後片付け(6)Get Your Wing
クマックマ号は、ぎゅうぎゅうだ。
乗車定員上限の7人乗っている。
車内では、誰がわしとコルサの隣に乗るかで、椅子取りゲームが発生した。
コルサちゃんもわしも、こいつらのアイドルじゃったの、忘れておったわ。
コルサちゃんは王女様なので、近衛騎士にとってはデフォルトでアイドル。エタナル教総本山では先代神父を倒した功績で巫女達のアイドル。
女神リーザは、ズンダ王国とエタナル教の祭神なので両者のアイドル。
「女神リーザは、1日で世界を作り、2日目から遊んで暮らし、7日目に飽きて人類を滅ぼしました」と神話にあった。
どこに魅力を感じているのだ、こいつらは。
そのイカレ女神は、わしの名前の由来というだけで、わしではないぞ。
「リーザ神話は複数のバージョンがありますので。リーザ様が読まれたのは、特別尖ったやつでしょうね」
学園復興プロジェクトのリーダー、ディレイが教えてくれた。
「真説リーザ」「リーザ外伝」「リーザ放浪記」「シンリーザ」など、昭和のヒーローマンガのリバイバルをも越える勢いでバリエーションがあるそうだ。
そういえば、この世界は、そういうのじゃった。
当然と言うべきか、椅子取りゲームはコルサちゃんが圧勝した。
クマックマ号には、学園復興プロジェクトの3人が同乗している。
こいつらをワワンサキまで送るお仕事、のフリをして遊びに行くのじゃ。建前はあった方がいい。どうせクリームに説教されるけど。
まず、オエド銀行に連行する。
プロジェクトはオエド銀行との合同なのだ。銀行側に顔合わせと共に、引き渡す。
オエド側メンバーは、企画7課からの出向だそうだ。
100億円好きに使っていいし、年度毎におかわりもある、と言ったら「女神様!」と崇められた。こいつら、どんだけ低予算で、こき使われて来たんじゃろうか。ハナちゃんの仕業じゃろうなあ。
お金で、忠誠心が買えるなら、安いものじゃ。
クマックマ号は、学園復興プロジェクトに渡して置いて来た
代わりの足を買いに行こう。ちゃんとあてはあるのだ。
「おう!こくおうはおるかー!」
自宅焼け跡近くのお団子屋に、王様は居た。今日も、上下スウェットで、庶民にカツアゲされている。
「われの、いたしゃよこせやあ!」
コルサちゃんが一緒だと、楽じゃな。
「あ、はい?オートモービルですか?」
王様も、痛車を持っているはずだ。焦げてたけど。
「ごじゅうえんじゃ!じゃあの!」
コルサちゃんは痛車を50円で買い取った。最安値更新だ。
4人でおしるこを食べて、王様のつけにして店を出た。王様、赤字じゃな。
修理代が払えずに、販売店に預けたままだそうだから、一応これは救済だよ?
販売店に行き、王様号を引き取る。修理代は、1憶5千万円だった。
何故、新車より高い?
オートモービルを買える貴族が居なくなったから廃業する?
従業員の退職金も必要だから、王様が負担しろって?
ぐぬう、やつの1憶5千万円の負債を50円で買い取ってしまったのじゃ。
貴族の貧困化が始まっておるとは、ワワンサキ全体の復興も必要なようじゃのう。
むう。女神らしからぬが、ちょっとやる気出すかのう。
負債を買い取った代償はあった。
痛車の製造業者を紹介してもらったよ。
そこへ向かうよ!貴重な技術者をヘッドハントじゃ!狩りの時間じゃ!
痛車を作っていたのは、孤児院じゃった。ハナちゃんの居たところ。
ここを経営しているのは、エタナル教なんじゃそうな。
「おししいご飯を食べさせてくれるなら、ドラゴン山に行きます」
「熊の丸焼きを好きなだけ食べるがええ。温泉も入り放題なのじゃ」
優秀な技術者の価値が安過ぎる。
この国は、危険な状態じゃのう。お金持ちが犠牲になる社会、可能性はあると思ったんじゃがなあ。テロでガタガタじゃ。
技術者達は、10歳の3人組じゃった。
ここの孤児達は、満足にご飯も食べられず、学校にも行けず。
ヤキトリとスズメは、ズンダに亡命して近衛騎士になり、ハナちゃんは銀行員になった。
どちらも過酷な道じゃ。ここは、それよりも酷い場所なのじゃ。
残された彼女達は、孤児院の図書室にあった古文書をもとに痛車を作って、糊口を凌いでいたのじゃが、これもエタナル教の神主と国王が利益を横取りしていた模様。
最後に残った3人が出て行くので、孤児院は閉めるそうじゃが、どらごん組で引き取る事にしよう。図書室の古文書も気になるし。最後まで残った世話係の巫女さんの就職先も確保したい。
それにドラゴン山で車両製造するには、材料の搬入に課題がある。ワワンサキ市内の方が都合が良い。改装すれば販売店にも出来そうじゃ。
この孤児院を「どらごんオート」にするのじゃ。「どらごん技研」と迷ったが、名前は分かりやすい方が良い。国名なら謎めいておってもいいが、商売の屋号だからね。
近所にある定食屋さんに、3人と巫女さんを連れて行き、一緒にご飯を食べた。
「熊の丸焼きは、また今度じゃ。後でおしるこも食べるのじゃ」
なんてことじゃ。ご飯を食べる子供を見て涙が溢れるなんて。わしの中には、まだ50過ぎのおっさんのメンタルがゴーストの様に生きておるのじゃな。
もちろんお団子屋で、おしるこも食べた。
定食屋とお団子屋では、4人分の年間パスポートを購入した。この国の外食産業はサブスク方式なのだ。定食屋は日替わりメニューしかないけど、こういう仕組みは便利。
衣料品店でぱんつも買ったし、銭湯の年間パスポートも買った。
学園再興チームに、寝具や家具の手配も頼んだ。
「後は、このカードで必要なものを好きなだけ買うのじゃ」
そう言って、どらごん組名義のクレジットカードを巫女さんに渡す。
無給同然で最後まで残った彼女じゃ。まぬけかも知れぬが、悪人ではなかろう。
「困ったことがあったら、学園復興事務所に居るディレイを訪ねるのじゃ。学園跡地の真ん前にあるマンションじゃ」
「ディレイもここの出身なので、彼女の事は、よく知っています」
この巫女さんとディレイも、ここの孤児院出身じゃった。
ディレイのあのハングリーで反骨な精神は、ここで育まれたのか。
ああ、女神らしくない。こんなの人類皆殺しのリーザじゃない。
でも、わしはわしじゃ。あのイカレタ女神とは違うのじゃ。
わしはわしの「リーザ神話」を作るのじゃ。




