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夢IL''幻界少女  作者: ヱフノジルイ
玄鶴宿屋
14/47

癒し瘉され夢煙温泉

 茶を飲み一息吐いた僕達は、温泉へ向かった。

 温泉の方へと続く廊下を歩いていると、ほんのりと独特な臭いが近付いてくる。


 赤い暖簾を潜って脱衣所へ。

 数体の薄い顔の無い影が、着替えをしている。

 扉の向こうには広い浴場が見え、湯気がこちらに流れ込んで来ていた。


 僕は早速帯を外すと、浴衣を脱いだ。

 腕と足をグイグイ伸ばし、軽くコリをほぐす。

 君はもじもじとしながら浴衣を脱ぐと直ぐにバスタオルで腋から下をすっぽり包み込んだ。

 僕はハンドタオルを一枚だけ持つとそれを右肩に掛け、君の手を引いて浴場へ向かった。


 浴場はとても広く、露天風呂となっていた。

 既に何人か浸かっている客も居たが、そこまで混んでいると言った様子でも無く、ゆっくり出来ると安心した。

 

 僕と君はとりあえず体を洗う。

 池の水が染み込んでバサバサになっていた髪が洗剤で洗われ、しっとりとしていく。

 だが如何せん髪が一気に伸びたせいで洗うのが大変だ。

 顔をばしゃばしゃと洗い、汗と泥でべたついていた体を洗い流す。

 潤いを取り戻した肌は元のすべすべ感を取り戻した。


 かなり前かがみになって体を隠しながら洗おうとしている君はなかなか背中に手が届かないらしく苦戦していた。


「はい、洗ってあげるよ」


「あっ、ありがとうござっ……ありがとう」


 タオルを受け取ると、君の白い背中を優しく洗った。

 君の肌はとても柔らかく、まるで子供のようだった。

 泡を流し、水滴を軽く掃う。


「こんな感じでいいかな」


「う、うん……」


 君は顔を赤くして目を逸らす。

 のぼせたのか心配になったが、別にそんな訳ではないようだ。


 僕と君はいよいよ温泉に浸かった。

 足先から胸にかけて、じんわりと暖かさが染み込んでいく。

 少し熱めのその温泉は体を芯から温め、疲れをほぐしてくれる。

 僕は君と並んで座り、肩を揉みながら首をゆっくり回した。


「はぁ~……気持ちいい」


「うん……」


 両足を伸ばし、のびのびとくつろぐ。

 全身に温泉の成分が染み込んでくるのが実感できた。


「あなたの体……なんだか凄い大人、だよね」


「え?あぁ、うん。あんまり気にしてないけどね」


 君は僕の体を頭、胸、股と順番にまじまじと見つめながら言った。


「私よりも、いろんなところが……私よりも、ずっと大人で……悔しくは無いけど、なんだか羨ましいなって」


「大丈夫!人は人それぞれの特徴があるからさ。それが良い処なんじゃないかな?君だって、僕よりよっぽど動きやすそうだし、可愛いし、なんだか羨ましいよ!」


「え、えへへ……そうかな……」


 君は照れくさそうに頭を掻いた。


 僕も君の姿をよく眺めた。

 濡れた白い長髪は光を反射して美しく煌めいている。

 少々弾力のある僕の体とは対照的な、瘦せ型で細い体。

 首の下から肩にかけて鎖骨がはっきりと浮き出している。

 やはり胸は全く無く、小さな蕾が二つあるのみだった。

 僕とは違って、陰部の毛も少なく、産毛が薄っすらと並んでいる程度だった。

 いや、僕が人よりも濃いだけかも知れないのだが……。

 太ももや足も細く、すらっと引き締まっている。

 そのスタイルの良さに、僕は少し羨ましさを感じた。


「あ、あんまり見られると私もちょっと……」


「あぁごめんね!肌綺麗だなーって思ってさ」


「そ、そんなこと……」


 大分体が温まってきた。

 今までの疲れも随分と抜け落ちたであろう。


「……これから、どんな事が待ってるんだろうね」


「……私、ちょっと記憶を取り戻すのが怖いんだ」


「分かるよ……この前見た、あの青空の夢は……」


 ふと脳裏に、駅のホームで見た、青髪と金髪の少女達を思い出した。

 あの二人も、僕達と同じような存在、関係なのだろうか?

 だとすれば、あの夢に出てきた三人を探し出し、出会うことが記憶を取り戻す手掛かりになるのではないだろうか。


「……私達、記憶を取り戻しても、一緒にいようね?」


「あぁ、もちろん!」


 僕と君は拳と拳を突き合わせて、ほほ笑んだ。


 僕と君の体つきは、どこまでも対照的だと、僕は感じた。

 何を取っても、全てが真逆。


 それでも、僕と君はどこか似通っていた。

 何故なのかは分からない。

 何もかもが逆のはずなのに、なにもかもが同じ。


 僕は自分自身の正体よりも、なによりも、君と僕の関係は一体何なのかが、知りたくなった。

 それが僕と君がいつまで一緒にいられるかに、関わるからだ。


 ……いや、それでも。

 何があろうと、僕は君と決して別れる事はないだろう。


 君の笑顔を見ながら、そう感じた。

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