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女神リーザちゃんの日記  作者: へるきち


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ハナちゃんは黙ってない(1)

幼女の姉妹がやって来た。


この子達が、ズンダ王家の秘宝を持っているっていうのかい?

なるほど、ちっちゃい方が首から提げているのは、確かにズンダ宝石だね。

どらんごんの涙、とかいう大層な名前のやつだよ。王家の財宝目録に載っていた。


課長の奴が、野心からおかしな話を持ってくるのはいつもの事だけど。

今回に限っては、大当たりなんじゃないかい?ハン・ザワだっけ?名前くらいは覚えてやろうかな。


二人は、この頭取室に入って来た時から、ずっと手を握っている。

仲の良い姉妹なんだね。ちっとも、似ていないけど。

ちっちゃい方は、妙に高貴な雰囲気があるけど、ズンダの王女とは体格が一致しないね。王女は、6歳児にしては大きい方だから、ちっちゃいこの子は違うだろうね。4歳児くらいかな?

姉の方は、庶民としても貧相な感じ。明らかに王女様ではないね。こっちは6歳児くらいだね。年齢だけは王女と同じ。私とも同じ。


こいつらが、王女かどうかは、どうでもいいんだ。

重要なのは、その首の宝石なんだから。


「頭取のハナ・サキと申します。本日は、お目通り頂き感謝致します。リーザ様」


課長のハンを野心家の俗物扱いしている私だけど。私も、俗物だ。貧相な幼女相手でも、いくらでも頭を下げるし、むずむずしてしまう言葉使いだってする。


こいつら、話聞いてるのかなあ?

妹の方は、ケーキに夢中だし。姉の方は、私の顔をぼんやり見てる。そんなに、ポニーテールが珍しいかい?これはね、自分一人でもセット出来るからね、孤児院育ちの私には便利な髪型なのさ。まあ、貴族としては珍しいだろうね。


リーザ・ドラゴン。家名もあるし、こいつも貴族なんだろうね。

ターマ地方では、トップクラスの商人は屋号を家名みたいに名乗るけど。こいつは、着ている服の生地も仕立ても上等だし。黄色い帽子も被っている。黄色の染料は、とても高価だからね。社交界でも滅多に見ないよ。園児コーデなのじゃ?何それ?のじゃ?


こいつ、王女ではないにしても、ズンダの貴族なんだろうね?亡命かな。よくワワンサキまで辿り着けたものだよ。従者が有能なんだろうね、きっと。


「わしら、カードに家名を入れてもらいにきたのじゃ」


貧相なのじゃ姉が、ブロンズカードを二枚差し出した。

誰よ?家名なしでカード発行しちゃった、おばかさんは。


「渉外課の課長のようです」


ハンの奴、しれっと言うけどさ、よその課の顧客奪って来ちゃったのかい?

まあ、気持ちは分かるよ。ワワンサキの貴族は少子高齢化で、小さい子供の口座は、銀行間だけでなく、銀行内ですら奪い合いだからね。

いいけどさー。派閥争いよりも、情報共有してくれないかなー。こんな報告、頭取の私に上がってないよー。


のじゃ姉が、自分に出されたケーキを、妹に与えている。ああ、確かに姉妹なんだね。ほんと、まるで似てないけど。

孤児院に居た姉妹も、こんな感じだった。いつも姉が、自分の食事を、妹に分け与えていたよ。彼女達、ズンダの近衛騎士になるって言って、出て行った。


視察旅行で訪れた近衛騎士学校で、訓練中の姉妹を見た時は、私まで嬉しくなったものだ。

あの孤児院の、ご飯の不味さは、子供の人生を変える力があるね。私も、あのご飯が嫌で逃げ出して、銀行員になったからね。おしりから血が出ちゃう、とまで言われる過酷な銀行員生活も、あの孤児院の不味いご飯より、遥かにましさ。


カードの処理は、頭取権限でさくっと片づければいいさ。こっちの本題はズンダ宝石。


「そちらの指輪を、当行で買い取らせていただけないでしょうか。」


のじゃは、(え?まじで?)って顔をした後で、(うーん、どうしよっかなあ)ってなる。そして、(やったるか!)って顔をして、頷いた。この子、考えが読み易いね。


「実は、他にもあるのじゃ」


今度は、こっちが(え?まじで?)からの(やったるか!)だよ。(うーん、どうしよっかなあ)は省略。銀行員は、殺される前に殺す。悩んでいたら死ぬ。


「そちらも是非!私に、買い取らせて下さい!」


国一つ盗れるかどうかのビッグチャンスだ。


「自宅まで来れるじゃろうか?」

「早速ですが、今夜にでもお伺いしても、よろしいでしょうか?」


(え?今日?)(どうしよっかなあ)(ま、いっか)

ほんと、考えが丸見えだよ。躊躇したのは、(全部あった方がいいのかな?)ってところかい?


妹の方は、ずっと無表情だね。ハンが持ってきた3個目のケーキを食べてる。


「分かったのじゃ」


そう言って、のじゃはカードを置いて帰って行った。

今日中に、家名を入れて、おまえが持って来いよ、って事だろうね。急いで、カード職人にねじ込まないと。私は、カードを掴んで、走った。私は俗物だから、なんでもするのさ。あの不味いご飯は、二度とごめんだよ。

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