聖なるものに飢えた王女様がふたたび蘇る(1)
急いで自宅に帰ると、メイドのミーに事情を説明した。
ズンダ財宝は、全て揃えてハナちゃんに渡さなければならないのだ。
都合のいい事に、ミー以外は不在だった。悪事を働くやつは少ない方がいい。
ミーは、わしとドラちゃんを、園児コーデから探検隊コーデにチェンジさせると、メルちゃん号に乗せて、ターマ山へ向かってくれた。
ターマ山には、おやつの時間くらいに着いた。
おまんじゅうを出発前に買っておいたので、一つだけ残して、3人で分けて食べた。
こんな時でも、ピクニック気分で楽しいね。ミーが用意してくれた、水筒のお茶もおいしい。
もっとも、ドラちゃんが一緒に居てくれなかったら、おいしくいた頂かれたのは、わしらじゃった。やはり、ドラちゃんが一緒だと、山の獣が姿を消すのは間違いない。
森の中を川沿いに歩く。
女神レベルが上がると体力が向上するのか、自分の足でさくさく歩いて行ける。前に、ここを通った時は、ミーに運んでもらったけども。
ドラゴンの幼体の保護者になった事で、レベルが上がったんだと思う。セリカ先輩が、女神レベルとはそういうものだ、と教えてくれた。
もっとも、これから行うことでレベルが下がるだろうな。
ズンダ王家の短剣は、かわらず聖剣の如く屹立していた。勇者の如く、それを引っこ抜くわし。
軽く、眩暈がした。女神レベルが下がったのだろう。墓のものを盗ると下がると先輩が言っていた。
そういえば、あいつ墓泥棒したことあるのか?何をすればレベルに影響するのかは、トライ・アンド・エラーで覚えたそうだから。
さらにスコップで墓を掘り返す。
墓の中には、もうひとつズンダ財宝があるはずだ。
でも、掘り出して見ると、王女の十字架には家紋は無かった。
よく見れば、そんなに高価なものでは無さそう。というか、これに刻まれている刻印は、エタナル教の神社で見た記憶があるぞ。神社で売ってる十字架なのかな?この国の宗教様式に対する疑問は置いといて、十字架は王女の胸に戻した。
墓を埋め戻すと、適当に周囲の雰囲気に合わせて地面をならす。
ここが墓であることは、誰にも気づかれてはいけない。ズンダ王女は、今もどこかで生きている。そういう事にするのだ。
王女は近衛騎士と共に、誰にも知られず、ここに眠り続けるのだ。
持ってきたおまんじゅうをお供えして祈る。
許しては貰えないだろうな。化けて出てもいいよ。本当に、すまないのじゃ。
最後の墓参りを済ませると、わしらは短剣を携えて帰宅した。
家に帰ると、ちょうどハナちゃん達がやって来た。
ぎりぎりだったな。こんなタイトロープダンスは久しぶりかも。結合テスト工程まで来て、機種選定やり直しになったプロジェクト以来かな。あれよりましかも、と思ったらちょっと気が楽になった。
ひとつめの課題は、なんとかクリアした。
でも、ハナちゃんとの、交渉がどうなるか次第では、森の中でわしらも眠る事になるかも知れん。
どういうプランでいこうか?なにも、考えてなかったわ。
ハナちゃんは、おそらく王女の生存には拘っていない。いや、居ない方が都合がいいのかな?その場合は、わしの立場は何?どうやって騙すの?わしが王女様だと思わせとく?それだと、わしが命を狙われちゃう?
うーん。
…。
……。
わからん。
結果だけ言うと、300億円ぶんどった。
わしを王女様だと思ったのであれば、今後命を狙われる危険性がある。
王女の命を安く買えると思うなよ?ズンダの国家予算一年分で特別セールじゃよ?
まあ、そんな根拠で300億円提示してみたら、通った。
オエドの株とか押し付けてくるし。わしを飼い殺す気満々な雰囲気じゃった。
トドメにプラチナカードじゃ。これって、この国の奴隷証明書なんじゃろ?
でも、こっちだって武器は手に入れたのじゃ。
小切手と株券を使えば、結構なダメージを与えられるじゃろう。
魔女の一撃ならぬ、女神の一撃じゃ。なんか違うな。相互破壊なんちゃらだ、冷戦だ。
まあ、いいか。
腹減ったので、定食屋に行こう。
定食屋では、「書き置きも無しに、どこかへ行くな」と、リーザちゃんに叱られた。




