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自作小説倶楽部 第13冊/2016年下半期(第73-78集)  作者: 自作小説倶楽部
第74集(2016年8月)/「海」&「足跡」
10/43

02 柳橋美湖 著  足跡 『北ノ町の物語』

【あらすじ】

 東京のOL・鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていた。ところが、実は祖父がいた。手紙を書くと、お爺様の顧問弁護士・瀬名さんが訪ねてきて、北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。

 お爺様の住む北ノ町。夜行列車でゆくそこは不思議な世界で、行くたびに催される一風変わしがt 最初は怖い感じだったのだけれども実は孫娘デレの素敵なお爺様。そして年上の魅力をもった瀬名さんと、イケメンでピアノの上手な小さなIT会社を経営する従兄・浩さんの二人から好意を寄せられ心揺れる乙女なクロエ……。そんなオムニバス・シリーズ。

    27 足跡

.

 ご機嫌いかが、鈴木クロエです。

 お盆明けに、私は会社の寮をでてお引越ししました。落ち着き先は、以前にお話ししました、行く先は画廊のマダムのところです。お爺様の美大時代の同期生です。なぜ私が引っ越ししたかですって? では、理由をお話ししましょう。

 お盆過ぎの夕方、仕事から帰って、部屋に戻ってみると、足跡がついていました。それで警察より先に、公安調査庁に籍を置く、父に電話してみると、部下の人をよこしくれて、いろいろ調べてくれました。

 翌朝になると、お爺様の画学生時代の同期だった、マダムから電話がありました。

「おはよう、クロエさん。あなたのお爺様から電話を頂いたわ。うちへいらっしゃい」

「え、遊びにいっていいんですか」

「何いっているの、引っ越すのよ。お爺様が若い衆を二人、手伝いによこすっていっていたわよ」

 ――若い衆? たぶん、瀬名さんと浩さんに違いない。

 以前、北ノ町にむかう夜行列車で出会った白鳥さんがあらわれたからです。父から事情をきいたお爺様が、昔の同期である画廊マダムに、話しを通してくれたのです。

 それでお盆明けの土日、お引越しにお手伝いにきてくださったのが、お爺様の顧問弁護士の瀬名さんと、従兄の浩さん。お爺様は北ノ町の洋館に住む彫刻家です。資産家でもあるので、瀬名さんに、法的な厄介ごとをお願いしています。浩さんはお爺様のお屋敷から少し離れたところに、自宅があり、そこを事務所にしてIT関連の会社をやっています。

「なるほど、これが犯人の靴の跡か。女の子の部屋に入るときはせめて靴を脱いで上がれよな」ちょっとお兄さんの、浩さんがいいました。

「しかし、クロエさんの、あの父上が、引っ越せというからには、ただのコソ泥の仕業ではなかろう。例の〝教団〟か?」と今度は、一回り年上の瀬名さんがおっしゃいます。

 〝教団〟というのは、吸血鬼や魚眼人といった、モンスターの巣窟。お爺様の住む洋館地下にある、衝撃石と呼ばれる大きな隕石を、奪おうと襲ってきた一味のこと。何度か、襲撃してきたのですが、昨年、超人的な、お爺様と父とで返り討ちにし、ほぼ壊滅させたはず。

「残党がいるみたいだな。この春に、白鳥とかいう奴がクロエにつきまとっていたよな」

 白鳥さんは、お爺様がクルーザーで、北ノ町港から沖合いに誘いだし、返り討ちにされてしまった。お爺様がおっしゃるには、幻術を操る、吸血鬼だったとのことでした。

 さて。

 マダムの居処を兼ねた画廊は、中央線沿線の大学近くにあります。戦前からある、アール・デコ風の五階建てのビル。いまどき、引っ越し業者さんに頼めば、私一人分の荷物なんてすぐに荷造りしてくださるのに、あえて、身内である瀬名さんと浩さんを東京によこしたのは、お爺様の深謀遠慮というところでしょうか。

 お二人は、手回しよく、レンタカー屋さんから2トン・トラックを借りてきて、素早く荷物をまとめて、画廊に運び込みました。

 荷物を運び終えたとき、宅配屋さんがきて、赤いワイン・ボトルの御届け物を置きました。

「引っ越し祝い? 白鳥玲央? クロエさん、お知り合い?」

 ――白鳥! あの魅惑的な、若い男性吸血鬼が生きていた?

 瀬名さんと浩さんとが顔を見合わせました。

 鈴木家とその関係者は、〝教団〟と腐れ縁にあるらしく、お二人とも特に驚いてはいませんでしたけれど、「またか」とウンザリした顔です。

 それにしても、こないだお爺様に仕留められたはずの白鳥さんは、どうやって生き延びられたのでしょう。

 その話は置いておいて、マダムの話にしますが、危険な教団関係者から私を匿うとしたら、相当なご迷惑のかかるのを、覚悟しなければなりません。お爺様の、古いお知り合いなら、事情を知っていらっしゃるはず。

 男手の要る引っ越し作業が終わりました。私は五階にあるマダムの部屋の横に一室をお借りしました。古い洋物の映画にでてくる、鳥籠のようなエレベータで自室に入ってお掃除をして、窓に眼をやると、学園キャンパスの森が望めました。

 ――なんだろう、はじめて入った部屋なのに、生まれたときからいるような、懐かしい雰囲気。

 それから、瀬名さんと浩さんが、レンタカーショップにトラックを返しに行く前に、お茶を飲もうという話になりました。ビルの一階店舗には額装された洋画や彫刻が並んでいて、リビングセットが置かれています。私が、給湯室をお借りした私が、珈琲を準備している間に、マダムが、贈り物のワイン・ボトルを、手早く、スケッチしました。

「われわれは、これから、運転しなくちゃならないから、飲めなくて残念です」

「お二人とも、今日はうちにお泊りなさいな。ワインは帰ってくるまでに、無害化しておきますよ」

 お引越し祝いの乾杯は夜までお預け。

 珈琲を飲み終えた、瀬名さんと浩さんとが、トラックに乗ってレンタカー・ショップにでかけました。店先でお見送りしたとき、マダムが小声でこういいました。

「あなたのお爺様がおっしゃっていたわ。こないだ、海で退治したのは、吸血鬼じゃなくて、吸血鬼に化けた使い魔だったんですって。〝教団〟は、鈴木家邸になっている、元牧師館地下の衝撃石もさることながら、鈴木家の血筋を欲しがっているようね」

「血筋? DNAですか?」

「つまり、あなたを魔族の花嫁にしようとしている」

 ――えっ。

 マダムが鉛筆で描いたスケッチ・ブックの絵が出来上がりました。そこにはほっそりとした青年の絵が描かれています。――白鳥さん?

「ワインボトルに、吸血鬼の〝呪〟がかかっていた。いわゆる〝魅了〟というものね。あなたに惚れ薬を飲ませようとしていた。なんだか可愛い」

 マダムは、スケッチブックから絵を切り離すと、鶴の折り紙にしました。それを赤いキャンドルで焼いてしまったのです。――折り紙を、火にくべた瞬間、皺だらけのマダムが十代の少女のようにみえたから摩訶不思議。

「マダム、もしかして魔女……?」

「魔法少女OB。あなたのお母様はいい筋をしていた。たっぷり仕込んであげる」マダムがウィンク。

 そういうわけで、私は会社を辞め、画廊に再就職したわけです。マダムの名前は烏八重。だからカラス画廊。そんなこんなで私は、魔法少女OBの秘書になっちゃいました。

 それにしても鈴木家の関係者って……。

 by Kuroe

【シリーズ主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京で社宅暮らしのOL。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。

●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住む。

●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。

●小母様/お爺様のお屋敷の近くに住む主婦で、ときどき家政婦アルバイトにくる。

●鈴木ミドリ/クロエの母で故人。奔放な女性で生前は数々の浮名をあげていたようだ。

●寺崎明/クロエの父。公安庁所属。

●白鳥玲央/寝台列車で出会った謎めいた青年。

●烏八重/カラス画廊のマダム。

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