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「どうすれば攻撃が当たる?」

 白亜の魔法に押しつぶされたドラゴンの死骸を、白亜とルギリアで確認しに行く。


 ヴォルカはここまで火口に近づくと流石に耐えられないので見張りだ。


 白亜はともかくルギリアが耐えられることが異常なのだが。


 押しつぶされたドラゴンを見て、白亜が眉をひそめて小さく首を捻る。


「ルギ」

「どうした?」

「ドラゴンって、6匹だったわよね?」

「ヴォルカはそう言ってたな」


 正確に言えば言っていたというより伝えていたという言葉の方が正しいかもしれない。なにせ全部ハンドサインで、言葉は交わしていないのだから。


「……おかしい。5匹しかいない」

「なに?」


 ルギリアがドラゴンを確認しようと振り返った瞬間、ルギリアと白亜の間を熱線が通り抜ける。


「「!」」


 二人が同時に回避行動をとり、掠りもしなかった光が岩肌に当たって岩が溶け出す。


 岩が即座に溶けたのをみると、下手したらマグマより高温かもしれない。


 白亜とルギリアが熱線の飛んできた方をみると、体長3メートルほどの小型のドラゴンが口を広げて二人を油断なく見つめていた。


 ここにいる他のドラゴンたちは基本的に10メートルは超えているのを考えると、かなり小さい。


 そもそもドラゴンは大抵が巨大な魔物だ。5メートル以下はほとんどいない。


 それ以上小さくなると、ドラゴンではなく蜥蜴扱いになるからだ。


 だがこれはドラゴンだ。サイズが小さかろうが、劣等種扱いのトカゲではない。


 しかもおそらくドラゴンの中でもかなり手強い龍種だ。


 ドラゴンには龍種と呼ばれる種類と竜種と呼ばれる種類の二種類がある。


 亜竜種と呼ばれるワイバーンなどは形は似ているが種族的にはまた別物なので省くとして、龍と竜の違いは生きた年数の違いだ。


 基本的に、永く生きたドラゴンは生きた分だけ魔力も増えるしそれだけ強くなる。老衰で死ぬドラゴンは稀で、実質寿命はほとんど関係ないのだ。


 数百年単位で生きるドラゴンからすれば寿命を迎える前に死んでしまうことの方が多いのである。


 そのために強さの指標は生きた時間なのだ。竜が短く、龍が長い。竜と龍の明確な線引きはないのだが、数百年生き延びた竜は龍になる。


 もちろんなにもかも例外はあるので、若い個体が龍で年老いた個体が竜であることも十分あり得る。


「シュナ! 重力!」


 こんな小さな龍種がいたとは思っていなかった。咄嗟に重力魔法を指示する。


 白亜が無詠唱で重力魔法をかける。だが、


「だめ! まるで効かない! 多分魔力を散らされてる!」


 魔法がかからない。魔法としては完成しているはずなのに、当たる寸前で魔力が霧散してしまう。


 なんども様々な魔法を打つ白亜だが、全て発動しても当たる前に消えてしまう。


 魔晶属性魔法は使えないこともないが、使えるものが限られる上に使えても拘束系統のものしか使えそうにない。


 ここが超高温なのが問題だ。魔晶はこの世界そのものだとはいえ、白亜の魔法は大抵が植物に干渉するものだ。


 こんな場所では植物は育つどころか一瞬で焼けるか枯れてしまう。


 魔法が効かないのを確認してから、白亜が魔力で作った剣で斬りかかる。


 瞬きの暇すら与えない速度で迫り剣を滑らかに振り下ろした。


「外した……?」


 だが、全く手応えがない。


 振り切った時には既にいなかった。とっさの勘に従って右側に気力で作った盾を出現させると、何かがかなりの勢いでそこにぶつかった。


 あまりの頑丈さ故にダメージは全く入っていないが、体重が軽すぎて踏ん張れずに数歩後ろに下がる。


 距離を取りつつ何が当たったのかを見ると、尻尾だった。かなり太く、先端が鏃みたいに尖っている。


「シュナ、大丈夫か?」

「ええ。でも」


 魔力で作った剣も、気力の盾も壊れてしまった。正確には、当たったところが溶けたのだ。


 魔力を散らす鱗であると同時に、魔法なのかそういう特性なのかはわからないのだが何か高温の膜を纏っている。武器が当たった時には武器が溶けていて大したダメージも入らないのだ。


 しかも面倒なことに、動きがかなり早い。


 ある程度は加減しているとはいえ、白亜でも驚く速度だ。当たる攻撃は回避されてしまい、威力の弱いものであれば武器の方が溶けて使えなくなってしまう。


 魔力や気力で武器を作り出すのにも限界はある。このままでは何もできず睨み合って終わるか、徐々に追い詰められてジリ貧だ。


「どうすれば攻撃が当たる?」

「あれ以上の速さで動けたとしても、高温の膜が厄介だわ。何もかも溶かされてしまっては当たるものも当たらない」


 遠距離攻撃も通じない。最大火力である魔法が一切効かないのだから、対策の特に取っていない今では近付いて斬るしか方法がない。


「魔法自体は発動するから、落とし穴とかはできるけれど」

「落とし穴か……落ちてくれると思うか?」

「落ちてくれないでしょうね。環境を変える魔法は強力な分、周囲の環境にも左右されやすいの。ここではあまりそういう魔法は使わない方がいいかもしれないわね。下手に落とし穴をたくさん作りでもすれば、足場がなくなって私たちの方が死ぬでしょうし」


 環境を変える……落とし穴や白亜の植物干渉能力は周囲の元の環境に左右されやすい。


 洞窟で穴なんか適当に掘ったら落盤する可能性もあるし、こんな場所では木もないので植物の力を借りることもできないのだ。


 逆に森の中では白亜の魔晶属性はかなりの威力を発揮してくれるのだが、ここはそういう力が弱すぎる。


 それにここはこのドラゴンの住処だ。ドラゴンに地の利がある以上はあまり下手に場所を動くのは極力避けたい。


 ドラゴンは頭がいい。袋小路にでも追い詰められたら逃げ場がなくなる。

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