後片付け(7)Cats In Boots
どらごんオートの創業に奔走していたら日が暮れてしまった。
「疲れたのじゃあ」
ラックの確保もされていないのに、回線の手配をした時くらい疲れた。
誰だよ、前後関係の破綻したスケジュール建てた奴は。あ?もう逃げた?
自分の前世なのか、ただの知識なのか分からない記憶が蘇る。脳の血管が痛いわー。
わしらは、学園跡地真ん前マンションの、展望風呂で疲れを癒している。
このマンションの名前なんだっけ?
「さすがは、どらごん組の親分です。あの孤児院の出身者として、個人的に感謝いたします。ありがとうございます」
ロックンロールクレイジーナイトのヤキトリに感謝されてしまった。
べ、べつにあんたのためにやったんじゃないからねっ!
つんでれ乙。
孤児院を引き取る件は、エタナル教の巫女総代も、あっさり了承してくれた。
むしろ、土下座された。女神様のお手を煩わせてしまいーって。
あそこも、もううちの傀儡じゃのう…。人間界の支配力を広げていく女神。女神レベルがまた上がってしまったかな?
エタナル教は、行方不明の神父を完全に亡きものとして扱っていた。
今までは、神父派閥のおっさんと、巫女派閥の女子が争っていたらしいが、神父派閥もまとめて追放したそうだ。
それで、うまくやっていけるのなら、それでいいじゃろ。
巫女総代は、この世に3つしか出現していないという、生命の実のひとつを1万年前に食べたそうだ。
初代巫女のミーの現役時代を知っていた。
幼女ではなかった。永遠の17歳じゃった。
彼女が総代になったのであれば、あと1万年くらい安泰なのでは?
巫女総代は永遠の17歳だが、ヤキトリは永遠の27歳なんだそうな。
「ロックンローラーは、永遠に27歳なのです」
実際には、こいつ17歳なんだけど。わしの周り愉快なのしかおらぬ。
悪魔の湯の効能は、7歳児以上でも不老の効果はあるので、こいつは見た目だけは、永遠に憧れの27歳にはならぬ。
「スピリットの問題なので、関係ありません」
この世界のロック、まだ聴いたことないんだが。前世世界の70年代くらいの感じかな?
21世紀のロックは、じじいのものなので、スピリット云々よりも、健康な体が重要だ。
ヤキトリ達が、ズンダのイベントでバンド演奏するそうなんで楽しみだ。
楽しみなイベントと言えば、明日は魔法少女メルリの紙芝居を見に行くのだ。
やっと、女神の本業に戻れるのじゃ!
女神らしからぬ事をやったせいなのか、おかしな夢を見た。
天を貫くような高い塔を作るわし。これは滅亡フラグ。
「女神ごときが、生意気な真似を」
ほら、なんか神っぽいおっさん出てきたじゃん。
「やかしいわ、ぼけ。わしのかってじゃ」
神にすら喧嘩を売るコルサちゃん。やはりこれは滅亡フラグ。
「おまえの言葉から、のじゃを奪ってやろう」
なんかちょっと違うのでは…?
ゆっさゆっさと体を揺すられて、目を覚ます。
「のじゃ」
おかしな夢を見ていたので、完全に寝言なのじゃ。
「のじゃ?」
「のよ?」
「のじゃのじゃー」
「のよのよ」
のじゃだけ残っているじゃないか!?
この世界は、天使だけじゃなく、神までいい加減なのかよ。
まあ、いいや。
朝ごはんを食べて、朝風呂に入って、紙芝居を見に来たよ!
メイドさんが居るので、しゃべらなくても、何も困らんわー。
「お貴族様のおやつ代は、100万円なのにゃー」
紙芝居師が、ふざけたことを言うので、6000万円で、こいつの人生を買ってやった。
関西ノリの100円を、100万円やでーっていうやつじゃなくて、これは貴族の義務なんだそうだ。この場所で興行するときの1年分のおやつ代を、近所の子供全員分払うのじゃと。見ながら食べるおやつが、紙芝居のチケット代わりじゃな。
うっかり忘れておったが、わしドラゴン爵とかいう、公爵越えの貴族じゃったわ。
「あなたも、おやぶんのどれいなのですー」
「うにゃにゃああ!?」
すまんな、お前が6歳以下の幼女なのが悪いんだ。
悪魔の湯に漬けこんで、1万年先までわしの奴隷じゃ。
50年ごとに、6000万円払ってやろう。
紙芝居の魔法少女メルリは、神作じゃった。これの作者が6000万円は、お買い得でしょ。どらごん組に欠けていた文系枠をゲットじゃ。
語尾がにゃ枠も埋まったな。猫耳生えてないけど。どうせ生えて来るんじゃろ?わしは知っているのじゃ。
予定を切り上げて、キナコ村ににゃ娘を持ち帰った。
他にも、やる事あった気がするけど、忘れたわ。
早速、風呂に沈めよう。
「あのー、ほんとに一緒に入らないとダメにゃ?」
なんか嫌がってるな。体に柄が入っているのかな?そこに居るロックンロールクレイジーナイトも、腕にドラゴンの柄入っているし、気にする必要はないのじゃ。
脱衣所で服を脱いで、洗い場まではついて来たが、湯舟には入ろうとしない。
湯舟をじーっと見て、手をちゃぽちゃぽつけるが、入ってこない。
やってることが、猫型ドラゴンと一緒じゃな。
その猫型ドラゴンのドラちゃんは、温泉宿が出来てからは、キナコ村に常駐している。
だいたい、猫型魔王と一緒にいる。そのせいか、猫型魔王の名前が、いつの間にかシズカに変わっていた。
ドラちゃんと一緒にいるから、シズちゃんだろうって、騎士と巫女達は言っているが。ドラちゃんと一緒にいるなら、ノビちゃんだろ?
しかし、この世界の神話では、ちょっと違ったらしい。
「レパードさん」
…。
ヤキトリが試しに呼んでみるけど、返事しない。
「シズちゃん」
にゃー。
魔王自身の公式認定なら、それでいいよ。
名前を気にしてる場合じゃない、イベントがきっと起こるから。




