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『私はここまでのことをした相手を正直許せませんが……』

 レーグへの仕返しを何とかしてギリギリまで重くしたいらしいエレニカは若干暗い笑みを浮かべつつシアンと相談している。


 白亜自身はそんなにレーグに興味がないので賠償などはあまり考えていなかった。


 白亜の性格からして「とりあえず殴れば一旦いいや」という考え方である。見ようによっては過激だが、まっすぐなので陰湿さは基本的にない。


 怒ることも苛立つこともあるが、感情の起伏そのものが一般的な人より圧倒的に少ないので「地の果てまで追い詰めてやる」みたいな思考回路にならないのだ。


 今回の場合、エレニカがそれに近い精神状態である。


 普段はかなり温厚で、大抵のことは笑って見逃すエレニカだがレーグに関しては別らしい。


 決闘が始まる前は白亜の煽っている言動に笑っていたが、決闘後のレーグに対する対応は塩対応を遥かに超えていた。親の仇かと思うくらいに敵意を露わにしていたと感じる。


 余程レーグには恨みが溜まっていたのだろう。


「で、可能な限り俺とハクア君への接近禁止を入れたいんだよね」

『それは同意します。その上で今後のために必要になるものを可能な限り頂戴したいです」

「お、いいね。……ちょっと待ってあいつの資産状況のデータ出すから」


 どうやらギリギリのラインまで搾り取るらしい。


 エレニカもそうだが、シアンもなかなかにレーグにキレている。


 白亜を置き去りに、二人の議論が加速していく。レーグを如何にして表向きには分かりづらく制裁を加えられるかというラインを探っているらしい。


 今回の件で白亜がレーグの決闘を受けねばならなかった理由の一つにレーグ自身の人気がある。


 レーグが人気であるからこそ、下手に対処しようとすれば一部で反発が起き、収拾が付かなくなる可能性があるとエレニカと天照大神が判断したのだ。


 シアンがエレニカから聞いていたらしいのだが、どうやらエレニカは水面下で白亜に向かっていた反発を抑えてくれていたらしい。


 主に説得したらしいが、普通の説得というよりちょっと脅したというのが正解だろう。


 ただ、今回は相手がそもそも話の通じないストーカーだったこと、運の悪いことにそのストーカーの顔がいいことなどの条件が重なった結果、水面下での処理が難しくなったのだそうだ。


 そして逆に白亜がレーグを叩きのめすことができれば抑止力になる。白亜自身が強いことを証明できればある程度の神はそれだけで白亜を認めるし、そうでなくともエレニカ本人が「次は俺が動く」と宣言した為、白亜に嫌がらせはまずできない。そんなことをしたらエレニカが飛んでくるのが目に見えている。


 エレニカが異世界の神々の中でも代表的な立ち位置にいるのは【最強だから】というシンプルな理由だ。


 そのエレニカに敵うものは誰もいない。口喧嘩なら天照大神の方が圧倒的に強いが。


「そこまでしなくても、いいんじゃないですか……? 正直、そんなに怒ってないですよ……?」


 シアンとエレニカの話の内容が結構物騒になってきたのでなんとなく白亜が口を挟んだ。


 エレニカは白亜の言葉に一瞬きょとんとして、小さく苦笑した。


「ハクア君がこれ以上面倒な目に合わないためにも、こいつを追い詰めたいからね。まぁ、君がやめてと言うのなら俺は君の意思を尊重するよ。今回俺は立会人ってだけだから」

『私はここまでのことをした相手を正直許せませんが……』


 シアンは怒りが燻っているらしい。


 白亜もシアンの考えは理解できないわけではないのだが、色々と勉強になったことも多いのでそこまで気にしていないというのが白亜の本心だ。


 レーグのことは嫌いだが、そこまで追い詰めたいとは思っていない。多少痛い目は見ればいいとは思うが。


「じゃあ本人がこう言ってることだし、少し見直そうか。シアン君」

『そうですね。では禁止事項の確認からしましょう』


 その後はエレニカとシアンが会話をし、たまに白亜がそれに意見を述べるという形になった。


 出来上がった誓約書の内容は、ざっくりまとめると【周囲の者も含め、白亜への嫌がらせをしないこと】と【白亜が協力を申し出た際には必ず応じること】が主な内容となった。


 他にも細かな制約はあるが、大きくはこの二つである。


「エレニカさんへの接近禁止命令とか、入れなくていいんですか?」

「それができるのなら、したいんだけど。あいつ君にちょっかいかけなくとも他に迷惑かけることはまだまだあるし、俺が結局見張ってなきゃいけないんだよね。それに、俺一応代表だからあいつが音信不通になられても困るし」


 エレニカも大変らしい。


 白亜への協力を取り付けるという内容はシアンが提案したものだ。最初は「なんなら財産9割削ってやろうぜ」みたいな雰囲気になっていたシアンとエレニカの話を白亜がなんとかやめさせた結果こうなった。


 それでもレーグの財産の一部は没収するらしい。これくらいは取っとかないとだめ、とまでエレニカに言われてしまった。


「欲しいものがなくても欲しがらなきゃダメ。こいつの場合しょうがないって見逃すと増長するから」


 とのことだった。見逃して後々面倒に巻き込まれるのはごめんなのでそれくらいは従うことにする。


 結局、エレニカとシアン、白亜の話し合いは2時間ほど続き、レーグの財産の一部没収、白亜に対する嫌がらせの禁止などを書き込んだ誓約書が出来上がった。

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