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『一体何十人に渡すおつもりですか』

 前回のあらすじ 白亜はバレンタインの為にチョコレートを買いに来た。

 チョコレートを買いに来た白亜だが、ひとつ困ったことがある。


「お金そんなにない……」

『全体的にかなり高額ですね。流石はバレンタインです』

『何人分買うつもりだ?』


 アンノウンに訊かれたので数えてみることにした。


「えっと、お嬢様は10人分として、旦那様と、ジュードと、リンと、ダイと、一応レイゴットとラグァも入れてやるか……それと……」

『一体何十人に渡すおつもりですか』


 確実に手持ちでは足りない。一人一欠片とかでは流石にかわいそうだ。


「じゃあどうすんの」

『ご自分でお作りになればよろしいではないですか。購入するのはお嬢様と旦那様のぶんだけでいいのでは?』

「ああ、もうそれでいいか」


 ジュード達の分が安上がりなものになりそうである。


 6つ入りのそこそこ値のするチョコレートのセットを10と、雇い主である大地用に酒の入ったチョコレートを買ってみた。


 試食で少しもらったが、酒が苦手な白亜はあんまり美味しいとは思わなかった。が、多分美味しいのだろうと回りの反応を見てそれにした。


 意外と周囲の様子を見る力が身に付いてきているらしい。天然記念物のくせに。


 ついでにダイ達の分も買ってやった。一人一口分しかないが酒豪な彼らは喜ぶことだろう。


 製菓用チョコレートを大量購入し家に戻る。


 一種類だけでは味気ないので色々と種類を揃えてみた。


 ミルクチョコからビター、ホワイト、変わったものではラズベリーなんてのもある。興味本意で買ってみたが結構美味しかった。


「さてと、どうするかな」


 折角なのでなにかつくってやろうかと湯を沸かし始める。確実に鍋一個では足りないので数個あるコンロをフル稼働だ。


 別に自分の家でもなんでもないのだが、かなり好き勝手使いまくっている。特に台所は。


「なにやってるんだ?」

「欄丸。……あ、お前のこと忘れてた」

「なにがだ?」


 完全に忘れ去られていた。候補にすら思い浮かんでいなかった。


「いや、なんでもない。それより入ってくるなよ」

「お前がキッチンに居るときは入らない」


 いい判断である。欄丸は結構ドジるので白亜は欄丸をなかに入れたがらない。


「ああ、そうだ。欄丸」

「なんだ」

「袋たくさん買ってきて」

「袋?」


 ポイッと財布を放り投げる白亜。欄丸を一瞥すらしていないのに財布は欄丸の手にすっと飛び込んでいった。


 普通に器用、というかもはや神業である。この場の誰もそれを凄いと認識していないが。


「なんの袋だ」

「手提げだと最高。なかったら……そこにおいてあるのと同じくらいの大きさの袋でいいや。ごみ袋はやめろよ」


 依然欄丸に【エコバッグ】を買ってきてと頼んだら、たまたま売り切れていたらしくどうしたらいいのかと悩んだ末に【地域指定ごみ袋】を買ってきた。


 しかもかなり小さい可燃ごみの袋。


 使おうにも地域が少しずれていたので使えず、生ゴミを入れる袋と化している。


 流石にもう同じことはしないとは思うが、念のために言っておく白亜。これ以上可燃ごみの袋は要らない。


「わかっている」


 欄丸がそとに出ていったのをヘラでボウルの中身をかき混ぜながら察する白亜。正直結構不安である。


 はじめてのお使いがまともにこなせなかったので、何年経とうが心配なものは心配なのである。


 因みに欄丸のはじめてのお使いは「ケチャップ買ってきて」というものだった。


 欄丸はお好み焼ソースを買って帰ってきた。確かに形は似ているけども。流石に色で気づくだろう。


 しかも、それを8本も買ってきた。


 なんでこんなにお好み焼ソースを買ってきたんだと訊くと「財布にそれだけはいっていたから」と答えた。


 どうやら欄丸、ケチャップとお好み焼ソースを間違えるだけでなく財布に入っていたお金全額分のお好み焼ソースを買ってきてしまったらしい。


 せめて間違えるなら一本にしてほしかった。


 ケチャップだとしても8本も要らないが。


 というかそんなにソースがあっても使い道がない。


 未だに消費しきれていないソース達は冷蔵庫と白亜の懐中時計にしまってある。


「こんな感じかな」


 形に迷った結果花の形にした。花びら一枚一枚を固め、くっつけて一輪のチョコレートでできた花を作る。


 相変わらず無駄に凝る。


 色さえ着色すれば完全に花である。しかも全部同じではつまらないと思ったのか花も一種類ではない。


 バラやひまわり、睡蓮等の花がどんどん机の上に量産されていく。


「帰ってきたぞ」

「おお、おかえり。ちゃんと買えた?」

「今度はちゃんと売っていたぞ」


 そう言って欄丸が鞄から取り出したのは、確かに白亜が頼んだものだった。


 ビニール製の手提げ袋。


 それはいい。それはいいのだが。


「……なんで一枚しかないの?」

「え?」

「俺、たくさんって言ったよね?」

「…………」


 しまった、とでも言いたいのか欄丸が何度も目を瞬かせる。


 しっかり狙いのものは買ってきてくれて何よりではある。何よりなのだが。毎回数もミスるのは何故なのだろうか。

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