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RPG~召喚から始まる魔王討伐~  作者: 柊雪葵
第2章 雪山の黒龍編
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「なあライドラ。狭くないか?」



「狭いというよりも窮屈だ。下手に身体を動かそうものなら壁などを壊しかねん」



「だよな。でもここが一番大きい部屋なんだ」



「それは分かっている。なるべく壊さないように注意しよう」



 ライドラもそうは言っているが、例え不可抗力であったとしてもあのクソロリコンチキン国王は文句を言ってくるんだろうなと思う。



 別に黙らせればいいだけなんだが、修繕費を求められてらたまったものじゃないからな。



「よし、ライドラに命令をしよう!」



「どうしてそうなる……」



「ほら命令は絶対だから壊すなって命令したら謎の力が働いて無意識の動きがあっても何も壊れずに済むかなって」



「そういうことか。ただそんなにうまくいくものなのか?」



「やらないよりはましなレベル。やったことないしな」



「なぜそこで笑うんだ……」



「まあ、そんなことより命令しとくぞ。──ライドラ、お前がこの部屋及びこの部屋の調度品を破壊することを禁止する!」



「お、おう。何も変化がないようなんだが……」



「少し動いてみて」



「──あれ?」



 少し大きめに動いたライドラの尻尾が、予期せず壁にぶつかろうとしたところで止まる。



 ライドラも身体を動かそうとしているようだが、何かに近付いた段階で強制的に止まってしまうため戸惑いを隠せないようだった。



「つまりこれは成功ってことだな」



「ああ、意図的に壊そうとしても、そうでなくても壊すことはできないな」



「よし、これでライドラを安心してここで監禁することができる」



「か、監禁!?」



「ああ、明日の朝まで監禁する」



「その監禁という言い方は止めろ! 物騒じゃないか」



「え、でもこういうの監禁って言わないっけ?」



「それを言うなら──なんだろうな……」



 2人揃って最適な言葉が思い浮かばない。

 もう1人と1頭とかそういうのに拘るのも面倒だし、両方忘れてしまおう。



 言葉が通じるならドラゴンでも魔族でも1人って数えてやる!



「まあ、後で飯とかは持ってくるから大人しくしていてくれ」



「話をそらしたな。食事は肉を希望する」



「分かった分かった。何か適当な動物の肉をたっぷり用意してもらうから」



 そう言い残して俺は部屋を出る。

 これで問題の1つは解決した。

 後はもう1つの問題をどうするかだな……



「──リリィ、入っていいか?」



「マスターですか? どうぞ」



 問題解決のためにやって来たのはリリィの部屋。

 やっぱり武器の話をするなら素材にも詳しいリリィが適任だろう。



「──それにしてもマスターが夜這いしに来るとは思ってもいませんでした」



「いや、夜這いじゃないから……」



 もしかしてリリィまた酔ってる?

 これは退却した方が無難か?



「まあ、そうですよね……それで何の用ですか?」



「氷系の魔剣の作り方が知りたい」



「やっぱりその話でしたか。氷系の魔剣を作るには、まず氷属性を持つ魔石が必要です。ただ……」



「何か問題でもあるのか?」



「ここからミュナーまでの間では氷属性の魔石は相当レアなアイテムなんです。手に入れるとしても相当の大金を積まなければいけないでしょうね」



「大金か……モンスターを討伐しても手に入らないのか?」



「ドロップするモンスターが希少ですし、その上その条件を今のパーティーでは満たすことはできません。確実に手に入れたいならオリベーの街に行けば在庫はあると思いますが……」



「その時に大金がいるわけか」



「そうですね。オリベーというのはカジノの街。確か氷属性を持つ魔石は50万コイン──価格にして5,000万キールですので、それだけの金額を集めるのに相当手間がかかると思います」



 なんというか絶望的だった。



 一瞬カジノでお金を増やせばいいじゃん。

 なんて事を思いもしたが、それを実行に移すのはただの養分思考だろう。



 まあ、一度行ってみてからじゃないと分からない部分もあるけどな。



「明日一度行ってみるか」



「カジノに手を出すつもりですか?」



「いや、賞品として魔石が残っているかの確認だ。後は少しカジノに興味があるから見るだけ見て回りたい」



「まあ、それくらいでしたら」



「ん? 何か問題でもあるのか?」



「そのカジノが色々といわくつきでして……結構イカサマもおこなわれているようなので」



「そういうことか。それならむしろ好都合かもしれないな」



「どういうことですか?」



「イカサマを相手にすればいいなら、純粋な確率論よりも勝率を高くできる可能性があるって話だ」



「そうなのですか? 詳しいことは分からないのでそこ辺りはマスターの判断にお任せします」



「ああ分かった。んじゃ後はゼノにも話があるからもう行くわ」



「はい。それではまた明日」



「ああ、おやすみ」



 エスシュリー(仮)を水準とするならこの世界での技術力は相当高いということになる。



 しかし街では機械が使われていないし、フィールドに出ても道が舗装されているわけでもない。

 そう考えるとエスシュリー(仮)を作り、それを異世界から呼び寄せた冒険者に与えているやつだけが特殊なのかもしれない。



 もしそうだとするならば、カジノ攻略は容易なのかもしれないな。

 むしろそうあって欲しいというのが本音か……



 そんなことを考えている間にゼノの部屋へと辿り着いた。

 どうして連室じゃないんだよと不満も言いたいところだが、無償で部屋を借りてる身だから高望みはやめておこう。



「──ゼノ、入っていいか?」



 応答がない。

 部屋の中には気配があるが、物音1つ聞こえてこなかった。

 おそらくもう寝てしまったんだろう。



「無理に起こすのも悪いし、俺も部屋に戻って休むか……」



 誰に言うでもなく呟く。



 そしてこの世界に来てもう何回目かも分からなくなってきた夜がまた更けていった。

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