「屋根の上が一番安全っておかしいだろ……」
やっとテスト終わりました!
ゆっくりですが更新していきます。
千夜祭、またの名を戦夜祭。
その盛り上がりは予想の遥か上を行く。
「大丈夫か?」
「な、なんとか……」
屋根の上に逃げた白亜とリンはどちらからともなく下を見つめる。人がごった返していた。あらゆるところから見えるカラフルな髪色に目がチカチカする。
「やっぱり髪が黒い人はいないな……」
「普通じゃないの?」
「普通だけど……」
ここ数年日本で暮らしていたせいかカラフルな髪に戸惑いを隠せない。
だがあえて言わせてもらおう。白亜、お前の銀髪が一番目立っていると。
「屋根の上が一番安全っておかしいだろ……」
「そうだね……」
危うくリンが押し潰されるところだったのだ。少し周りを見てみると屋根の上を移動している人はそれなりにいる。
もはやどっちが通路なのかわからない。
白亜は町に入ったときに手渡されたチラシを見る。
『戦夜祭……タッグバトルですか』
「なんだ、シアンはそれが気になるのか」
『いえ、その下です』
「下?」
優勝商品が悪魔の召喚書だった。凄く見覚えがある。というかこの前白亜が作ったやつである。
「なんか簡単な召喚術のもの作ってって言われたけど……まさか商品にするとは思わなかったな」
「これ、なんなの?」
『悪魔召喚の儀式に使う魔方陣を書いたものです。といっても下級悪魔のものなのでそれほど凄いことはできません。精々中級精霊と同じくらいではないでしょうか』
普通、中級精霊と契約できる人なんてそうそういないのでこの二人がさらっと言っていることは実はそれなりに大事である。
この魔方陣が100枚あれば軍隊を作れるほどのものだ。
政治のパワーバランスをただ面白そうだからという理由で崩そうとするこの二人には監視が必要である。しかも自覚はない。
「……なぁ、リン」
「なに?」
「これ、出てみないか?」
「ふぇ?」
「こんな小さな大会なのにそれなりに参加料は高かったな……賞金の分と運営費考えたらこんなもんなのか?」
「は、ハクア君……本当にやるの?」
「エントリーしちゃったし」
「ふぇぇぇえ……」
そこそこする参加料(日本円で3万円ほど)を払い、注意書の冊子をパラパラと捲っている白亜。
パッと見ではわからないが大分やる気のようだ。
「ハクア君が本気だしたらすぐ終わるでしょ」
「流石にそれはしないよ。武器はアンノウンで刃は出さないし魔法も使わない。基本攻撃はリンに任せる」
「え」
「?」
「ムリムリムリ!」
ぶんぶんと首を横に勢いよく振るリン。
「何が無理なんだ?」
「だって勝てるほど強いとも思わないし……」
「大丈夫だって。負けても良いんだから」
そもそも白亜的には記念参加のようなものである。ついでに言えばルギリア達を驚かせたいというのもある。
ルールブックをリンに渡しながら小さく唸った。
「んー……でも俺があんまり攻撃しててもつまらないだろうし」
「ハクア君、なんか本当に変わったよね……微妙に人目を気にするところとかさ……」
それでも微妙にである。残念ながら少しギャラリーを意識するくらいしか頭は回らないようだ。頭良いのに。
「なんとかなるさ」
『なんとかなりますよ』
その根拠のない自信を少しで良いから分けてほしい。
リンが若干呆れていると運営をしている女性が近づいてきた。
「そちらの方はリン様とハクア様ですね。控え室の方に案内いたします」
「はい」
もうなるようになれとしか思えなくなってきた。
選手控え室と書いてある無駄なまでに重厚な扉を開けると、リンの5倍はありそうな屈強な男たちが無言で立っていたり準備運動をしたりしていた。
入ってきたリンと白亜を見て鼻で笑う輩までいる。
「は、ハクア君……」
「大丈夫だって」
白亜の影に隠れて縮こまっているリン。そこに三メートルはありそうなほどデカイ男が近付いてきた。
「おい、ガキンチョ。冷やかしならとっとと出ていきな」
「冷やかしじゃない」
「そんなひょろっちい腕で何ができる」
「そうだな……あんたを投げ飛ばすくらいのことは出来るぞ」
これで煽っているつもりがないのがまたある意味すごいところである。
「てめぇ……!」
案の定、相手は怒る。白亜はその選手の胸元にあるバッジを見てから口を開いた。
「別に今殴ったりしてもいいけど……どうせならちゃんとした場所でやりあおうよ。あんたも俺も最初の試合に勝てばその次で当たる」
「なんだ、俺の順番を覚えてんのか」
「まさか。全部暗記しただけだ」
正確にはシアンが記録をとっていた。
白亜自身も覚えてはいたが興味がないので考えようとすらしていないというのはここだけの話である。
無表情をずっと貫いているので相手に今何を考えているのか悟られづらいのが利点でも欠点でもあるのだ。
白亜のその言葉にまた口を開きかけた男だったが、その声は花火の音で掻き消された。
入り口の方から選手は外に出るようにという声が聞こえた。
「チッ、覚えとけよガキンチョ」
「ああ」
やり取りを始終見ていたリンは、
「ねぇ、あんなに挑発して大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。それより、俺そんなに挑発してたかな……?」
「はぁ……」
心からのため息が出た。
こんな調子で試合なんか出来るのだろうか。
普段の訓練で連携の練習はしているがあまり実戦で役に立ったことがない。というより白亜が近付く前に敵を片っ端から倒していくので出番がないといった方が正しい。
だが今回は白亜が魔法を使わないと宣言しているのだ。あそこまで煽っていざ試合になったとき何かしらの事件は起こってしまうのではないか。
そう、リンが心配しているのは負けることではない。白亜が何かやらかすかもしれないということである。
例えば、あまりにも相手に気合いが入っていて、寸止めするつもりが誤って足の骨を折ってしまいましたとかありそうで怖い。
ここ数年で一気に身体能力が向上しているのをそこまで自覚してない白亜である。
手加減をミスすると事故に繋がりかねない。
「本当に、大丈夫かなぁ……」
不安しかない戦夜祭、タッグバトル部門。それが今開催された。




