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「海神の唄」  ~Takaの唄~  作者: Taka多可
7/9

4>機械、故に純粋で。-2


……………


(自分は人間じゃ無い。)


多可谷は薄ぼんやりとした状態でも、必死に一生懸命考えている。しかし、どうしても空回りする。


身体が持ち上げられた。

……何か言ってるが、聞こえていない。


(もう…どうだっていい…)


《たかたにぃいい!!!》

ドカッ!


女の子の叫び声と強い衝撃が多可谷の思考回路を繋いだ。


「わた……!!」


どさぁッ


バチバチバチッ ビリリッ!!


「…………………!!」


すざっ……


ガシャーンッバチバチッ……


「…ッ痛う……」


多可谷が海神に突き飛ばされた。

海神はあの男達が多可谷に何かをしようとするのを止めようとして。


「そうだ 海神は……!?」


後ろを振り返り


青ざめた顔の男達と


うつぶせになって倒れている女の子の姿が目に入った。


「………?!」



――――――ブヂッ…――――――――――――――


「や…やばいよ、アヤメッ!」

「だから止めたのに!ばかレイ!!」



「てめえら…待ちやがれ……」

「「!?」」



多可谷はゆっくり起き上がり、海神に近付いた。


ダウンジャケットと上着の背中が溶けて破れ、皮膚に二カ所…火傷のような痕がある。


男達の足元には スタンガンが落ちていた。


「許さねぇ…許せねぇよ……あんたたちも、『オレ』自身も………!」

「ぅ…わ……!?」

「に、逃げ……!」




鈍い音と悲鳴が響いた。






「…はあ、はあ……は…ぁ……」


どのくらいたったのか…ようやく多可谷は正気にもどった。


「……ふっ…ははは…人間じゃ無くてロボットか…そうだよね……最初からロボットだと知っていたらこうも落胆なんてしなかっただろうけど、人間だと思い込んでたんだ?

…あはははっ情けないなぁー!何なんだよオレって!!ちきしょー……」


ばしゃっ ばちゃっ


紅い水溜まりをわざと踏み、靴やズボンを汚した。

両手も真っ赤に染まっている。

そして……


「まさか、こいつらもロボットだったなんて…一体なんだっていうんだ。」


多可谷を連れ去ろうとしていた物々交換屋の兄弟も、多可谷と同じ機械人形だったのだ。

キレた多可谷を押さえ込む事などできるはずもなく、ただ破壊されるだけだった。


多可谷は散らばった人間の肢体によく似た部品をみつめた。

おかしいほど冷静に…

例えば、彼等の骨は金属に人間の骨の成分を混ぜこんだようなものらしい。

さっき、彼等が話していたとおりだ。


「どうして…オレだけがここに残って…?

大事な人が死んだって云うのに、涙も流せないような機械なのに……

海神は…普通の人間なのに…!」




……ブルル…ルゥン…

バタンッ バンッ


バタバタバタ……


「……?」


どこからか、車のエンジンの音と数人の足音が聞こえてくる。

多可谷は海神に上着をかけて、その音のほうへ歩き出した。


「Dr.…あそこに。」

「うむ。」


白衣やら眼鏡やら…

とにかく怪し過ぎる


「あなたがたは…?」


多可谷は警戒心を強めた。


「わしは多可谷 虚祐一。ロボット工学の化学者じゃ。勿論博士号は持っとる。」


「…『多可谷』?」


白髭に白髪、黒ぶちの眼鏡の老人が多可谷に歩み寄り、目を細めた。


「おまえさんも、苗字が多可谷じゃな?『多可谷 悟』君だろう?」

「………(無言で頷く)」


多可谷がまだ理解できてないにもかかわらず、Dr.は話を続ける。


「…やっぱり、お前だけだったのだな。人間に近い心を持つことが出来た機体は……」

「! そうか、あなたが機械人形を…オレを造った張本人……」

「そうだ。」


アゴから長く伸びた白い髭をさすりながら淡々と答える。


「なぜ『こんなもの』を造ったんだ?オレは…ここに居ちゃいけないんだ!どうして…ッ…答えろォ!!」


「わしの息子をもう一度造り出したかったんだ。」

「な…っ」

「とりあえず、黙って聞いてくれ…」


若い男が、その辺に転がっていた木箱やプラスチックケースを軽くほろって持ってきた。

二人はそれに腰掛けて、そしてDr.は、ゆっくりと話し始めた。



―――――――


40余年前、多可谷氏(当時29歳)は念願叶って化学者になったが、その翌年…


事のはじまりは妻からの電話。

泣きじゃくる彼女をなんとか誘導して少しずつ話させた。

そして、彼女が居る場所が病院であることがわかった。

多可谷氏は、その病院へ走ったが……


「……なんだって!?」

『あなた……あぁぁ……』


五歳になったばかりの大切な一人息子が、死んだ。

幼稚園バス停からの帰り道で、事故にあって跳ね飛ばされたバイクのタイヤが直撃したらしい。

即死だった。



その日から妻の様子が一変した。

何もせず、また 突然暴れ出す……元々確かに大柄な人だったが、あっというまに痩せ細ってしまった。


多可谷氏は、妻から記憶を全て消し去った。

息子の事、自分自身のこと。

愛した事も。


…二人を冷凍睡眠によって、肉体の保持をすることにした。


多可谷氏のいた研究所には様々な分野に友人が居る。

ある計画を実行するのに必要な人材を集めることは容易だった。

だが、皆進んで協力したわけでは無い。

半ば強制的だったり、嘘の内容で協力させたりした。

手段など選ばない。



大切な者を取り戻すためなら。



―――――――



ある程度のところで、多可谷はDr.の言葉を遮った。


「ちょっとまってよ…あなたの子供は亡くなって、その子のお母さんは病気になっちゃったんだろ?それはわかったよ。

でも、なんでそんなことをオレに話すんだ?関係ないのに……」

「全く無関係では無いさ。その息子の一部が、おまえさんだからな。」


「……は?」


理解が出来ない。


「わしの計画は…もう一度『多可谷悟』という人間を造りだし、二度と手放さないことだった。」

「?!」

「だが、クローンの人間を造る事など…許されることでは無い。そこで『ロボット』として甦らせることにしたのだよ。」


「ぉぃ…まさか……」

「息子の肉体や髪の毛から人間一人分の材料を殖やして集めるのに…五年はかかったな……そしてできあがったのは、確かに姿形は息子とほとんど同じだった。…だが… ヒトとして、いや生物として必要な部分、生殖機能がどうしても再生することが出来ない。

仕方なく、ほかの仲間に協力を依頼して息子以外の死んだ人の身体でその研究をしていたときに……息子や他のヒュームドールをごっそり盗まれてしまったんだ。……それから数年で、あっという間にそれをクリアーした、ほぼ人間に近いヒュームドールが闇世界に出回っている事を聞いたんだ……」


多可谷は座っていた木の箱からずり落ちた。


死んだ子のために、端から見れば狂っている……科学の乱用としか思えないような行動に出た男。


その子の身体の一部が…


「オレの中…に…!?」


「理解してくれたようだな。」


差し延べられた手を多可谷は払いのけた。


「まさか…『帰ってこい』とか言う気じゃないよな?オレはあんたの子じゃない!!あんたの子供は死んだんだ!いい加減認めろよ!父親がそんなんじゃその子…今頃天国で泣いてるぞ!」

「悟……」

「その名前を呼んじゃだめだ、今あんたがしなくちゃいけないのは、さっき言ったそのロボットを全部回収すること。それを終わらせないと…あんたは一生息子に手を合わせらん無いよ!その子供も安心出来ねぇ、お母さんなんか……何にも知らないんじゃないか!

あんた、こんな中途半端のままでいいのかよ!!」

「………」



ぜえぜえと…多可谷の荒い息だけが暫く響いた。


そのとき


「Dr.!この少女、まだいきています、無事です!!」


「おぉっ!!」

「…海神……?!」

二人が駆け寄ると、変なプラスチックのカバーを鼻と口に当てられて、応急処置をされている海神がいた。


「海神……よかった……」


多可谷は海神の横に座り込んだ。


「そうだ、早く医者に…ッ」

「どうやって説明する気だ?こんな事…」

「う……」



それはそうだ。

怪しい科学者に、血まみれの人間では無い物体、バラバラになったロボット……

少しでも状況を世間に知られたら大騒ぎになるのは明らかだろう。


「じゃあ、どうすりゃいいっていうんだよ……」

「……悟、お前がわしの所に帰って来てくれると約束してくれるなら、その女の子はわしが診よう。」

「ッ! まだ言うのか、いい加減わかってくれよ!オレは『誰かの代わり』なんて嫌だ! オレは……『多可谷悟』じゃ無い!!ちがうんだ!!」



名前すら自分の物では無い…

ただひたすら悲しくて

それでも涙一つこぼせない自分が腹立たしい。



「違う。息子としてじゃ無い…おまえさんを匿うためだ。それならいいだろう?」


「……」

「居場所は、ある……」

「……」

「二人とも何とかしよう、必ず…」


「…ふたり……?」

「二人ともだ。」























白衣の男達は、布で包んだ段ボールの箱をいくつかと、赤く染みの付いた布を入れたビニール袋を持って外へ出ていった。


そのあと遅れて、二つ…タオルケットにくるまれた何かが車に詰まれていくのを、どこかの報道記者が撮影していた。

ところがその記者は翌日、その日の出来事をすっかり忘れた状態で、しかもカメラやその他記録していた全ては粉々にされた状態で発見される。


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