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昭和の話  作者: 朝倉一二三


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その21 昆虫採集


 昭和◯◯年◯月◯日


 夜中に仲間と繰り出し、水銀燈の下に集まる。

 なにをするかといえば、虫採りである。


 沢山の虫が、水銀燈の周りをグルグルと飛んでいる。

 これは、虫が太陽に向かって直角に飛ぶ習性があるため。


 母方の実家の眼の前にあるガススタンドに水銀燈があったのだが、そこに大量の虫が集まってきた。

 ほとんどが蛾なのだが、たまに低い「ブーン!」という羽音といっしょにデカいのがやってくる。


 もちろん、子どもたちの目当てはクワガタだ。

 北海道なので、カブトムシはいない。


 ゲットしてヒーローになれるのは、ミヤマクワガタ一択。

 ノコギリクワガタも人気があったが、やはり小さい。

 デカいは正義。

 一番人気は、やっぱりミヤマクワガタなのだ。


 カミキリムシも捕まえたことがあるのだが、あれは「キリキリキリキリ!」と一晩中煩いので、すぐに捨てた。


 今の子どもたちも、昆虫採集をするのだろうか?

 昆虫=デパートで売っている――と、思っていたりして(笑)


 北海道にはカブトムシはいないので、ゲットするには、買うしかない。

 俺が小学生の頃には、すでにデパートでカブトムシが売られていた。

 俺も買ってもらったことある。


 確か500円ぐらいじゃなかったか。

 今だと1000~1500円ぐらいの感覚だと思われる。


 当時は虫ゼリーなどはなかったので、きゅうりを餌にしていたのだが、きゅうりはあまりよろしくないみたいやね。

 今なら、そんな情報もネットで手にはいるとはいえ、当時はネットもない。

 情報といえば、本で読んだり人づてで聞いたりするぐらい。


 カブトムシやクワガタの餌も、みんなきゅうりだった。

 本を読んでも、甲虫が出てくるシーンには、きゅうりが突き刺してあったりして。

 ああ、こういうものだと思っていたもんだ。


 クワガタの他には、蝶々も採ったな。

 蝶々の上位ランクは、アゲハ系。

 普通のアゲハ、キアゲハときて、一番の人気は、やっぱり黒くてデカいカラスアゲハ。


 採ったら、昆虫標本のマネごとをしてみる。

 そこで出てくるのが、全国区で売り出されていた、昆虫採集セット。

 注射器+虫眼鏡+赤い薬、青い薬が入っている。

 メーカーが違っても、入ってるものは同じ。


 薬は、どちらの色かは忘れたが、1方が虫にトドメを刺す薬、もう1方は防腐剤という触れ込みだった。


 大人になってから解ったのだが、入っていた赤青の薬は、薬ではなくて色付きのタダの水である。

 考えてみれば、そりゃそうよ。


 子どもが使うのに、本物の殺虫剤や、防腐剤が入っているはずがない。

 間違って飲んだり、手に刺しちゃったりする可能性もある。

 そんなわけで、たの色付きの水だったのだろう。

 もしかして、薬の腐敗防止に、少量のアルコールが入ってたかもしれないが。


 まぁ、本物の薬じゃなくても子どもが作る昆虫標本なんて、すぐにボロボロになるのがオチだしな。


 北海道には、カブトムシがいないと書いたが――。

 今は、札幌周辺には、カブトムシがいる。


 子どもが買ってもらったカブトムシが逃げ出して、周囲の森で定着してしまったのだ。

 北海道の冬は寒いからカブトムシは冬を越せない――とは、なんだったのか。


 油断大敵である。



 

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― 新着の感想 ―
水銀燈の下に集まる…嘗て水銀党員だった私は某掲示板の水銀燈スレによく行ってました…ナツカシス
虫を目にする機会もすっかり少なくなりました 蝶々は当然目にしないどころか、蚊やハエですら少なくなりました そんな中でも元気な蟻とGの生命力...
えー! あの昆虫採集キットの薬って偽薬だったんですか! 買ってもらえない憧れの一つでしたが・・ 確かに先生の仰る通り、いくら昭和でも子供には危ないですよねw
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