4.王都ウェニシアでの再会
ルビ楽しい。でもメンドイ。
種族はイメージ通りのもあれば名前だけ借りてるものもあります。
特に書く予定のない設定ばかりが増えていく今日この頃。そのうち書ければいいなあ。
ロロックスフィアには純人、森人、土人、竜人、獣人、妖人の六人種が存在する。
ゲーム開始時、プレイヤーはこれらのうちから一種選び、キャラメイクを行う。種族毎に体型や見た目の特徴が決まっており、変えられない部分もあるのだが、それでもかなり自由に見た目の設定ができる。拘り過ぎてゲームを始めるのが予定より数日遅くなったなんてざらだ。
キャラメイクが面倒なプレイヤーは、取り込んだ自身の3Dデータを流用することもできる。一から理想の顔を作るのは手間なので、多くのプレイヤーはこの3Dデータを多少いじって使っている。『ロロックスフィア』に限らず多くのVRMMOで似たような感じだ。
ネット上には有名人の顔データなどいくらでも転がっているのだが、多くのゲームではこれらを使うのは禁止されている。VRMMO黎明期に、あるゲームで同じ顔のプレイヤーが大量発生したことがあったからだ。その様子がネット上で取り上げられて瞬く間に他のゲームにも波及し、大炎上した。それ以降は認識コード付きのVRデバイスに紐付けられた本人のデータのみ受け付ける、というのが主流となった。
そんな訳で一人ひとり違う顔が行き交うウェニシア王国の王都ウェニシア。
ここ数日ネットの攻略情報を漁ってはみたが、やっぱりオフラインで取得できるスキル一覧なんて転がってなかったので、さあどうするかな、と気晴らしにぶらつくエンプティがその黒髪ストレートの後ろ姿が知り合いのものだと気がついたのは、なかなかのファインプレーだった。
「よ、ルナ久しぶり。珍しいなこんなところに。家出?」
「ひゃああ! エ、エンプティ様!? 何故ここに…というか、気配を消して近づくのは止めてくださいと何度も…!」
「いやぁその反応懐かしいな。つーか、鈍ってないか? 逆三日月なら気付けただろ?」
「うっ…。うぅ…やはりエンプティ様もそう思われますか…」
少し茶化しただけのつもりがクリティカルヒットだったらしい。前髪の一部だけが金色に光る頭を下げたルナは、ぐちぐちと何かこぼし始めた。
「どれだけ敵を倒してもスキルを伸ばしてもお二人には到底届かない。お二人の力を持っているはずなのに、ダンジョンボスとして生まれてスペックは高いはずなのに。目に見える数字を大きくするだけじゃ届く気がしない。決定的な何かが足りてない。そこまで分かっても! 何かって何だ! 頭の中がぐちゃぐちゃになって! 今までできていたことも分かんなくなって!」
「そっか。まあ頑張れよ」
「雑に流さないでくださいと! 以前! 何度も! 言いましたよね!」
「おう、やっぱ懐かしいな」
一体誰に似たのか、昔から塞いだルナは鬱陶しい。そういう時は離れるに限るのだ。本気で立ち去ろうとしていたエンプティだったが腕を掴まれてしまっては仕方がない。どうせ自分も行き詰まってるし、気晴らしも兼ねて少しくらい話を聞いてやることにした。
「それで? 今回は何に詰まった?」
勢いに任せて引き留めてしまったが、改めてエンプティに問われて、ルナはどうしたものかと慌てることになった。
ウーナは、ルナに対してはべったり甘々だが、それでいて少なからず秘密主義な部分があった。
シイガスに対抗すべく鍛えていること、それがウーナの指示であること、一体どこまでを話して良いのか。そもそも何故ウーナは、ルナがシイガスに対抗できるようにしたいのか、ルナ自身も教えられていない。
加えて、エンプティも普段の軽薄な態度からは感じられぬような察しの良さがある。事情を隠すとなると下手なことは話せない。
その察しの良いエンプティには、ルナの逡巡などお見通しだった。どうせウーナがらみで話しにくいんだろう、何か鍛えてはいるが伸び悩んいるんだろう、伸び悩むとするとあの辺か、と当たりを付けて切り出す。
「まぁ要するに回復スキルの強化だろ? で、どうせ今回もソロでやってたんだろ? 」
「はい…特に困ることもありませんでしたし…」
「またおんなじとこで躓いてる…まあソロ向きの仕様にした俺らの責任でもあるか…」
ルナは、かつてパーティ組んでいたエンプティとウーナの二人によって産み出されたダンジョンボスだ。かつて『プレイヤーが運営できるダンジョン』が実装された際に設計された。
プレイヤーの中でもトップレベルと言われるエンプティの攻撃性能とウーナの耐久性能を併せ持つ、という構想で設計されたのだが、諸々の事情のために、実際には日によって発揮できる力が変化するという仕様になってしまった。
具体的にはゲーム内時間で満月に近いほどウーナに、新月に近いほどエンプティに近づく。髪色の変化もそれに伴うものだ。攻撃型か耐久型か一目で分かる。
どちらにせよトッププレイヤー並みのスペックであり、強力であることには変わらないのだが。
「確かに俺等はルナをソロ用に設計した。ダンジョンボスにとって戦闘は当然ソロだからな。だからソロがやり易いってのは分かる。だが考えて見ろよ。スキルのシステムってのはプレイヤー向けに作られてんだぜ。皆で楽しく遊んでもらうようにできてる。つまり回復なんかの支援系は特に、パーティ組んだ方が強化しやすいんだよ」
「そうなんですか?」
「ああ。攻撃スキルだって何もないところで連打しても強化しないだろ? それと同じ」
ゲーム初期から言われている有名な話である。適当な攻略サイトを開けば必ずといって良いほど載っている。
ルナが知らなかったのは、彼女が攻略サイトなど見ないNPCであり、彼女の保護者たるウーナもサイトを開くより自分でやってみるという気質だからだろう。
などと責任転嫁をしているがエンプティもそんな重要な話を教えなかった元保護者の片割れである。人のことは言えない。
「しかしパーティですか…」
「…俺は手伝わないぞ。ギルド行けばパーティ募集の掲示板があるから自分で探せ。…と言いたいところなんだが、一つ紹介できる当てがある。どうする?」
当てとは『開拓屋』のことだ。数日前に持ちかけられた話をルナにする。ついこの間街道復旧が完了したとのことで、ちょうどこれから周辺のシイガス開拓だと言っていた。
ガルの「間違いない」が飛び出したので『裏エリア』の可能性はなくなったが、それでもかなりの高難度ダンジョンだろう。ルナの修行にはちょうど良い。
「今日は逆三日月だからヒーラーとしては中級並みだけど、俺に声をかけたくらいだから前衛のアタッカーと兼務なら歓迎されるだろ。連携を学ぶ良い機会にもなる」
「是非お願いします」
話はまとまったので連れだってフーダス街道を目指す。
ところでルナをどう紹介したものか。今更な悩みがエンプティ頭によぎる。
いちいち細かい出自を語るのも億劫だし、「元ダンジョンボスです」だけでも済まされないだろう。奴等は絶対突っ込んで来る。
そもそも保護者であるウーナに許可を取らなくてよかったのか。いやさすがにそれを踏まえてルナは了承したはずだ。何かあってもルナの責任だ。俺は悪くない。
まあなんかあってもなんとかなるだろ、と考えることすら面倒になったエンプティは雑にまとめて忘れてしまった。




