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昭和の話  作者: 朝倉一二三


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73/73

その73 薬箱


 昭和◯◯年◯月◯日


 今でもあるのだが、昭和のオラが村には、薬屋が回ってきてた。

 富山の薬売りってやつだ。


 当時はコンビニやらドラッグストアもない。

 箱に常備薬を入れて置いて急病に使い、使った分だけお金を払う。

 これにはお世話になった。


 入っている薬は、風邪薬、胃腸薬、ズバリという痛み止め、赤玉というくだり止め。

 今はなき赤チンや、サビオ(絆創膏)、今治水という歯痛止めも入ってたと思う。


 絆創膏は、地方によって呼び方が違うみたいね。

 ウチの地元ではサビオだった。

 バンドエイドでも通じる。


 ズバリには中毒性があったんじゃないかな~、これをずっと飲んでいる人がいた。


 祖母の家にも当然、薬箱があったのだが、薬屋がやって来て精算をしているときに、彼女が激怒した。

 祖母はとても優しい人だったのだが、怒ると怖い。


 なぜ怒ったのかといえば、使ってない子ども用の風邪薬が使ったことにされていたからだ。

 当時俺がいたので、子どもがいれば、風邪薬を使うだろうと、インチキをしたらしい。


 激怒した祖母は、「薬箱も全部持って帰れ! 二度と来るな!」と、薬屋を追い出してしまった。

 こんな感じで、インチキが結構あったんだよね~。


 そういえば、今はなき押し売りもあったな(笑)

 要は飛び込みの営業なんだけど、ガラの悪い輩がやって来ることもあった。


 漫画にもそういうシーンが度々登場して――


「ムショから出てきたばっかりなんで、奥さんゴム紐買ってくれよ~」みたいなやつ。

 なぜかゴム紐なんだよな。


 1、生活必需品だから。

 2、「そんなの使わないから、必要ありません」という言葉を封じるため。

 3、安い品で売りやすい。

 4、かさばらず、持ち運びが簡単。


 みたいな理由らしい。

 今は訪問販売が禁止になってるんでなくなりましたけどね~。


 昭和◯◯年◯月◯日


 ガキのころ、船に乗った記憶がある。

 徐々に船が桟橋から離れていく。


 船の上から、色とりどりの紙テープが次々と投げられ、風に煽られて大きく弧を描きながら宙を舞う。

 赤や青、黄色や緑の細長い紙片が陽光を受けて鮮やかに輝き、まるで空からカラフルな雨が降り注いでいく。

 船の上、桟橋の人々がみんなが笑って手を振っていた。


 そんなわけで、昭和の時代、船が出るときには紙テープを投げてたな~。

 そういうシーンがテレビでも出てきた。

 あれって、知り合いとかじゃなくても、投げてたような気がする。


 飛行機でもやってなかったか?

 そんなシーンを見たような記憶がある。


 起源は、日本人実業家のアイデアらしいね~。

 世界中に広まったこの風習のきっかけは、1915年にアメリカのサンフランシスコで開催された万国博覧会みたいやね。

 売れ残った紙テープを別れの握手の代わりに使ったら大ヒットしたとか。


 当時は船の移動が多く、今生の別れになることも多かったせいもあるだろう。


 確かに風情もあったけど、これも昭和の時代に、紙テープが禁止になったんよね~。

 まぁ、ゴミも出るしね。

 エコじゃないし、スクリューに絡まることもあるみたいだし。



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― 新着の感想 ―
なぜ行ったのかは覚えていませんが、港に行って紙テープで送迎した記憶があります。 その他、漁船が捕まえた亀を逃す催しがあって、亀が神様のお使いとか言って 上からお酒をかけてました。 今から50年近く前の…
新郎新婦が結婚旅行に旅立つ時に車の後ろに空き缶をたくさん付けてガラガラとにぎやかに去っていくのも昔よく見た気がします
富山の薬、懐かしいです。ズバリですが、最近ドラッグストアで見つけてビックリしましたね。あと、誤魔化しもあるあるで、家の近所でお婆さんが席を外している際に、窃盗しようとしてバレて自治会出禁になったとか……
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