どらごん戦争(20)The End Of The Century
「王女の名を騙るおばかさんは、どちらかしらあー?わたくしこそが」
先頭のちんちくりんが吠える。
「うるさいクズが」
キナコが、ちんちくりんを斬り捨てた。名前も言わせてない。
その後、実況が喋る間も無く、ユリシーズは全滅した。
「うぉーーー!!」
「キナコさまーーー!!」
「さすがはドラゴンスレイヤー様だー!」
「すてきー、はらませてー」
キナコしか動かなかった。
アンはメイドみたいなポーズで車の脇に待機していただけだし、ヤキトリは観衆を煽っている。
ちなみに、3人共メイドの恰好をしている。防御など不要なので、鎧など飾りですよ、だそうだ。かっこいい。
「おまえらー!聞こえないぞー!」
「うぉおおお!」
「おーい、ズンダー?首都の国民はこんなもんかあ?」
「いええええ!」
「お前らの、あるじの名を叫べーーー!!」
「コルサさまああああ!!」
メイド姿のキナコが観衆を煽る。まるでロックコンサートなのじゃ。もえもえきゅんきゅん。
「お前らは、伝説の目撃者だーーー!シンズンダ王国の始まりを見届けろーー!!」
大隊規模の兵士達も遅れて、ぞろぞろとやって来たが、完全に腰が引けてるな。
「へいへい!民主派びびってるー!」
「民主化のくせに、軍事政権作ってんじゃねえぞー」
「お家に帰りなー!お前にも母ちゃんが居るんだろ?」
「ぶーぶー!」
観衆が野次る。お祭り騒ぎだな。屋台まで出てるよ、たこ焼きうまそう。
「おい、お前」
「あ、はい。わ、わたしですか?」
「お前以外に誰が居るんだ?大将首なら、代表して返事しろ」
「く、くび!?」
キナコが、相手の大将と話し始めた。
アナウンサーが、手で「伸ばしてー」の合図をしているからね。戦闘をディレクションするマスコミ。中立とは?
「あー、お前、あれだ、あれだぞ?お前にも母ちゃんが居るんだろ?」
キナコの奴、セリフを思いつかなかったな。さっき野次が言ってたやつじゃんそれ。
でも、意外と素のトーンのトークが相手に刺さったようだ。
「は、母は、革命中に亡くなり…ました…」
「おまえ、国はどこだ。ズンダの民ではあるまい?」
「わ、わわんさ」
どんっ
「ばかやろう!お前何言い出すんだ!」
「うるせー!お前らの都合なんか、もう知るかー!」
「ワワンサキのクズどもがあああ」
「なんだと!ヨコヤマのいきり侍が!」
「なんじゃあわれえ!?しばきあげるぞお?」
「やれ、おらあああ」
仲間割れ開始。
「あの、こいつらバカなんですかね?解説のハナさん」
「うん、まあ端的に言うとそうだな。黒幕はさっき言った通りワワンサキなんだが。他国から呼んだ傭兵もいるな、ズンダで現地徴用したのも居るんじゃないか?」
「はー、なんと、仲間割れは当然ですかねー」
「しかし、これ、どうすんだよ…」
もう日が暮れるから、解散しない?
あれ?コルサちゃんが居ない。あぁ、車の外に出てちゃってる。
「じゃかましいわあ!おどれらあ!」
…。
にゃあーん
コルサちゃんの一喝で、10万人の群衆が、兵士・民間人問わず、すべて黙り込んだ。水をうったような静けさの中に、ドラちゃんの声だけが響いた。
「おやぶん、どうぞー」
え?わし?
よっこらせと、窓枠に足をかけて、車の屋根の上に乗る。夕陽に照らされて、わしの幼女ボディの影が、長く長く群衆たちにかかる。
わしは夕陽を背に、逆光こそ勝利、とばかり宣言する。
「よく聞くのじゃ。おまえらが持つべきは、剣ではない。たこ焼きなのじゃ」
たこ焼き屋の屋台が、猛烈にくるくるとたこ焼きを焼き始めた。他の屋台のおっちゃん達が、え?うちはって顔で一斉にこっちを見る。
「イカ焼きでも、綿菓子でも、りんご飴でも、チョコバナナでもよいのじゃ」
これ、全部言わないとダメなやつ?
「お好み焼きでもよいのじゃ。ソバのあるなしで争うのはやめるのじゃ。焼きそばでもよいのじゃ。フランクフルトとアメリカンドッグも争ってはいかんのじゃ」
きのことたけのこもな。
屋台の食べ物が、飛ぶように売れて行く。兵士が、悲しそうな目で見ているね。戦場にお財布は持ってこないのかな?お小遣いの足りない子供達もかわいそうじゃの。
「全部、わしのおごりなのじゃ」
うぉおおおおおおおおおおおおお!!
群衆がどよめいた。
「お前等の、神の名を叫べーーーーー!!」
「リーザ様ーーーーーーーーーーーー!!」
その日、ズンダの歴史が動いた。動いちゃった。




