どらごん戦争(5)お団子屋の誓い
ポニーテール幼女は、仲間になりました。
オエド銀行頭取のハナちゃんだね。
「私も、どらごん組に入るよ」
入れてよ、じゃないところが、ハナちゃんだね。
「あんた、オエド銀行は辞めるの?」
「頭取から上はないからね。つまらないじゃない」
上昇志向のかたまりだね、ハナちゃんは。
あの国では、上に行く程つらい立場になるので、どうかと思う。わしは嫌じゃ。
ハナちゃんも加わって、どらごん組結成だよ。
お団子屋で誓いを立てるのじゃよ。
「で?最終的にはどうしたいのかな?」
オエド銀行をぶっ潰す、ってとこまではハナちゃんも聞いていたらしい。
「どらごん組を国として独立させるのじゃ」
いろいろ、すっ飛ばした説明になった。きっと、こいつらには通じてしまうのだけど。
「へーえ?オタマ山に復活させるのね?どらごんのむらを」
さすがは頭取、理解が早い。
「そのために、周辺国からの干渉を、先手を打って抑え込みたい、ってところね?」
任せておけば、勝手にやってくれそう。さすがはリーダー。縦ロールは伊達じゃない。
「オエド銀行は、潰さない方がいいと思うな」
「そうね。生かさず殺さずが理想ね」
やっぱり、この2人は腹黒さが違う。銀行頭取と、けちけちターマ商人だからね。当然だね。
「せんめつしないと、ざんとうがうっとうしいのよー」
うん、そうね。暴力あんぽんたん的には、そうだよね。わしもそう思うけど。
「潰しちゃうと、別の勢力が台頭してくるわ。そいつらに対しては、別のスキームが必要になるでしょ」
「そうね。反撃出来るだけの力は残さず、他の勢力には負けない程度には生かしてやりましょう」
「くにまるごと、ほろぼせばー?」
「ワワンサキが滅んだら、ヨコヤマ帝国が出て来ちゃうでしょ?ワワンサキには緩衝地帯になってもらうわ」
また、なんか新しい国が出て来たな。帝国とか強そうだね。
話が複雑になってきたので、次のアクションを起こそう。
長セリフでいろいろ語らせるのはよくないって、松下村塾で教えてたはず。なんか違うな。
「どらごんぐみのでいりじゃー。あたまだせわれー」
コルサちゃんの謎迫力に、ナニワ銀行の頭取がびくってなった。
どらごん組は、ナニワ銀行の頭取室に来ている。殴り込みじゃないよ。商談だよ。
「オエド銀行発行のプラチナカードで、ズンダ金貨を買えるだけ買いたいとのことですが、何か情報を掴んでおられるので?」
ナニワ銀行の頭取は、50代のおっさん。幼女ではなかった。
「ケンちゃん。ただで情報をあげるわけないでしょ」
白髪まじりの、いかにも頭取って感じの貫禄持ったおっさんを、ケンちゃん呼ばわりするクリームちゃん。ターマ市におけるカステーラ家の権力は、予想していた以上だな。
「申し訳ありません。お館様。手数料ゼロ、でどうでしょう」
「けちね。まあ、さすがはターマ商人ってとこよね。あんたが潰れても困るから、教えてあげるわ」
手数料ゼロでも、けち扱いなんだ。さすが、けちけちターマ商人。
「そこは、私が説明してあげようじゃないか」
ハナちゃんも、どらごん組として、この場に参加しているのだけど。
ライバル銀行の頭取同士のトップ会談だよね、これ。非公式の。
「ズンダ金貨は、今が底値だ。もう少し下がるだろうけど、深追いはダメだよ。3日以内にズンダ金貨を買えるだけ買うといい」
「買えるだけですか?」
ナニワの銀行屋ケンちゃんが、色めきたっているよ。
「加減は考えるんだね。オエド銀行を食ったところで、ワワンサキの市場を独占するだけの体力は、君たちにはまだないだろう?」
「仰る通りです」
ハナちゃんも態度でかいし、上から目線。銀行の格は、オエド銀行の方がずっと上だから、当然だけど。おっさんに凄む幼女こわかわいい。
ズンダ金貨は、これでいいのかな。
「明日までに用意します」
との事なので、明日また来るよ。
結局、何の情報も教えてないよね?何か適当に圧だけかけて、誤魔化しただけなのじゃ。
出されたカステラがおいしかったので、まあどうでもいいわ。
「手形は私に預けてもらえるかしら?」
言われるままに、額面100億円の小切手をお館様クリームに渡す。
「もちもちおもっちを買うわ」
ワワンサキに多店舗展開している、お団子屋さんだね。買ってどうするのか知らんけど、任せておこう。




