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『いや、被害は出てるでしょう……』

 とりあえず大地に連絡を取ってみる。


 直すにせよ、買うにせよ、大地だけが知っているパスワードを入力したりする必要があるため、今回の件の共有は必須だ。


 隠し通すのはまず不可能である。


 ため息をつきながら家の電話を操作する。数回のコール音の後に大地が電話を取った。


「お仕事中に失礼致します、旦那様」

『リシャット君かい? 帰ってきてたんだね。それで、どうかしたのかい?』


 帰ってきたというだけでは報告など入れない白亜が連絡を取るのは、基本トラブルがあった時のみである。


 しかも大抵白亜が処理するので事後報告である。


 大地はいつも「なんとかしてくれるのはありがたいけど、先に連絡入れて欲しいんだけどなぁ」と思っている。


「少し面倒なことが。……本日、私が私用で出ている間に空き巣が侵入しまして、お嬢様と欄丸が遭遇しました」

『えっ⁉︎ 二人とも無事なのかい⁉︎』

「はい。それは片付いたのですが、空き巣が小屋に火を放ちまして軽く炎上しました」

『え、炎上⁉︎』


 あまりにも淡々と話すので深刻な事態になってるのかもわからない。


「ご安心ください。人的被害、及び猫的被害もありません。屋敷にも燃え移っておりませんし、小屋がほぼ全焼したのと木が数本焼け落ちた程度です」

『いや、被害は出てるでしょう……』

「小屋なら私が建てます。幸い、中のものは殆どが私の趣味道具です」


 つまり今回の被害は全て白亜が被ったのである。


「それはどうとでもなるのですが、一つ問題が」

『な、何があったんだい?』

「手違いで旦那様のPCが大破してしまいました。……バックアップ、取っていらっしゃいますか?」


 これで大地がバックアップさえ取っていればこの問題は解決するのだが。


『ばっくあっぷ……? って、なんだい?』


 用語すら知らなかった。


 白亜は今まで三回は説明しているはずなのだが、どうしたって覚えられないらしい。


「データをコピーして別の場所に移す……というのが一番わかりやすいでしょうか。PCそのものが破損しても、データは残っているようにする行為なのですが」

『えっと……いつも使い終わったらすぐに電源を落とさずにシャットダウンしてるけど、それは違うのかい?』

「それはただ本体に残してるだけですね……」


 予想通りと言うべきか。


 大地のPCには社外秘の情もあるので、仕事の情報はなるべく見ずに使い方を教えてきていた白亜だが、次からは多少見てしまっても横で画面見ながら教えようと心に誓った。


 と言うか、たまにバックアップ取れてるか確認しようと誓った。


『君でも直せないのかい?』

「私はそこまで万能ではないですよ。やるだけやってはみますが……データの破損はどうにも。形がないものなので復旧も難しいんです」


 とりあえず電話を切って大破したパソコンに向かう。


 もうどこから手をつけて良いのかわからないくらいにバッキバキだった。


 とりあえず分解し、直せるものから直していく。


「基盤がここまでダメージ受けてると……」


 本当にタイミングが悪い。白亜が日本に来た直後にこうなっていたのなら、極小範囲で時間を巻き戻してやるのだが。微妙に時間が経っているせいでそれもできない。


 1分巻き戻すのと10分巻き戻すのでは消費する魔力量は段違いだ。


 10分巻き戻すために使う魔力は、1分巻き戻す時に使った魔力量の数千倍にまで膨れ上がる。


 時間が伸びれば伸びるほど、指数関数的に増えていく。


 これが時間を操る魔法の不便なところだ。


『とりあえず、力技で押しきりましょう』


 そして白亜とシアンが魔力と気力と器用さでごり押しした結果。


「……な、なんとか外側だけできた……」


 データはまだいじっていないが、PC自体はなんとか直すことに成功した。


 だが、内部データはロックをかけてあるためにまだ弄れず、とりあえずそのまま放置することにする。


 いつの間にか、かなり日が傾いていた。


「みー」


 白亜が格闘している間にミュルたち猫もご帰宅したらしい。白亜の気配を感じ取って来たのか、ミュルが大地の部屋に入り込んできた。


 残念ながら住まいとしている小屋は全焼したため、ミュル以外の猫は今日は野宿である。


 あとでキャットフードでも持って行ってやるかと思いつつカーテンを少し開けると、門の外にはまだ人だかりができていた。


「まだ取材陣とかいるのか……」


 パソコンの問題が今の所一番の問題だったので、白亜は警察やマスコミの対応を全て『主人がいないため後にして欲しい』と先延ばしにしていた。


 正直こういうのはなれないので、大地に丸投げである。


 ミュルを抱いて廊下に出ると、表情が若干死んでいる美織と欄丸が廊下に正座していた。


「………」


 白亜が二人のことを忘れていたのは、言うまでもないだろう。

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