「船を中だけ大きくするのが流行ってるんですか?」
当日、白亜は村雨の手入れをしていた。
アンノウンを主軸にするか村雨を主軸にするかで少し迷ったが、相手も神である以上は手加減を考えればこちらが死にかねない。威力の高い村雨で戦うと決めたのだ。
そのため、少々アンノウンは不機嫌である。
『いつもこういった場面では其奴を使う……』
アンノウンにしてみれば武器同士なので村雨を物ではなく存在として認識している。度々村雨の言葉を代弁することもあるので、会話も可能なのかもしれない。
「仕方ないだろう。アンノウンは気力を使う分、切れ味はそんなに良くないし」
性質上、白亜の力を刃に変えてその都度生成するアンノウンと、最初から切断することを目的に作られた村雨では切れ味の精度が違う。
アンノウンはその場その場で刃を変えられるという点ではとても汎用性の高い武器なのだが、気力で作ったもの自体がそもそも脆い。
職人が心血を注いで作った一級品の武器、しかも斬ることを目的とした武器を超えられないのだ。
「もちろんサブとしてお前は持っていくが……今回は用途に合わないんだ。聞き入れてくれ」
『……仕方ない。……! 村雨、今笑ったな!?』
どうやら村雨に笑われたらしい。
以前アンノウンに村雨は何をどう考えているのかを聞いたところ、白亜の事は好きだそうだ。作ってくれるキッカケになったジュードの事も好きらしい。だが、リンの事は少し複雑と答えた。どうやら仲間意識はあるのだが、白亜を取られたくないと嫉妬しているのだとか。
武器にすらモテる白亜だが、残念ながら本人には全く届いていない。
村雨の性格はかなり温厚で、ただキレると恐ろしいらしい。白亜の影響もあるのだろうか。
「さて、そろそろ行こうかな。シアン。座標を頼む」
『かしこまりました』
白亜はもう一度装備を確認してから、シアンから送られた場所へ向かった。
到着したのは二階建ての小さな船が停泊している海辺だった。
ここに来てとエレニカに渡されていた座標にそのまま転移しただけなので、ここがどこなのかはよく分からない。
海には小さな船があるだけで、他の船は見当たらない。背後には高層ビルが並んでいる。
見た感じの技術力は地球と大差ないくらいだろうか。
「ああ、来たね。準備はできてるかい?」
キョロキョロと辺りを見回していると、船の中からエレニカが出てきた。
「はい。防御より、動きやすさをメインに」
「それでいい。あいつ、なんだかんだ言ってそこそこ強いから攻撃はなるべく受けない方がいいからね。受けるにしても受け流すことを主軸にして。武器はそれかな?」
白亜はエレニカに村雨を渡す。エレニカは刀身を眺め、小さく驚きの声をあげた。
「これ凄いね。特殊な力はあまりなさそうだけど、その分切れ味が半端じゃない。どこでこれを?」
「弟子が入学祝いにくれたんです。国一番の鍛治師に作ってもらったとかで」
「その人腕いいね。これなら対等に戦えそうだ」
エレニカが白亜に刀を返す。凄いと言ってはいるが、エレニカも相当大きな剣を常に背負っている。見た目からして重たそうだ。実際、車並みに重い。
「エレニカさんの武器もすごいじゃないですか」
「俺のは……まぁ、なんというか……。だいぶ癖があるし、普通の人には到底持ち上げられないだろうし。武器の性能自体は微妙かも」
「そうなんですか?」
エレニカの武器は変形する。エレニカ自身が作ったらしいこの武器には、アンノウン以上の汎用性があるのだそうだ。ただ、非常に重たい上に扱いづらい。そもそも巨大すぎるので取り回しが難しいのだ。
「ま、これはいいさ。それより早速向かうとしようか。あんまり長居するとこれから先が面倒になるからね」
「わかりました。……えっと、その船で?」
「そうそう。さ、入って」
促されるまま中に入ると、これまた広々とした空間が広がっていた。白亜とエレニカが初めて会った場所でも、こんな感じだった。
「船を中だけ大きくするのが流行ってるんですか?」
「ん? いや、そういう事じゃなくてね。停泊しとく場所とかがないから小型化してっただけだよ」
エレニカが苦笑しつつ空中に手をやると、若干の振動と共に水音がし始めた。どうやら動き出したらしい。
「あの、言われた場所に飛んできただけなのでここがどこなのかが分からないんですが」
「ごめんごめん説明不足だったね。ここはどの世界でもない、空間と空間の間にある場所なんだ。君と初めて会った時もここに来てもらったんだよ。神々の交流するためだけの場所で、神以外は基本入れない」
どこかの世界かと思ったが、そんな事もあるのか。と納得する白亜。
確かに神同士の決闘など、どこで行えばいいのかも分からない。普通に世界が滅びそうだ。
「でもまぁ。なんていうか、リゾート地っぽくなってるけどね。ここなら仕事しなくていいから。休日に遊びに来る神も多いんだよ」
「リゾート地……そんな場所で決闘しちゃって大丈夫なんですか?」
「んー、多分? 誰も怒んないよ。そもそもここの管理者はいないも同然だし。ぶっ壊しちゃっても、ここ馬鹿みたいにデカイから多少崩壊させちゃっても大丈夫だよ」
やはりというべきか、神々のリゾート地。スケールは大きかった。




