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「分かった! 待ってるからすぐ来てね!」

 レイン自身が避けているのならレイゴットに引き合わせたいとはあまり思わないが、これ以上レイゴットが目の前でウロウロするのも邪魔である。


 帰ってきたら一度合わせて、そのままレインが嫌がるのなら「もう近寄るな」と警告すればいい。


 おそらくレイゴットは食い下がってきて面倒なことになるだろうが、最悪どこか遠い地へ強制転移させれば1ヶ月は帰ってこられないだろう。そこまでの長距離転移ともなると流石に白亜でもそこそこ魔力を使わなければならないのだが、正直近場に転移したところで数日くらいしか時間を稼げないだろう。


 レインに強引に近寄ったらどうなるか、という白亜の本気を見せるという意味でも遠い方がいい。


 転移先で魔王が出現したと大騒ぎになってしまうかもしれないが。


「……わかった。一回だけ、顔合わせの時間を作る。ただし、レインが嫌がったら即終了。その後も強引に接触しようとするのなら強制転移でどっか飛ばすから覚悟しておけ」

「う、うん。わかった。……なんか急に過保護な感じだね?」

「一応、レインはまだ生まれたばかりだからな。過保護なくらいでいいだろう」


 白亜は白亜なりにレインのことを気にかけようとしているらしい。


 距離を少し測りかねているところは、意外と不器用なのかもしれない。


 かなりマシになってきたとはいえ、愛情表現というものがやたらと慣れていない白亜だ。そんなことを気にする暇のない人生を送ってしまった結果、人への接し方、距離の取り方や縮め方、感情の共感がよくわからないのである。


 オブラートに包むのが苦手なのは「こうしたらこんな反応をする」という予測が立てられないということだ。


 正確には、何をしたらどうなるか、ということはなんとなくは分かっていた。が、「他人など気にしている暇がない」と他者への共感性を失った状態が長く続いた。


 シュリアやハクア、リシャットとして生きた時間の方が『白亜』として生きた時間よりずっと長いのだが、白亜の記憶があまりにも強く、いまだに感覚としては『揮卿台 白亜』なのだ。


 たくさんの愛に触れても、根底は変わらない。いや、変われないのだ。


 だが、そんな白亜でも努力はしている。どこか他人事に感じていた他者からの視線、向けられた感情を理解しようとしているのだ。まだそんな状態だからこそ「自分が向ける」というのに慣れていないのである。


 変な形で多少過保護でも仕方ない。


「帰ってきたら一応合わせてやるから部屋で待ってろ。そろそろ帰ってくると思うから」

「分かった! 待ってるからすぐ来てね!」


 レイゴットはワクワクを隠せない、といった雰囲気で廊下を走っていった。


 あそこまで興味の持てるものがあるというのは、少し羨しいかもしれない。そう思いながら再び仕事に取り掛かった。







 十数分後、リンとレインが帰ってきた。


 なぜか途轍もない大きさの袋を抱えている。リンの持っている袋は大きめのリュックサックくらいのサイズだが、レインが持っているのは白亜が中に入っても余裕がありそうなものだ。


 両方とも中身がパンパンに詰まっている。


「ハクア君。た、ただいま」

「……おかえり。どうしたの、それ」

「商業区歩いてたら、レイン君が色々と気になっちゃったみたいで、いくつか買いながら進んでたらお裾分けとかも分けてくれて……気付いたらこんなのになってた」


 商業区にはハクアファンクラブのメンバーが多数生息している。リンに物を渡すと最終的に白亜の元へ行くので、おそらくそれを狙った貢物だろう。単縦にリンが可愛いからサービスしてもらえる事もある。


「すごいな、これ。リンが持ってるのは殆ど食べ物で……レインが持ってるのは服とか雑貨が多いな。丁度いい、レインの服もそこから選ぼう」


 多分これは殆ど白亜へのプレゼントではあるが、白亜本人に渡さない限りその意図は正確には伝わらない。今回は残念ながら白亜ではなくレインのものになってしまいそうだ。


 以前ジュードが「師匠って本当に服適当なのでなんとかしたいんですよね」と服でクリスマス少々揉めたとファンクラブ会員にそれとなく伝えたところ貢物に服が増えた。


 ジュードは基本、白亜は不必要なものに散財しないことを知っている。服を買うとなっても白亜の場合「安売りされてたから同じやつ5枚買っといた。これ着回せばいいだろ」となることは容易に想像できる。しかも微妙な柄のものでも平気で着る。


 センスがないわけではない。絵を描くのが趣味でもあるので、むしろ結構センスはいい。


 だが、白亜の場合周りの目を全く気にしない。別に問題ないとされているのなら、裸や下着で出歩くことすらするだろう。流石にそれはまずいと理解しているのでやらないが。


 着こなしなどどうでもいい。「動けりゃいい」と本気で考えているので、周りとしてはもう少し考えてほしいと思うのだ。考えられるのに、面倒だからやらない。そんなのが多すぎるのが白亜である。


 だが、プレゼントともなれば話は別だ。人に貰ったものを律儀に使うので『一緒に買いに行く』よりも『プレゼントされた』ものの方が白亜はちゃんと使うよう動く。


 だからジュードはわざとファンクラブ会員に話してプレゼントさせるように仕向けた。


 そして白亜はいまだにジュードが裏でプレゼントの内容を操作していることを知らない。

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