喚!」



 続いてミリス、サシャ、アークを呼び出す。



「召喚!」



 最後に正成を呼び出して任務完了。

 さて、冒険を開始するか……



 そう思った時だった。



「──あの、この人知りませんか!?」



 リリィが人探しをしている女性に声をかけられていた。



 ──てかあいつ……



「それなら──」



「リリィ。さっさと行くぞ」



 ローブのフードを深めに被ると、声をいつもより低くしてそう呼びかける。



「えっ、あの、でも……」



 もちろん優しいリリィはこういうところで困っている人をほっとけるような性格ではない。

 しかし今困ってるのは俺なんだよ……

 気付いてくれよ……



 そんな俺の心の叫びは届くわけもなく──



「こいつ召喚士じゃねぇか……」



 空気をよまないゼノの一言で俺の必死の抵抗は徒労に終わってしまった。



三厳(みつよし)! やっと見つけた!」



 その女性は俺の元へと近付いてくる。

 そしてその華奢な手を俺の頬へと降り下ろしてきた。



「危ないでござる!」



 その危機を察したのか正成がヘルプに入ってくれる。

 こうなったら仕方ない。



「忍法──変わり身の術でござる!」



 パシン!

 乾いた破裂音がまだ静かな街に響き渡る。



 女性の放った渾身のビンタが俺に盾にされた正成に炸裂した音だ。



「召喚士殿……それはないでござるよ」



「さすがにそれはないわな」



「まったくだ……」



「──いや、やったのはあんたでしょ!」



 さらっとゼノに同調してみたが、流しては貰えなかったようだ。

 もちろんツッコミこそすれど、女性の怒りは治まる様子はない。



「あの……マスターのお知り合いですか?」



「知り合いも何も私はこの馬鹿──三厳の妹よ!」



 それが誰も予想していなかったであろう、俺と妹の美月(みつき)の感動もへったくれもない再会だった。



「いろいろと言いたいことはあるがここじゃなんだ。場所を移すぞ」



「そう言ってまた逃げるつもり? クソ兄貴のしそうなことくらい分かってるから」



 まったく……

 本当に場所を変えようとしただけなのにこの言い分かよ。



 確かに俺が昔からそんなことばかりしてたのが悪いんだが……



「逃げねぇから……リリィ、野暮用ができたから他の連中をフィールドまで連れていってくれ」



「はい。分かりました。それじゃあ皆さん行きましょうか」



「──ああ、そうだ。移動が完了したらリリィは戻ってきてくれ」



「えっ!? はい」



 リリィたちが全員いなくなる。

 そして指示通りリリィだけが戻ってきた。



「美月、とりあえず場所を変えるぞ」



「このまま見物になるのも癪だから許可するわ」



 俺は兄としての威厳など一切なく場所を移す。

 移すと言ってもすぐそこの喫茶店内だけどな。

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