どらごん戦争(4)Heavy Duty
ターマ市にやって来た。
街並みは古都という感じ。木の柱に漆喰らしき素材の壁、薄茶色に塗装された屋根、石垣で統一された建物が、整然と並んでいる。機能性重視、というか機能のみ追求。装飾の類は、商店の看板くらい。
この町の地理はまったく分からない。マンションの図書室にも地図は無かった。ワワンサキとは交流無いからね。コルサとキナコのズンダ勢も、ここには潜入経験が無いそうだ。
クリームちゃんちどこよ?
独立戦争が始まるとかいうのを現地に来ると実感するね。
町の入り口、関所みたいな所で、ひと悶着あった。カステーラ家の家紋入りぱんつを見せたら通れたけど。
関所のものものしさと違って、町の中は至って平和。兵士がうろついていたりもしない。まだ開戦はしていないからにしても、のんきなもんだな。もしや、人件費をけちっておるのか?戦争でけちると負けちゃうぞ?
お団子屋があったので、メルちゃん号を停める。
樽詰めの燃料は全てドラゴン山の森の中に置いて来た。あんなところで盗みを働くのは、全裸幼女を抱えたメイドくらいだ。盗難の心配は無いだろう。
メルちゃん号の燃料は、まだほぼ満タンだ。
お団子屋は、もちもちおもっちとは違う。ターマ市にはお団子屋は無かったはず。最近オープンしたんだね。新規オープンの幟が立っているから。
店内に入ると、居たよ。女神の引きの良さ、都合良すぎでは?まあ、クリーム団子店って看板に書いてあったからな。そりゃ、居るじゃろうよ。
「おやびん!くりーむのあねごがいやしたぜ!」
入口付近のテーブルに、クリームとアンが居た。
「姉さん。どうしてここに」
シスコン気味なアンが、キナコの登場に喜んでいる。一方、クリームちゃんは、少し渋い顔。なんだか、つかれているね。縦ロールの巻きが弱くない?
「あんた達、今ここは危険なのよ。観光に来てる場合じゃないわよ」
普段よりも口の利き方が雑だね。それだけ疲れているのでしょう。
「ちょっと、ご相談があるのじゃ」
「あねご!わしらどらごんぐみに、ちからをかしてくださいや!ずどーんと、どかーんと!おなしゃす!」
コルサちゃんは、何の役をやってるんだろう?まあ、どうでもいいや。てゆうか、わしらどらごん組なのか。幼稚園なのか反社なのかよく分からんが、ひらがな表記なら前者のイメージになるじゃろう。それでいいや。
株券や小切手を見せて、どうにかならんじゃろか?と、クリームの姉御にご相談。
「金貨にでも出来たら、いいんじゃけど」
「今、ターマではズンダ金貨が大暴落中よ。買い時かもね」
「ワワンサキでは高騰しちょったけど?」
「ターマに亡命してきたズンダ貴族が豪遊してるから。お陰で、ターマは好景気よ」
まだ、血は流れていないが。既に、戦争は始まっているのだ、きっと。知らんけど。
ズンダ貴族を騙るオエド銀行の工作員とか居そう。
ズンダ金貨暴落のロジックは分かるようで、分からんけど。今、買い時なのは、その通りかも知れんな。
「ターマは、ワワンサキに攻め込むのじゃろか?」
攻め込むと言っても、ターマから首都は遠い。馬車で、ひと月だっけ?行くだけでも、大変じゃん。
そもそも独立のために戦争する必要ある?
「違うわよ。そもそも連合王国は相手にしてないの。ターマが警戒しているのはズンダ共和国よ」
「連合王国?」
「あんた、ほんと何も知らないわね。元々は、7つの小国だったのを、ワワンサキ帝国が主導して、連合王国にしたのよ。ズンダ王国の武力侵攻に対抗するためにね。ほんの300年前の話よ。もっとも2000年前から攻め込まれたことは一度も無いのだけど」
そういえば、うちにあった聖書にはターマ国だのオタマ共和国だの出て来たな。
ややこしい話になってきた。
なんで、ズンダとターマで戦争なんじゃ?ズンダの政権交代が影響しているのじゃろうか?
まあいい。よく分からんので、保留。
どらごん組の最優先事項に集中しよう。
「まずは、オエド銀行の口座にある100億円を、ズンダ金貨に替えたいのう」
「ナニワ銀行に頼んでみる?ターマ最大手の銀行よ。カステーラ家のメインバンクだから、紹介出来るわ」
「おもしろそうな話をしているじゃないの。お金の事なら私に任せるといいわ!」
ポニーテールの幼女が現れた。
仲間にしますか?倒しますか?逃げますか?




