番外編⑵ 三人のキャリアウーマン――稀衣、美和子、美晴との五年ぶりの再会❷
番外編⑵「三人のキャリアウーマン――稀衣、美和子、美晴との五年ぶりの再会❷」。
前編では、主人公の母・稀衣が五年ぶりに以前勤めていた会社へ復帰。
昔の上司や部下、そして社長からも温かく迎えられた稀衣は、そこで思いがけない二人との再会を果たしました。
美和子。
そして美晴。
かつて同じ会社で働き、仕事だけでなく私生活のことまで語り合った三人。
五年ぶりとは思えないほど、再会した瞬間から昔と変わらない関係へ戻っていきます。
そして今回は、仕事を終えた三人が久しぶりに食事へ。
そこで話題になったのは――この五年間のこと。
仕事。
結婚。
子育て。
そして、それぞれの家族。
稀衣は息子と娘・珠香について。
美和子は自分の家族と息子・俊介について。
美晴は二人の娘――麗華と麗音について。
何気ない家族の話だったはずなのに、会話を続けるほど次々と意外なつながりが明らかになっていきます。
美和子の息子・俊介と美晴の娘・麗音は、同じ中学校で一年生から三年生まで三年間ずっと同じクラス。
さらに――。
稀衣の娘・珠香と麗音まで、小学校時代の同級生だったことが判明します。
そして稀衣が最も驚いた事実。
美晴の長女・麗華。
それは――人気グラビアアイドルの藤宮麗華。
つまり、美晴は第一章のヒロイン・藤宮麗華の母親だったのです。
しかし。
三人はまだ、すべてを知ったわけではありません。
稀衣は息子の恋人が白河綾音だと知っています。
けれど、それは息子と綾音の大切な秘密。
だから美和子や美晴にも勝手には話しません。
一方、美晴も麗華の夫について、公表されている以上のプライベートを詳しく話すことはありません。
母親たち。
子供たち。
藤宮麗華。
白河綾音。
それぞれの秘密を守っているからこそ、あと少しのところで全員の関係はつながらない。
今回は、そんな“不思議なすれ違い”も描かれる後編です。
五年ぶりに再会した三人。
稀衣。
美和子。
美晴。
仕事を終えた三人は、会社から少し離れた場所にある落ち着いた雰囲気のレストランへ向かった。
かつて三人で何度も利用した店。
ただし、店内は五年前とは少し変わっている。
「ここ、まだあったんだ」
稀衣が入口を見上げる。
美和子が笑った。
「あるよ。私と美晴、たまに来てるから」
「二人は今でも一緒にご飯行ってたの?」
「行くよ」
美晴が当然のように答える。
「私たち、小学校から高校までずっと一緒だったし」
「そうだった」
稀衣が思い出す。
美和子と美晴。
二人は単なる会社の同僚ではない。
小学校から高校まで同じ学校に通っていた幼馴染。
腐れ縁。
そして大親友。
そこへ会社で知り合ったのが稀衣だった。
「私だけ途中参加だったのよね」
「途中参加って何よ」
美和子が笑う。
「でも会社に入って稀衣と知り合って、いつの間にか三人になってたね」
「本当」
三人は店内へ入った。
◇◇◇
席に着く。
注文を済ませる。
そして。
数秒。
三人とも顔を見合わせた。
「……何から話す?」
稀衣が聞く。
美和子が即答する。
「五年間」
「広すぎる」
「だって五年だよ?」
「いろいろありすぎるわよ」
美晴も笑う。
「じゃあ、まず稀衣から」
「私?」
「だって五年間いなくなった本人だから」
「人を失踪者みたいに言わないで」
三人が笑う。
こういう会話。
懐かしい。
五年という時間が一瞬で消えてしまったようだった。
「でも」
美晴が少し真面目な顔になる。
「本当に戻ってきてくれて嬉しい」
「私も」
美和子が頷く。
「最初、廊下で見たとき似てる人がいると思った」
「私も二人を見たとき驚いた」
「何で連絡してくれなかったの?」
「だから、二人がまだ会社にいるって知らなかったの」
「連絡先は?」
「昔のスマホが壊れたときに結構消えちゃって」
「ああ……」
「それに」
稀衣が少し申し訳なさそうに言う。
「子育てで本当に余裕がなかった」
美和子と美晴は。
その言葉を聞いて。
表情を柔らかくした。
「それなら仕方ない」
「うん」
美晴も頷く。
「子供が小さい頃なんて、自分の時間ほとんどないもの」
「美晴も?」
「もちろん」
「美和子も?」
「当然」
そこで。
稀衣が気づく。
「そういえば」
「何?」
「私」
二人を見る。
「二人の今の家族のこと、ほとんど知らない」
「確かに」
美和子も言う。
「私たちも稀衣の家族のこと、詳しく知らない」
美晴が笑った。
「じゃあ今日は家族報告会ね」
「五年分?」
「五年分」
「長くなるわよ」
「今日は時間あるから大丈夫」
そんな話をしているところへ。
料理が運ばれてきた。
◇◇◇
最初に話したのは。
稀衣だった。
「私は亮介と結婚してるのは知ってるよね?」
美和子が頷く。
「もちろん」
美晴も。
「結婚式も行ったじゃない」
「そうだった」
「忘れたの?」
「忘れてない!」
三人が笑う。
「それで」
稀衣が続ける。
「子供が二人」
「二人?」
「うん」
「男の子と女の子?」
「そう」
「上が?」
「息子」
美和子が興味深そうに聞く。
「何歳?」
稀衣が答える。
「もう働いてる」
「えっ」
「早っ!」
二人が驚く。
「そりゃ五年経ってるから」
「確かに」
「名前は?」
「それはまた今度でいいでしょ」
「何でよ」
「今日は家族構成だけ」
「秘密主義」
「違うわよ」
稀衣が笑う。
「それから妹の珠香」
その名前。
美晴は。
まだ何も反応しない。
当然だった。
自分の娘・麗音が。
つい最近。
珠香と一年ぶりに再会したことなど。
この時点では知らなかったから。
「珠香ちゃん」
美和子が言う。
「可愛い名前」
「ありがとう」
「兄妹仲は?」
「普通」
「その普通が一番よ」
「たまに喧嘩するけどね」
「それも普通」
そして。
美晴が聞く。
「息子さんは?」
「何?」
「彼女とか」
稀衣。
一瞬。
止まった。
いる。
それどころか。
その相手は。
白河綾音。
人気グラビアアイドル。
すでに自宅へ泊まりに来ている。
所属事務所の社長と担当マネージャーも交際を知っている。
しかし。
当然。
ここで簡単に話すわけにはいかない。
「……いるみたい」
「みたい?」
美和子が笑う。
「母親なのに?」
「いる」
「会った?」
「会った」
「家に来た?」
「来た」
美晴。
「どんな子?」
「綺麗な子」
これは。
間違いではない。
むしろ。
かなり綺麗な女性だ。
「へえ」
「優しい?」
「優しい」
「仕事は?」
そこまで聞かれて。
稀衣は笑う。
「それは本人たちのプライベートだから秘密」
「何それ!」
美和子が笑う。
「気になる!」
「息子の恋愛を母親が勝手に喋れないでしょ」
「それはそうだけど」
美晴も頷いた。
「そこは大事よ」
稀衣は。
心の中で。
少し安心する。
まさか。
その彼女が。
二人も知っている可能性が高い女性だとは。
まだ。
思っていなかった。
◇◇◇
「じゃあ次」
稀衣が美和子を見る。
「美和子」
「私?」
「家族」
「うちはね」
美和子が話し始める。
夫。
そして。
子供たち。
稀衣は。
久しぶりに会った友人の家族について。
一つずつ聞いていく。
もちろん。
このとき。
まだ。
すべてのつながりには気づかない。
そして。
美和子が言う。
「うちの下の子が俊介」
「俊介くん」
「そう」
「いくつ?」
美和子が答える。
「中学三年生」
すると。
美晴が。
「うちの麗音と同じ」
稀衣が二人を見る。
「麗音?」
「私の娘」
「美晴の?」
「そう」
美和子が笑う。
「しかもね」
「何?」
「俊介と麗音」
「うん」
「同じ中学校」
「え?」
「それだけじゃない」
美晴が続ける。
「一年生から三年間、ずっと同じクラス」
「三年間?」
「そう」
稀衣が笑う。
「すごい偶然」
「でしょう?」
「美和子と美晴が小学校から高校まで同級生で」
「うん」
「今度は子供同士まで」
「そうなの」
三人。
笑う。
でも。
偶然は。
それだけではなかった。
◇◇◇
「美晴のところは?」
稀衣が聞く。
「うちは娘が二人」
「二人?」
「上が麗華」
その名前。
稀衣の動きが。
ほんの少し止まった。
麗華。
どこかで。
聞いたことがある。
いや。
最近。
かなり身近なところで。
「麗華……?」
「うん」
「藤宮麗華?」
美晴が。
驚いた。
「知ってるの?」
稀衣。
固まる。
藤宮麗華。
グラビアアイドル。
そして。
白河綾音の仕事仲間。
綾音自身が。
自宅で話していた。
『麗華ちゃんとは仕事仲間』
『結構仲いいよ』
「……もしかして」
稀衣が美晴を見る。
「グラビアアイドルの?」
美晴が。
少し笑う。
「そう」
「ええっ!?」
今度は。
稀衣が驚く番だった。
「美晴の娘だったの!?」
「そうよ」
「全然知らなかった!」
「言ってなかったから」
「言ってよ!」
「五年間会ってなかったでしょ!」
「それはそうだけど!」
美和子が横で笑っている。
「稀衣、いい反応するね」
「だって!」
稀衣は。
本気で驚いていた。
第一章のヒロイン。
藤宮麗華。
その母親が。
五年前まで一緒に働いていた。
美晴。
「本当に?」
「本当」
「テレビで何回も見たことある」
「ありがとう」
「雑誌も」
「それは麗華に言ってあげて」
そして。
稀衣の頭の中。
一人の女性。
白河綾音。
息子の彼女。
そして。
もう一人。
藤宮麗華。
綾音の仕事仲間。
まさか。
その母親が。
自分の友人だったとは。
◇◇◇
しかし。
稀衣は。
言わなかった。
自分の息子の彼女が。
白河綾音だということを。
なぜなら。
息子から。
交際について。
慎重に扱うよう言われている。
事務所も把握している。
家族だから知っているだけ。
友人だからといって。
勝手に話していいことではない。
「すごいね」
稀衣は。
それだけに留めた。
「じゃあ美晴、芸能人のお母さんなんだ」
「家では普通の娘よ」
「そういうもの?」
「そういうもの」
「麗華ちゃん、結婚したよね?」
美晴が頷く。
「うん」
「ニュースで見た」
「一般男性と」
「そう」
「どんな人?」
稀衣が聞く。
でも。
すぐ。
「あ」
止める。
「ごめん。非公表だった」
美晴が笑う。
「大丈夫」
「聞かない」
「ありがとう」
また。
同じ。
稀衣は。
息子の恋人について。
詳しく話さない。
美晴も。
麗華の夫について。
必要以上に話さない。
五年ぶりの友人でも。
守るべきものは。
守る。
◇◇◇
そのとき。
美晴のスマートフォンが震えた。
「あ、ごめん」
画面を見る。
「麗音から」
稀衣。
何となく。
その名前を覚える。
美晴の次女。
麗音。
『今日、久しぶりに小学校の同級生に会った』
そんなメッセージ。
美晴が返信。
『よかったね』
続いて。
『一年ぶりだった』
『珠香って子』
美晴の指。
止まった。
「……珠香?」
稀衣。
反応。
「え?」
美晴が画面を見る。
そして。
稀衣を見る。
「稀衣」
「何?」
「娘さん」
「珠香?」
「そう」
「何?」
美晴がスマートフォンを見せる。
「うちの麗音」
「うん」
「今日、一年ぶりに会った小学校の同級生が」
少し間。
「珠香ちゃんだって」
沈黙。
稀衣。
「……え?」
美和子。
「え?」
美晴。
「だから」
もう一度。
「麗音と珠香ちゃん、小学校の同級生みたい」
稀衣。
数秒。
理解できない。
「ちょっと待って」
「うん」
「私の珠香?」
「たぶん」
「同姓同名じゃなくて?」
「聞いてみる」
美晴が麗音へメッセージ。
少しして。
返信。
学校。
学年。
そして。
特徴。
稀衣。
「……珠香だわ」
美和子が。
「すごくない?」
「ちょっと待って!」
稀衣が笑う。
「何これ!」
美晴も。
「私も今初めて知った!」
「麗音ちゃんと珠香が!?」
「そう!」
三人。
顔を見合わせる。
◇◇◇
美和子。
美晴。
小学校から高校まで同級生。
大親友。
同じ会社。
そして。
美和子の息子・俊介。
美晴の娘・麗音。
同じ中学校。
三年間。
同じクラス。
さらに。
稀衣の娘・珠香。
美晴の娘・麗音。
小学校時代の同級生。
「何なの?」
稀衣が笑う。
「家族ぐるみでつながりすぎじゃない?」
「本当に」
美和子も笑う。
美晴が。
「でも麗音、珠香ちゃんの家族のことまでは知らないみたい」
「珠香も同じ」
稀衣が答える。
「さっき帰ってきたとき、麗音ちゃんと会ったって話してたけど」
「あら」
「お姉さんが藤宮麗華さんっていうところまでは聞いた」
「じゃあ知ってたんだ」
「でも」
稀衣は首を横に振る。
「それ以上は何も知らないと思う」
「うちも同じよ」
美晴が言う。
「麗音は珠香ちゃんのお兄さんの詳しいことなんて知らない」
稀衣。
一瞬。
表情を止める。
そう。
知らない。
珠香の兄。
つまり。
俺。
その恋人が。
白河綾音。
そして。
白河綾音と。
藤宮麗華。
二人は。
仕事仲間。
さらに。
綾音は。
近いうちに。
麗華へ自分の恋人について話そうとしている。
つながっている。
思っていた以上に。
◇◇◇
「どうしたの?」
美晴が聞く。
「え?」
「何か考えてた?」
「いや」
稀衣は笑う。
「本当に世間狭いなって」
それだけ。
まだ。
言えない。
息子の恋人。
白河綾音。
その秘密は。
稀衣のものではない。
息子と綾音。
二人のもの。
だから。
勝手には明かさない。
◇◇◇
食事は。
さらに続いた。
仕事。
昔の上司。
昔の失敗。
恋愛。
結婚。
子育て。
五年間。
話しても。
話しても。
足りない。
「覚えてる?」
美和子が言う。
「新人の頃、稀衣が資料全部逆順に印刷したの」
「やめて!」
「百部」
美晴が笑う。
「そうだった!」
「忘れて!」
「しかも会議開始三十分前」
「本当にやめて!」
三人。
大笑い。
キャリアウーマン。
そう呼ばれるようになる前。
失敗ばかりしていた時代。
そんな過去も。
全部知っている。
「でも」
美晴が言う。
「稀衣、戻ってきてよかった」
「うん」
美和子も頷く。
「また三人で働ける」
稀衣は。
二人を見る。
「五年も空いたのに?」
「五年くらい何よ」
「そうそう」
「私たちまだまだ働くんだから」
稀衣が笑う。
「じゃあ」
グラスを持つ。
「改めて」
美和子。
美晴。
二人も持つ。
「稀衣の復帰に」
「五年ぶりの再会に」
そして。
三人。
「乾杯」
グラスが。
静かに重なった。
◇◇◇
夜。
店を出る。
「じゃあまた会社で」
美和子。
「今度は五年空けないでね」
美晴。
「同じ会社なんだから空くわけないでしょ」
稀衣。
三人。
笑う。
「じゃあね」
「また明日」
「お疲れさま」
それぞれ。
別の方向へ。
稀衣は。
帰りの電車の中。
今日聞いたことを思い返していた。
美晴の娘。
藤宮麗華。
綾音の仕事仲間。
美晴のもう一人の娘。
麗音。
珠香の小学校時代の同級生。
さらに。
美和子の息子・俊介とも。
中学三年間同じクラス。
「……本当にどうなってるの」
思わず。
小さく笑った。
そして。
スマートフォン。
俺から。
メッセージ。
『母さん何時頃帰る?』
稀衣。
『もうすぐ』
少し考えて。
もう一通。
『今日、すごいこと分かった』
俺。
『何?』
稀衣。
『帰ったら話す』
◇◇◇
その頃。
家。
俺の部屋。
スマートフォンを見ながら。
俺は首を傾げていた。
「すごいこと?」
近くには。
今日も。
綾音。
「どうしたの?」
「母さん」
「稀衣さん?」
「今日、昔の友達と会ってる」
「へえ」
「そこで何か分かったらしい」
「何?」
「帰ってから話すって」
綾音が笑う。
「気になるね」
「うん」
まだ。
俺も。
綾音も知らない。
母さんが。
今日。
五年ぶりに再会した二人。
美和子。
美晴。
そのうち。
美晴が。
藤宮麗華の母親であることを。
そして。
珠香と麗音が小学校時代の同級生だという事実まで。
母親たちの会話から。
改めてつながったことを。
さらに。
美和子。
美晴。
稀衣。
三人の関係。
子供たちの関係。
藤宮麗華。
白河綾音。
俺。
珠香。
麗音。
俊介。
いくつもの線。
別々に見えていた線が。
少しずつ。
一本につながろうとしている。
ただ。
まだ。
誰も。
そのすべてを知らない。
稀衣は。
息子の恋人が白河綾音だと知っている。
しかし。
美和子と美晴には言わなかった。
美晴は。
娘・麗華の夫について知っている。
しかし。
稀衣には詳しく話さなかった。
珠香は。
兄の彼女が白河綾音だと知っている。
麗音は知らない。
麗音は。
姉・麗華の家庭を知っている。
珠香は知らない。
それぞれが。
大切な家族のプライバシーを守っている。
だからこそ。
まだ。
最後の線だけが。
つながらない。
五年ぶりに再会した。
三人のキャリアウーマン。
稀衣。
美和子。
美晴。
その再会によって。
第一章「藤宮麗華編」と。
第二章「白河綾音編」。
二つの家族の距離は。
本人たちが思っている以上に。
さらに近づいたのだった。
番外編⑵「三人のキャリアウーマン――稀衣、美和子、美晴との五年ぶりの再会❷」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、前編で再会した稀衣、美和子、美晴の三人が、五年間の空白を埋めるように語り合いました。
かつて同じ会社で働いていた三人。
ただし、美和子と美晴はそれ以前から小学校、高校まで一緒だった幼馴染であり、腐れ縁ともいえる大親友。
そこへ会社で稀衣が加わり、いつの間にか三人で過ごすことが当たり前になっていました。
そして五年ぶりの再会。
最初は仕事の話だったものが、やがて家族の話へ。
そこで次々と明らかになった偶然。
まずは、美和子の息子・俊介と美晴の娘・麗音。
二人は同じ中学校に通い、一年生から三年生まで三年間ずっと同じクラス。
母親同士の縁が、知らないところで子供たちにも続いていました。
しかし、それだけではありません。
美晴のスマートフォンへ届いた麗音からのメッセージ。
そこに書かれていた、
「今日、一年ぶりに小学校の同級生に会った」
という報告。
その同級生の名前が――珠香。
稀衣の娘でした。
前回の番外編⑴で描かれた珠香と麗音の一年ぶりの再会。
その事実を、今回ついに母親たちも知ることになりました。
美和子と美晴。
俊介と麗音。
稀衣と美晴。
珠香と麗音。
親世代だけではなく、子供世代にもいくつものつながりが生まれています。
そして何より稀衣を驚かせたのが、
「うちは娘が二人。上が麗華」
という美晴の言葉。
その麗華とは――藤宮麗華。
稀衣もテレビや雑誌で知っている人気グラビアアイドルであり、何より息子の恋人・白河綾音の仕事仲間です。
しかし、ここで稀衣は綾音の名前を出しませんでした。
自分の息子に彼女がいる。
綺麗で優しい女性。
家にも来たことがある。
そこまでは話しても、その女性が白河綾音であることは秘密にする。
それは稀衣が隠し事をしたいからではありません。
白河綾音との交際は、息子と綾音本人のプライベートだからです。
母親である自分が勝手に明かすべきことではない。
そして、それは美晴も同じ。
麗華が一般男性と結婚したことは公表されています。
けれど、その夫について詳しく聞かれそうになると、稀衣自身もすぐに、
「ごめん。非公表だった。聞かない」
と一線を引きました。
家族だからこそ知っている秘密。
親友だからといって、何でも話していいわけではありません。
そんな三人の距離感も、今回の大切な部分となりました。
そして現在。
稀衣は知っています。
息子の彼女が白河綾音であることを。
美晴は知っています。
娘・麗華の夫がどんな人物なのかを。
珠香は知っています。
兄の恋人が白河綾音であることを。
麗音は知っています。
姉・麗華の家庭のことを。
でも――。
全員が持っている情報を一つに合わせた人物は、まだいません。
だから最後の一本だけがつながらない。
それぞれが家族のプライバシーを大切にしているからこその、絶妙なすれ違いです。
そして帰宅途中。
稀衣は主人公へ、
「今日、すごいこと分かった」
とメッセージを送りました。
その頃、主人公のそばには白河綾音。
まだ二人は知りません。
稀衣が五年ぶりに再会した友人・美晴こそ、藤宮麗華の母親だったことを。
そして次に稀衣からその事実を聞いたとき。
綾音はどんな反応をするのでしょうか。
さらに綾音自身も、藤宮麗華へ、
「実は私、一般の人と付き合ってるの」
と打ち明けようとしています。
第一章「藤宮麗華編」。
第二章「白河綾音編」。
仕事仲間である二人のグラビアアイドル。
その妹たち。
その母親たち。
そして、それぞれの恋人や夫。
別々に始まったはずの物語は、偶然とは思えないほど多くの場所で重なり始めました。
稀衣、美和子、美晴。
三人のキャリアウーマンの五年ぶりの再会。
それは単なる旧友との再会ではなく、二つの家族をさらに近づける新しいきっかけとなったのでした。




