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「今は待ちです。正直暇ですね」

 ガルと軽く話しをしつつ、お茶を楽しんでいるとシアンから声かけがあった。


『彼が動きました。護衛依頼を受ける方向の様子です』

(少し、意外だな……メンバーはあのパーティだけ?)

『はい。全員で向かうみたいですね』

(わかった。そのまま監視しておこう)


 白亜の本業は前田の監視だ。


 そっちを疎かにしてはならないが、正直なところ目立ちすぎて少しやりづらくなりつつある。


 特にここ数日は『リシューと街に滞在しなければならない』と要請がきているので街から出られない。


 リシューほどの大物が街で暴れでもしたら誰の手にも負えないことになるのは間違いない。連れてきてしまった責任もあるため、白亜が一緒にいることが上層部からの条件だった。


 エヴォックからも頼まれているし、白亜自身、少しやりすぎた感はなんとなく感じていたので引き受けるしかなかった。なんとなくでも空気を読むことができるようになり始めたのは大きな進歩である。


 残念ながらその状況になる前には気付くことはまずできないが。頭の回転は早いのに、使っていることが極端すぎて興味ないことにはとことん無関心が故の天然記念物である。


 やらかしてしまって、周囲が「やっちゃったな」と認識して、白亜に視線を送ると、ようやく『なんかやったかな?』と感じるレベルである。人の感情の先回りは到底できない。


 そんなわけで一騒動を引き起こした張本人の白亜は引きこもり生活を余儀なくされた。


 だが監視対象は街の外に出て行ってしまうわけで。


 苦肉の策として、常に遠視を発動させ続けて動向を見張ることになってしまった。


 つい最近まではたまに魔眼で確認するくらいの事しかしていなかったのだが、白亜が確認するタイミング以外の時に色々やらかしたらしく修羅場が出来上がっていたので、それからは常に監視する事になってしまった。


 前田はとにかく女性関係のトラブルが多い。その行動がこの世界のためにならないか、それとも許容範囲のものなのかを判断するのが白亜の仕事だ。やりすぎだったら記憶を消して時間を戻した上で日本に強制送還、問題なさそうだったらこのまま放置となる。


 すでにこの短い期間中に三股をかけて修羅場に発展した。


 もうアウトなラインかもしれないが、一応天照大神に確認をとったところ「うーん……それくらいなら偶にいない訳でもないから……もう少し様子見で」と言われた。


 あまりにも選り好みしても仕方ない、という事らしい。


 右も左もわからないこの世界でここまでアクティブに動けている時点では、割と問題なさそうにも思えてくるから不思議だ。


 実際、まだ怖がって街の外に出られていない人そこそこの数いる。


 白亜はほとんど説明も聞かず突っ走って仕事を始めたが、白亜は異様なペースであることは言うまでもない。


 普通に考えて一人で行動するなんておかしい。


 だが白亜は白亜だ。誰にも縛られたくないし、やりたい事をやる人である。


 仕事は一応ちゃんとやるが、やりたくない仕事はあまり引き受けない。


「それで、契約の件は上手くいきそうかな?」

「今のまま順調にいけば恐らくは。リシューも気性が荒い訳じゃないですし、言葉も通じます。話せばわかるということが理解できない方が首を縦に振らないので、もう少しかかりそうではありますが」


 動物と会話可能ということを未だ信じられない人もいる。


 リシューを見に来たにも関わらず「本当にサザかも疑わしい」とさえ言われた。


 じゃあ何を持ってきたら契約したと認めてもらえるのかを教えてもらいたい。本人連れてくるのがダメなら、せめて「これを持ってきたらいいよ」という具体例を持ち出してきて欲しい。


 だが、やはり大多数の人間には本人がいるという事実が効くらしく、ゆっくりではあるが契約は認められ始めてきた。もう少しで本契約にできそうである。


「今は待ちです。正直暇ですね」

「そうだろうね。君現場タイプっぽいし」


 ギルドから許可が出なければ街を出られない。前田の様子はシアンに確認してもらっているし、実質今は何もすることはないのだ。


 じゃあ前田の監視は白亜がやれよ、という話にはなってくるのだが、遠視の魔眼は暗視や透視に比べると若干消費魔力が大きい。


 白亜の魔力は相当なものなので常時フル使用していても問題ないくらいではあるのだが、白亜の魔眼の特性として『使用中はちょっと光る』というものがある。


 つまり遠視を使っている間、左目はずっと光っているのだ。夜や薄暗い場所だと片目だけぼんやり光っているというのは少々異様に映る。


 白亜の体を完璧に把握しているシアンだと光っているか光っていないかギリギリのラインまで魔力を絞って魔眼を使えるので、今回はシアンに任せてあるのである。


「それで、今日呼び出したのはこの前の約束を果たすためと、もう一つ。暇な君に頼みがあってきたんだ」

「? なんでしょう」


 ガルの話した『頼み』に白亜は首を傾げつつ了承の意を示した。


 その内容は、


「明日一日、エヴォックさん以外の人からの依頼を受けないで欲しい」


 というものだった。

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