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自作小説倶楽部 第13冊/2016年下半期(第73-78集)  作者: 自作小説倶楽部
第74集(2016年8月)/「海」&「足跡」
11/43

03 E.Grey 著  足跡 『源平館主人3、公設秘書・少佐』

 //前回までの粗筋//

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 衆議院議員島本代議士の公設秘書佐伯祐は、長野県にある選挙地盤を固めるため、定期的に彼の地の選挙対策事務所を訪れる。夏のある日、空き時間で、婚約者・三輪明菜と混浴温泉デートをした。訪れた温泉宿は、源平館だ。二人が湯から上がったところで銃声がして、駆けつけてみると、宿の主人が密室になった一階書斎で、拳銃を握っているのが分かった。

    03 足跡

.

 婚約が決まってから、佐伯祐は私の実家に泊まる。父と一杯ひっかけて、翌朝、再度、私・三輪明菜と、密室になった温泉宿・源平館の一階にある書斎を訪れた。すでに、真田巡査部長がきていて、死体はすでに片付けていた。

「佐伯さん、被害者の源平館主人・津下秋吉氏が、左利きなのに右手で拳銃を握っていた。このほかに、有力な物証とかは私にはみつけられなかった。どんなもんでしょうなあ」

 明るくならないとみつけられないこともある。

 佐伯が、フランス式になった窓際に立ってみると、鍵がかけられているのを確認した。

「犯人はどこまで間抜けなんだ。被害者が自殺したようにみせかけた拳銃の利き手が逆。そして、またミスをやらかしている」

 退官間近な警官が怪訝そうに、「どこがです?」と訊き返した。

「フランス窓の敷居をご覧なさい。泥が付着していますよ」

「しかし窓に鍵がかけられている。犯人はこれじゃ出られない」

「なあに、簡単なトリックです。窓の鍵は単純構造。窓枠の左側がリング、右側が掛け金になっている。犯人は被害者を殺害してから、フランス窓から外にでるとき、掛け金を少し斜めぎみに立てて置いて閉めた拍子に、リングに落ちるようにした……ちょっとやってみましょう」

 佐伯はフランス窓を開け、いま言ったように、実演してみた。確かに、ちょっとした細工で、窓を閉める際に密室ができることが分かった。

「これは盲点でしたわい」真田さんがネクタイを正す。

 佐伯が黒縁眼鏡をずり挙げ、もう一度フランス窓を開けて、四つん這いになってみた。

「真田さん、ご覧ください」

「ほう……」同じように四つん這いになった真田さんが、犯人のものと思われる靴を窓下の地面にみつけた。

「源平館主人・津下吉秋氏と利害関係にある者、縁故者のリストをつくり、靴のサイズを計ってみてください」

「あ、これで事件は解決したも同じですな」

 真田さんが愉快そうに笑った。

(――さ、佐伯、いくらなんでも、物語の前半からトリックを解明してしまってもよいのか。ネタがつづかなくなるぞ!)

 真田巡査部長が作成した容疑者リスト。

 被害者の女将で源平館主人・津下吉秋の妻・幸枝。番頭で被害者の実の弟である治郎。そして、もう一人、吉秋夫妻には養子がいた。

 真田さんが慌ただしく書斎に入ってきた青年をみやると、ぶしつけに、「義父さんが亡くなって寂しくなるね。ところで明君、昨日、君はどこにいたんだね?」と訊いた。

「友達のところにいました」

 容疑者は以上の三名だ。

(つづく)

  //登場人物//

.

【主要登場人物】

佐伯祐(さえき・ゆう)佐伯祐(さえき・ゆう)……身長180センチ、黒縁眼鏡をかけた、黒スーツの男。東京に住む長野県を選挙地盤にしている国会議員・島村センセイの公設秘書で、明晰な頭脳を買われ、公務のかたわら、警察に協力して幾多の事件を解決する。『少佐』と仇名されている。

三輪明菜(みわ・あきな)三輪明菜(みわ・あきな)……無表情だったが、恋に目覚めて表情の特訓中。眼鏡美人。佐伯の婚約者。長野県月ノ輪村役場職員。事件では佐伯のサポート役で、眼鏡美人である。

●島村代議士……佐伯の上司。センセイ。古株の衆議院議員である。

●真田巡査部長……村の駐在。

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【事件関係者】

津下吉秋つげ よしあき……源平館げんぺいかん主人。

●津下夫人……吉秋夫人、源平館の女将。

●津下次郎……吉秋の弟、番頭。

●津下明……吉秋夫妻の養子。

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