「……いや、まだ何が欲しいとか言っていないんだが……」
かなり遅くなりましてすみません……
寒すぎて、部屋で書いてられないんです……
暖房つければいいだけなんですけどね……
白亜がキレたことをいち早く察したのはリシューだった。
普段からあまり表情の動かない白亜の顔があからさまに歪んだのだから、ここ最近白亜の表情のなさに慣れてきたリシューはそれが余程のことだと悟る。
しかも白亜がガルから貰った茶葉をかなり大事そうに保管していたのを見ていたので、キレた理由もすぐにわかった。
リシューは相手が何者なのかもさっぱりわからないこの状況で、ひとまず白亜を宥めなければ、と天才的な反応速度で決断する。
「ま、待て! リシャット。ここで暴れたらマズイ」
小声で白亜に落ち着けと語りかける。
ほぼ同時にシアンとアンノウンも白亜に向かって『今は堪えろ』と叫んでいた。
三人(武器と能力と獣であるので人ではないが)の素晴らしき反応速度により、白亜の怒りメーターがほんの少し下がる。
まだかなり燻った苛立ちは感じるものの、抑えることは可能なラインだ。
一旦呼吸が整ったと見てホッとするリシュー。
リシューにとっては人の世界の常識やらは全くわからないのだが、白亜がキレた時に周りに何が起こるかがあまりにも未知数だったために止めに入ったのだ。
シアンとアンノウンは相手が上の立場であった時今後面倒なことになると予感したためだが、リシューの場合は危機察知能力がうまく働いてくれた結果だろう。
事実、止めに入っていなければ地震くらい起きていた可能性がある。
それだけ白亜は怒っているのだ。珍しく。
「何だ、文句でもあるのか」
だが、この目の前の少年は白亜のヤバさを知らない。高圧的な態度はそのままである。
シアンとしてはお茶のことに関してのみ文句を言ってこないのなら大丈夫なので、そこだけを避けて話してくれないかと祈るばかりだ。
白亜は自分自身が貶されたりすることに関しては何とも思っていない。
チビと罵られるのは若干傷付く傾向にあるが、それ以外のことであれば大抵怯まない。
これぞ天然記念物。他人の評価など本気でどうでもいいのである。言われたことはないが「顔が生理的に無理」とか言われても平然と「ああ、そう」と返せる。
見る人によっては鋼の精神の持ち主に見えるだろうが、別に他人の評価を気にしないだけで心が強いわけではないのだ。弱いところは弱い。
それでも今回の相手は子供である。大人である白亜が張り合ってどうする、とシアンが諭すと不満げな表情でありつつも溜飲を下げた。
「いいえ。何でも。……それより、ご用件は?」
「ああ、失礼した。それは私から説明を。単刀直入に言うと、君の持っている情報が欲しい」
少年の側にいる男性がそう言った。その言葉を聞き、白亜はコンマ数秒で回答する。
「特にありません」
「……いや、まだ何が欲しいとか言っていないんだが……」
面倒だと即座に判断した白亜。シアンの意見を聞かずに「特にありません」で話を流そうとする。
『……面倒なのはわかりますが、せめてお話だけでも聞きましょう。中まで入れてしまっているので、追い返すこともできませんし』
情報を渡さない、と最初から決めて「特にありません」と宣言することはよくある。それが情報屋の対処法なのだ。
下手に喋ると口の達者な彼らはサクッと情報を得て行ってしまう。
白亜は口下手なのでそういった相手の対応は配下やジュードに丸投げするのだが、直接聞きに来られたりする時もある。そう言う時の対処法として何か聞かれる前に「情報は持っていません」とだけ宣言して逃げる戦法が有利なのだ。
白亜は大抵そうやって乗り越えてきた。だが、今回は部屋に招き入れた時点でそれをするのは難しくなった。
何も知りません戦法は扉の前でのみ通用する技だ。入れてしまってはもう効かない。
白亜は軽くため息をつき、口を開く。
「……渡すか渡さないかは、こっちが決めます」
重要情報は話せない。主導権はこっちにあるぞと先に宣言しておくべきとアンノウンに言われたのでストレートにそう告げる。
あまりにも直球すぎる宣言。かなり発言的には失礼だが、オブラートに包んで告げるなど白亜には無理である。
「なっ……!」
当然、あまりにも投げやりで横柄な態度に今度は少年が怒りを露わにする。
だがこれ以上子供同士の喧嘩じみたやり取りは不毛だと判断したのか、男性がそれでもいいと首を振る。
白亜と少年のつまらない喧嘩など時間の無駄である。
そして結果的に白亜がキレるとこの辺り一帯が危険なことになるかもしれないので、この選択はかなり正しい。
「それで、欲しいのは君が通ったであろう『裂け目』の底へ向かうルート、その方法。そして帰還の方法だ」
その言葉に、白亜は軽く目を細めた。




