17
レーグス討伐から早くも10日が経過した。
俺には7日分の記憶しかないがな。
そんな俺の主観はさておき、この7日間の出来事を思い返してみる。
3日目にようやくまともに動けるようになり、5日目にリリィとライドラの様子を見に行った。
その時に戦利品であるレーグスの革や牙を剥ぎ取り、ついでにライドラの巣に落ちていた鱗も手に入れた。
うん。
特に何もしてないな。
その間にも残りのメンバーは汗水垂らして戦ってたというのに、清々しいほどに何もしてなかったな。
そのくせ戦わないのにライドラの鱗とカジノで入手した炎と雷属性の魔石を素材にして剣を二振り作っている。
使えるかどうかは別としてこれで俺も三刀流だ。
そんな三刀流なんて冗談はさておき、ライドラの鱗は素材としてはこれ以上にないものだった。
物理にも魔法にも耐性が強く、切れ味が鋭い。
それに加えて金属と違って軽い。
俊敏さを求める正成にとっては、ライドラの鱗で作った漆黒のクナイが最高の武器になったようだ。
以上7日間の総括終了。
そして今日も俺だけは平凡な1日が過ごせると思っていた。
「──マスター! ミリスからコンタクトが入りました。仲間になってくれるそうです!」
これがフラグというやつか。
きっとそうなのだろう。
いやそうに違いない!
散歩をせがむ仔犬の様に目を輝かして駆け寄ってくるリリィを見て、本能的にそう判断していた。
「そうか。良かったな」
「どうしてそんなに他人事なんですか!? ほら、マスター、迎えに行きますよ!」
リリィが袖を引っ張り俺も連れていこうとする。
その仕草は可愛いと思う。
ワーティを使って無理に連れていこうとしないところもポイント高い。
ただそれは、その後に面倒なことが待っていなかったらの場合なんだよな。
まだ何かが起こると決まったわけではないんだが、やっぱりこれはフラグなんだよ。
「マスターはついてきてくれないんですか?」
「…………」
リリィは必殺の上目遣いを放った。
召喚士は大ダメージを受けた。
うん、もうダメだ。
覚悟を決めよう。
「……はぁ、分かったよ」
「はい! それでは早速ミュナーまで行きましょう!」
そんなこんなでミュナーまで行くことになった。
いや、移動は一瞬なんだけどな。
「──到着しました」
「リリィ急ぎすぎだ……」
「えっ!? ……あっ、すみません」
こういった場合気にしているのは自分だけで、周りはそんなこと気にしていない。
つまり自意識過剰というのが世の常なのだが、それでも流石に装備をほとんど解除した部屋着に近い状態で移動されるのは辛いものがある。
ここはとっとと装備を整えるとしよう。
エスシュリー(仮)を操作して防具職人から仕立てて貰った防具一式と月詠のローブを装備する。
武器は最初に作った剣だけ。
さすがに新調したあの二振りとゼノに返し損ねている魔剣はいらないだろう。
「これでよし」
「はい。それでは行きましょう」
そういうとリリィは町の外へ向けて歩き出す。
「リリィ、そっちは外だろ?」
「説明するのを忘れていましたが、今ミリスは進攻部隊の一員として町から結構離れたところまで出向いているそうです」
「ということは?」
「はい。そこまで行って合流します」
帰りたい。
暖かい我が家が待っているわけではないが帰りたい。
「マスター、そんなに嫌そうな顔しないでくださいよ」
「だって病み上がりだし」
「もう1週間は経ってますからね」
「最初からこんなことになると聞いていたら絶対ついて来なかったし」
「子どもじゃないんだからわがまま言わないでください」
「俺がわがまま言わなかったためしなんてあったか!」
「そう言われると……確かになかったです」
自分で言ってて辛くなったし、肯定されてさらに辛い。
「──やっぱりマスターを無理に連れていくわけにも行きませんからね……」
リリィが考え込む仕草をみせる。
そして何か閃いたのか瞳を輝かせた。
聞くまでもなく嫌な予感しかしない。
「そうです。ミリスの元まではワーティで移動しましょう! それならばマスターもついてきてくれますよね?」
なんでこの子はこういうときにはそういうことに気付くんだろうね。
はあ……こうなったらついていかざるを得ないじゃないか。
「分かったよ」
「我の記憶の欠片よ。時を紡ぎ我をかの地に誘い賜え──ワーティ!」
「──えっ、リリィ!? どうしてここまで!?」
「え? ミリスが迎えに来て欲しいと言ったんじゃないですか」
「言った。確かに言ったけどそうじゃなくて、どうしてここにピンポイントで来れたのかって聞いてるの」
「私も日々進化していますので」
困惑するミリスと、自慢気なリリィ。
そして何が起きてるのかすら分かっていないだろうミリスの仲間が4人。
思っていたよりも少ない気がするが、今はそんなこと言ってる場合じゃないかもしれないな……
「──リリィ!」
「はい、任せてください!」
敵の気配を感じ、リリィに呼びかける。
返ってきたのはとても頼りになる言葉だった。




