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「何を考えておるのだ!」
部屋で待機中の俺たちに飛び込んできたのは耳障りな怒声だった。
「あの山の黒龍を怒らせてこの街が教われたらどうする! 私は民のため断固反対の意を示さなければならん!」
声の主はあのクソロリコンチキン国王。
民のためなどと言っているが、実際自分が怖いだけだろうな。
「ああ、お前とでは話にならん! 召喚士を呼んでくるがよい!」
どうやらあのクソ野郎と話をつけないといけないらしい。
「聞こえておったとは思うが、国王は反対のようじゃ。後は自分でどうにかせい」
「んじゃ勝手に行かせてもらうわ」
「それは無理じゃ。魔物の進攻を防ぐために裏手には結界が張られておる。正規の手順を踏まない限りはあの雪山には辿り着けぬよ」
ふむ、面倒だな。
てか結界があるなら黒龍を怒らしたところで街襲われねぇじゃん。
「まあ、いいわ。とりあえず話だけしてくるわ」
「武運を祈っておるぞ」
そして俺とリリィは部屋を出て玉座の間に入る。
「算段はあるのですか?」
「ないならないで良いとは思うけどな」
「えっ、どういう──」
「召喚士よ! 私は誰の頼みであってもあの雪山に立ち入らせるつもりはない!」
リリィの声を遮った話し合いにすらならない一方的な断定。
こんなのが王様だなんて……
さっさと謀叛でも起こされて死んだ方が国のためだと思うのは俺だけではないだろう。
「それならそれでいい。俺は冒険者を辞めて元の世界に帰るだけだ」
「は?」
「ちなみに魔王討伐の期限が360日程しかないから俺が降りたらこの世界は滅びるだろうが、それはお前の責任ってことになるからな」
「な、何を言っておる!」
分かりやすく狼狽している。
もう少し畳み掛ければ簡単に落ちるだろうな。
「魔王城までの距離は26万バルユーレ。それを地上の敵を殲滅しながら進める冒険者などいないだろう。今さら勇者が誕生したところでそこまで辿り着けなければ何の意味もない! 意味が分かるかチキン野郎」
「チ、チキンだと! こいつの首を引っ立てい!」
ああ、言い過ぎたか……
こいつも紛れなりにも王なのであればもう少し寛大な心というものをだな。
なんて言ってる場合でもないか。
「リリィ、俺がすべて責任は取るからこいつらを城ごとぶっ壊してくれ」
「えっ、はい! 影をも焦がす無数の炎よ。その光とともに世界を闇へと染めゆき、等しく滅びを与えんことを──」
「──ま、待てい! 私が悪かった! 悪かったから……」
デスラーム。
そうリリィが叫ぶことはなかった。
凝縮された魔力はスッと消えていき、王宮滅亡の危機も消滅する。
「……まったく、マスターは手荒なことをし過ぎです」
俺だけに聞こえる小声でリリィが小さく漏らす。
そう言いながらもノリノリで詠唱しているあたり、リリィも同罪なんだけどな。
「それで、どうするんだ?」
「この調子で結界そのものを壊されては堪らない。もう好きにするがよい」
「ほっほっほ、まったく無茶なことをするの。ほれ、これが結界の外へ出るための鍵と、その場所を記した地図じゃ」
「どうも。リリィ、そろそろあいつらも登録が済む頃だから戻るぞ」
「はい!」
リリィが久しぶりにピッタリとくっついてくる。
少し歩きづらいが、まあ、これくらいは何も言わないでおこう。
「──召喚士殿、無事帰還したでござる」
「そうか」
正成たちが戻ってきたのは酒が3杯ほど進んだ後だった。
「それだけでござるか?」
「は?」
「何でもないでござる……」
「それでゼノちゃん。何の職業になったんだい?」
「気持ち悪いからちゃん付けすんな。職業は魔剣闘士だ」
「何それ?」
「魔法も使えるグラディエーター。魔法剣士の最上級職ですね」
「そうか」
ああ、酒がうまい。
もうずっとこうしていたいくらいだな。
「おい、召喚士、お前大丈夫か?」
「だいりょうぶだから」
呂律何それ美味しいの?
ああ、でも頭が少しボーッとしてきた。
「とりあえず自己紹介からはじめないとねー」
「そうですね。私はリリィ・エフ・シュリーンギア。職業は賢者です。主に攻撃呪文を専門にしていますが、防御魔法や移動魔法なども使えます」
「ゼノウィリア。魔剣闘士だ」
「それだけでござるか?」
「あ? うっさいぞござる」
「だから拙者は正成でござる! 職業は忍者でござる」
盗賊だろお前。
そう思いはするが、もうツッコム気力もない。
「私はエリス・シュレイザーです。ミリス・シュレイザーの妹で、職業は姉と同じくパラディン。冒険者としてはまだまだですが、皆さんの足を引っ張らないよう精一杯頑張りたいと思います」
「最後はマスターですね。ってマスター、マスター大丈夫ですか!? マスター──」
なんか遠くでリリィが叫んでいるような気がするけど、おそらく気のせいだろう。
それよりもなんか眠たくなっていた──




