おまけ 6のあと
私は寝つきが悪く、自分のベッドでないと眠れない。
ああボーナスをはたいて買った アスリートも愛用のマットレスが恋しい。
事の後 翔くんにいってシャワーを貸してもらった。
ドライヤーを使わずに 静かになるべくゆっくり髪を乾かす。
翔くんの眠りを妨げないように。
私も終電前に愛しのマイルームに帰れればよかったんだけど。はああ。
……いつまでも 洗面所にいてもしょうがない。
リビングのソファーを借りよう。
毛布はないから、薄いけどコートでもかぶろう。玄関のハンガーに掛けてくれたはず。
「ーーどこへいくんですか。」
静かな いつもよりずっと低い声が背後からかけられた。
「 ! 」
仄暗いリビングに浮かぶ白い上半身。乱れた前髪もそのままに。
「翔くん…。起きてたの?」
「帰ろうとしてました?なんで?」
怖ろしい速さで間合いを詰められ 手首を掴まれる。
「あんまり戻って来ないから、まさかと思ってきてみれば。」
青ざめた顔。痛いほど握ってくる手は震えていて。
「どこへいくんです。もう電車もないのに。」
「…待って。誤解だから。」
壁に強く押しつけられた。
「どこへも行かせない。……もう誰の目にも触れさせない。」
どんどん昂ぶる彼の様子に、慌てて自分の口で彼の口を塞ぐ。
目を丸くする翔くん。唇を離して身を寄せると 彼は私を強く胸にかき抱いた。
互いの心臓の音が聴こえる。
………よかった 落ちついたみたい。
「枕が変わると眠れないの。ソファーを借りようとしただけ。帰らないわ。」
彼はガクリと 私ごと崩れ落ちた。ずるずると床に座り込む。
「よかった…。」
あら昨夜は気付かなかったけど、腹筋が割れててかっこいい。
私の肩に顎をのせて、彼は深くため息をついた。
「本気で足枷買うこと考えました。あんまり僕をヤバい奴にさせないでください。」