表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不思議の王国の奇妙な錬金術師  作者: えのころ
vol.1 便利屋ゼルトザームの事件簿
10/17

CASE10 便利屋と傭兵集団

今回は強敵?傭兵集団登場

「ほ、ほんとにやるんだな!」

「馬鹿野郎!ここまで来てイモ引くわけにいかねえだろうが…」


王都のある屋敷の庭に、侵入者の影が4つ…。ある男は浮き足立ち、ある男はそれを叱咤している。


「よし、窓の鍵は開けた!」

「はやく入るぞ!」


もう二人はガラスを切り、鍵を開け、窓を開いた。


「よ、よし、侵入成功だ…」

「クソ貴族め…これから物色させてもらうぞ…」

「いひひ…世の中は不公平ですよねぇ…」

「きったねぇ妖怪ジジイが金貯め込んで、俺らは貧乏盗賊…」


 盗賊団の4人組は王都に住む貴族の屋敷侵入し、通路をこそこそと駆けていった。その時だった。


「FLAT2、侵入者を発見した」


 何者かの声が聞こえたかと思った瞬間だった。突き当たりから1人の黒い影が飛び出してきた。


「なっ…」

「は、早い」


 そのまま流れるような打撃で、盗賊団の2人の意識は闇に落ちた。残り2人が見たものは…


「俺達がこの屋敷にいたことが運の尽きだったな…哀れに思うよ」


 鉄帽を被り、額にはゴーグルをかけ、革鎧の下に全身黒タイツを纏った犬耳の獣人の男がこちらを見下ろしている姿だった。獣人の男はじりじりと残りの2人に近づいていく。


「護衛がいたか!」

「ちいっ!殺してやらあ!」 


 残った2人の片割れがナイフを抜き、獣人の男に襲いかかろうとした。その時だった。


ズガァァン!!

「!?が、があああああ!?」


 一発の乾いた銃声とともに、片割れの持っていたナイフは鮮血とともに床に落ちた。一瞬のうちに、ナイフを持った手だけが正確に撃ち抜かれていた。撃ち抜かれた男は撃たれた手を抑え、激痛にのたうち回る。


「ああ、いつもながら見事だ、マルク」

「…簡単な仕事だよ、ゲラルト」


突き当りに置かれたツボから濃い緑色の髪に伏し目がちエルフのように尖った耳が特徴の小男が顔を出した。その手に持った銃の銃口からは白煙が立ちのぼる。


「や、やべえ、イカれてやがる!」

「逃げるぞ!」


二人は血相を変え、自分たちが侵入した窓へ向かう。

窓に手が触れたその時。


「ボーゲン・ドナー!ゲラルト、マルク、離れてください!」


澄んだ女性の声が響くと、弧状の雷が盗賊たちに向けて放たれた。ゲラルトは後ろに向けてバックステップを決め、離れた。


「んぐあああああああ!?」


弧状の雷が直撃した盗賊たちは、その場で仰け反り、断末魔の叫びをあげ、焼けたような臭いを漂わせながら倒れ込んだ。


「下手人、確保」

「死んだんじゃないか?」


長い銀髪をなびかせたマゼンタの外套を纏い、革鎧を纏った無表情の女が倒れ込んだ盗賊団を見下ろす。ゲラルトは盗賊たちの生死を気にしているようだ。


「とはいえ、相手は盗賊集団。死んだとしても、こちらにはこれがありますから」


 銀髪の女は殺人許可証をゲラルトに向けて掲げる。盗賊集団や殺人犯、反社会勢力などに対する殺人を許可された証…それを彼女たちは持っている。 


「とはいえなあ…」

「あれ〜、」


ゲラルトが苦虫を噛み潰したような表情をしていると、ダークアッシュの髪を2つ結びにしハーフフレームの眼鏡をかけた女がにへらにへらと笑いながらやってくる。


「あら、ハイディちゃん、ゲラルトちゃん、マルクちゃん、終わったの〜?」

「リシェル…お前がサボってる間に済ませたよ」


袋に入ったポップコーンを食べながらにへらにへらと話しかけるリシェルにたいしてゲラルトが呆れた様子で告げる。


「あーら、新しく調合したやつの威力、試したかったんだけどなあ」

「全く…私たちはあくまで護衛をしているのですからね?」


 ヘラヘラとした様子のリシェルをハイディが窘めていると…


「おお、なんだなんだ!?さっきの騒ぎは!」


 禿げ上がった頭頂部に、側頭部の毛を何本の線になるように固めた恰幅のいい成金風の中年男性がドタドタとやってかきた。


「げ、妖怪シマシマハゲガッパ…」


 その姿を見たリシェルが小声で毒づく。ゲラルトはリシェルに無言で肘鉄砲を食らわせた。


「ええ、侵入者がいましたので…追い払ったところです」


 ハイディが答えるとシマシマハゲガッパは


「窓を切られているではないか!貴様らはどうなろうと構わんがワシの屋敷とワシは守り抜けと言ったはずだ!」


 と喚き散らす。


「ゲラルトちゃん、爆破していい?」

「ダメに決まってるだろ、雇用主だぞ…」


 目を見開いて爆弾を取り出そうとするリシェルをゲラルトが制止する。


「高い金を出したのだ!死んでも守るのが貴様らの役目だ!」


シマシマハゲガッパがわめきながらすごすごと去っていくのをリシェルが口を両側に引っ張り舌を出して煽りながら見送っていたのでハイディとゲラルトが強烈なダブルげんこつを食らわせた。




「よし、納品予定の発破用の爆弾、調合終わりだ」


 そのころ、便利屋ではルドルフが鉱夫たちからの依頼された品物を調合し終えていた。そのとき


コンコン


とドアをたたく音がオフィスに鳴った。


「はーい、どなた?」


 一仕事終えたばかりのルドルフがドアを開く。


「あ、ルドルフさん、お世話になっています」

「ああ、チェルシーくんか。どうしたんだい?」


 ドアの前には青髪ボブカットにウサギの耳と尻尾をはやし、赤紫色のメイド服に黒いコルセットを腰回りに巻いたメイドが立っていた。王家直属の諜報部隊、「I&S」に所属するチェルシーだ。


「君がわざわざ便利屋に来たってことは、わりと大事な用のようだね」

「ええ。ちょっと厄介なことになっちゃってましてね…」

「そうか、では詳しく聞かせてもらえるかな?」


 ルドルフは応接室にチェルシーを案内し、セリアも交えて話を聞くことにした。


「この男のことなんですが…」


 チェルシーは一枚の写真を取り出す。禿げ上がった頭頂部に側頭部の毛を何本かの線になるように固めた恰幅のいい成金風の中年男性が写っていた。


「シマシマハゲガッパ…んむー…もごご」

「セリア、ハウス。というかこの男はたしか爵位を金で買ったとかいう…」


 隣に座るセリアの口にパイをぶちこみ黙らせたルドルフは男に見覚えがあるようだった。


「ええ。成金貴族のカイコン。成金なのはいいんですが、そのお金の出どころがね…単刀直入に言えば、薬物をスラム街にある裏商店で秘密裏に売りさばいていて…」

「裏商店に…」


 裏商店はヴァルト王国のスラム街にあり、表では流通しにくい魔導書や錬金術の素材のほか、銃火器といった武器類、果ては薬物や盗品などの違法なブツが売られており、王国内でも屈指の危険な場所である。


「裏はとれているのか?」

「ええ。売人の一人を締め上げたらカイコンの名前を出しましたし、情報屋を頼ったらカイコンの名前が出てきましたけど…」


 チェルシーはどこか歯切れが悪そうにする。


「んくっ。なんだ、なら捕縛してすべてを吐かせればいいじゃない」


 パイと事情をのみ込んだセリアがもっともなことを言う。


「それが奴さん、厄介な傭兵集団を雇っていまして…」

「傭兵集団?詳しく聞かせて?」


 チェルシーの口から出てきた傭兵集団という言葉にセリアが食いつく。


「ええ。FLAT小隊という流れの集団ですが、これがなかなか強いようで…ミミさんと部下の半分くらいは今ある調査のため離れていて、動ける人員もボクと部下数人くらいしかいなくて…」

「それで僕たちに依頼をしにきたわけだね。あいわかった。情け無用、報酬さえあればどんな依頼も受ける。さあ、行こうか」



 ルドルフはオフィスをルチナたちに任せ、チェルシーとともに旅客車で王都へ向かっていった。


「それで、その傭兵集団に関する情報は?」

「ええ。情報屋の話をボクなりにわかりやすくまとめてみました」


 チェルシーはそう言うと封筒を取り出した。ルドルフが封筒を開けると、FLAT小隊のメンバーの情報や特徴がまとめられた資料が出てきた。資料にはメンバーの顔写真が貼られ、チェルシーが自分なりにまとめた情報が書かれていた。


FLAT小隊リーダー FLAT1 ハイディ

 雷を操る魔法術の他、雷を剣に纏わせる剣術を得意とする、魔法術と剣術の二刀流。剣一本でも二刀流。

クセのつよいメンバーをまとめられる人望と統率力がある。


FLAT小隊ポイントマン FLAT2 ゲラルト

 優れた嗅覚と聴覚で索敵や偵察を得手とする切り込み隊長。筋骨隆々な肉体から放たれる拳と振るわれる警棒は破壊力抜群。


FLAT小隊オペレーター FLAT3 リシェル

 爆弾調合に長けた錬金術師。自分が調合した爆弾が爆ぜるのを見るのが好きという変態。ギリギリでシャバにいられる程度の倫理観。


FLAT小隊スナイパー FLAT4 マルク

 存在感が薄く、予期せぬところから狙撃するスナイパー。エルフとハーフリングの混血で小柄な体を活かし、物陰やツボに隠れるのが得意


「ふむ…ところどころツッコみたい部分はあるが…なかなかに厄介そうなのは伝わったよ」

「なかなか厄介そうだね、あたしらの協力を求めた理由がわかったよ」

「はい…4人まとめてとなるとさすがにボクと部下たちだけじゃ…」


ルドルフとセリアは資料に目を通していく。チェルシーの部下たちはどこか心配そうな表情をしていた。一行を乗せた旅客車は汽笛を鳴らしながら王都へ向かっていく。


「よし、ここが件の屋敷です。王国でバカやらかしたツケを払ってもらいましょう」

「シマシマハゲガッパにしてはいい屋敷に住んでるね」


 大きく、茨が絡みついた立派な門、広い庭と庭に置かれた2つのブロンズ像に、大きな白亜の館。薬物を売った汚い金で建てられたものであることは明白であった。


「さて、解錠だ」


 ルドルフが門の大きな錠にに液体をかけると、門の錠はジュウッという音と煙を放ち、溶けていった。


「よし行くぞ」

「うへえ…無茶苦茶するね社長…」


ルドルフが門を開けると、一行は屋敷へ侵入していった。園庭に足を踏み入れた瞬間に、声が響く。


「止まれ!侵入者め!」


突然の警告にルドルフたちは足を止める。声のほうを向くと、そこには鉄帽を被った褐色肌の獣人、ゲラルトがいた。


「ここをどこだと心得る!」

「ええ、ここの屋敷の主人のやったことに用がありましてね…。まずは話を聞いていただけますか」

「話…あの男が何を?護衛対象ではあるが…ああ。いいだろう」


 チェルシーはゲラルトに要件を伝えるために話し合うことにした。だが、この話し合いが事態をあらぬ方向にを招くとは誰も思わなかった。

さて、いかがですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ