「任せなさいな」
最近短いって? 気のせいですよ。気のせい。
別に眠くて書けてないとかストーリーが思ったのと違う方向に行っちゃって考え直してるとかそんなことないですからね?
泥と水でベッタベタになって帰ってきたリシャットを欄丸はなにも言わずに風呂場に通した。
最近、従者っぽくなってきたかもしれない。
泡と一緒にこびりついた泥が流れていくのを見ながら綺麗にして湯船に浸かった。
勿論帰ってきたのが突然だったのでお湯なんて張っていなかったのだがリシャットが指をならした瞬間にはもうお湯がなみなみと注がれていた。
ライレンは、空気を読んでなのかは判らないが帰ってきたときは一緒だったのに直ぐにどこかへ飛んでいった。
「………」
無言で手や体を眺める。どこも傷だらけだ。治したのでハッキリとは見えないがよくよく見てみると細かな傷が大量にある。
ガシャン、と右腕が浴槽にあたって音がなる。作り物です! と大袈裟に主張しているような腕はお湯の中でもちゃんと反応していた。
「はぁ………疲れた」
ここ最近疲労が溜まるばかりで全く抜けていっていない気がする。
連戦に続いて伊東の行方不明。それを何とかするために神格化を受け入れ、ただひたすらに伊東を捜索し続けた。結果は見つかって良かったが、やはり気が抜けないというのは中々辛いものがある。
もういっそのことリグラートに帰ってしまおうか、等と考え始めていた時、浴場の戸が開いた。
「リシャット! 帰ってきたわよ!」
「リシャットー、お風呂入ってもいいかしら?」
美織とリズというかなり珍しい面子だった。
ボーッとしていたリシャットは弾かれたように顔をあげる。
「あら、それお風呂でもとらないの?」
「これは……まぁ、便利だし……」
義手を指差してそう言うリズに適当に返事する。二人とも軽く体を洗ってから直ぐに入ってきた。
お湯が溢れて湯船のそとに出ていってしまう。
「リシャット。こんな時間に入ってるのは珍しいわね」
「まぁ、色々ありまして。汚れたので洗おうかと………あの、何をされているんです?」
「おっきくなったから、触ってみたくて」
「お嬢様………」
胸をつつかれてため息をつくリシャット。やっていることがおっさんみたいである。
事情は話してあるので二人ともリシャットが大きい事には何も言っていない。
なので最近屋敷内ではは元の大きさでいることが多いのだ。来客やそとに出るときは小さくなるが。
自分とリシャットの胸を比較して肩を落とす美織。ついでに言えばリズも落胆していた。想像以上にリシャットはでかかったようである。
「負けないもん」
「………あの、握るのやめていただけます?」
「やだ。もぐ」
「もがないでくださいよ………」
勿論いくらもがれたとしてもいくらでも再生できてしまうのは事実だが、それとこれとは話が別だ。
もうそろそろのぼせそうだと判断したリシャットが立ち上がると、美織が、
「ねぇ、リシャット」
「はい」
「今日の夜ご飯は私たちが作るわ。だから夜まで寝てて」
「………何故?」
「疲れてるの、見ればわかるわ。リシャットが日本に行ってから私、かなり料理うまくなったのよ」
リズにそう言われては大丈夫ですとは言いづらい。
「じゃ、じゃあ………お願い、します」
「任せていて」
「任せなさいな」
何となく不安になったのは言うまでもない。
「リシャット‼ ご飯できたよ」
下から聞こえてくる声で目を覚ました。
目を擦りながら降りてみると、テーブルの上には丼が人数分置かれていた。蓋がしてあるのでなんなのか判らない。
さすがに野暮なので匂いで判別するのはやめておいた。
「ふふふ。開けてみなさい!」
どこか得意気な二人に言われた通りに蓋を開ける。湯気が辺りを覆い尽くした。
それと共に、スープの匂いが漂ってくる。
「「ラーメンよ!」」
何故これをチョイスしたのか疑問である。が、見た目は悪くなかった。
配置も完璧である。
「塩ラーメン、ですか」
「そうよ! 食べてみなさい!」
「………では、頂きます」
普通に一人前ではなく、リシャットの器は皆のものより小さく、量は半人前くらいである。
元々少食だったのに加え、神格化でほぼ食べ物を食べる必要がなくなったので余計に食欲が落ちたからだ。
これだけの量でよくあれだけ戦ってられるものである。
一本だけ箸でつまんで、口にはこんだ。そして、小さく笑う。
「ふふ………茹ですぎですよ。お嬢様」
食感などあったものではないぐにゃぐにゃの麺だった。だが、不味いとは感じない。改善点や失敗している所は多々あるが、それは少しずつ直していけばいいだけのこと。
のびきったラーメンに苦笑しつつ、夕飯を食べきって直ぐに寝た。寝る直前に、今日は久しぶりに完食したなと思い出した。
半人前ですら残すリシャットが食べきれるラーメン。柔らかすぎて寧ろ好都合だったのかもしれない。
二人はなぜ失敗したのか真剣に話し合っていた。リシャットは何がダメだったか直ぐにわかったが、二人の邪魔をしないように黙っていた。
こうして二人はその後も妙に固いステーキやボロボロに崩れたお好み焼きなどをたまにつくって遊ぶようになった。
リシャットもそれを手助けしなかった。気づけた方が楽しいから、と。
そういうわけで残念ながら二人は最後まで何が駄目だったのか気付けないままであった。




