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無気力超能力者の転生即興曲  作者: 龍木 光
英雄の生まれかわり
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一周年記念番外

 改めまして作者の龍木です。


 今日でこの小説は投稿しはじめて一年になりました!


 最初は200話程度で終わる筈がどんどん増えてこのままだと300話行きそうですね。私もビックリです。


 この前も前書きか何かでお伝えしましたがせっかくの一年ですので番外編をと書かせていただきました。


 今まで私はこの小説を書いていてあまりにも内容がぐちゃぐちゃになってしまい、所々カットをするような部分が実は沢山あるのです。


 いけそうなときは書いてしまっていますが、やはり一度考えた話をカットするのもなんとなく寂しい…………


 ということで今までカットしてきたこぼれ話をここでさせていただこうかなと思います。


 これから先のストーリーにはほぼ関係ない話なので読み飛ばしてくださっても構いません。元々ボツになった小話とかがここに書いてあるので。


 それでも良いよという方は読んでくださると嬉しいです。


 あ、本編ガン無視ですのでその辺りは目を瞑ってください。では後は司会や解説は全て彼らに任せるとしましょう。

『というわけで番外編です!』

「えー、ここでは今までのこの小説で書ききれなかったこぼれ話を幾つか出していきたいと思います」

【あ、喉治ったんですか?】

「いや、番外編だから」

【そんなメタ発言していいんですか⁉】

「番外編だから」


【番外編だからってそんな無茶苦茶していいんですか】

「俺に聞かれてもな。ナレーター(?)もログアウトしたことだし俺たちで進めるぞ」

【なんでですか】

「疲れたんだと」

【………】


『それじゃあ先ずは………マスターが初めて王都に行ったときの話ですね』

「ああ、まだジュードにも会ってない時だな。シアンもいなかったか?」

『そうですね。だから進行はお任せします』

「了解。とはいっても俺ほとんどやることないけどな」

【なんですかこのグダグダ感………】

「作者に言え」


「っと、話数的には9話のサブタイトルは〈初めての王都へ!〉だな。そこには書いてない俺と両親の地味に時間掛かった小旅行の話だ。まぁ、そんな大したことは起こってないから気を入れずに聞いてくれ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 魔眼が発見されてから王城に呼び出されるまでそう時間はかからなかった。


 あれから暫くは両親のテンションが特にヤバくて出てくる料理はいつもの倍は増えた。勿論少食な白亜が食べられるはずもなく。


「ほら、食べなさい!」

「いや、こんなには……もうけっこう限界………です……」


 詰め込めば入らないこともないが目の前の皿は4分の1も片付いていない。子供にどんだけ食わせるんだ、と言いたいところだがこの辺りの子供はこれぐらい食べるのだ。


「大きくなれないわよ?」

「そんな大きくならなくていいです………」


 この世界の平均身長が高すぎるのだ。190越えている人も村に数人はいるレベルである。


 前世では高い方だった白亜もこの世界では普通くらいだろう。


「もう、食べれないです。無理です。残しちゃいます」

「そうか? じゃあ父さん食べるぞ?」

「どうぞ……」


 あんたはその体のどこに入るんだ、と聞きたいくらいの量をガツガツと食べている。別に体はそこまで大きいわけでもないのだが前世の白亜とそう大差ない体つきをしている父親だ。


 簡単に言えば細く引き締まっている。肌はそこまで白くないが。


 日本に連れていったら即行でモデルやらなんやらにスカウトされそうだ。しかも断れない性格なので流されてその内にテレビとか出てそうである。


「明日からちょっと歩くんだぞ? そんだけで大丈夫か?」

「寧ろそれだけ食べれる方が凄いと思います………」


 爽やかな笑顔を浮かべてパンをかじる。パンくずを頬につけているのがマイナスポイントだ。ちょっと残念な匂いが漂っている。


「じゃあとりあえずもう寝ます……おやすみなさい」

「「おやすみ」」


 自分の部屋に帰っていく白亜を見て、


「あの子、魔眼持ってるのによくこれだけの消費で生きていけるわね……」

「だな。畑仕事で身体強化使ってるだけでこんだけ食うのにあいつ前より減ってないか?」


 減ってはいない。ただし増えてもいないが。


 両親が無駄なまでに食べ物を進めてくるのはこれが原因だったのだ。身体強化や魔眼含め魔力を使うことにはそれ相応のエネルギーが必要となる。


 それを補うために魔法使いの人は大抵大食いなのだが、白亜は腹に入らない。これのせいで後に食べ物から栄養を摂取しきれずにポーションを気化して吸い込むという手段にでるのだがそれはまだ、先の話。






「ふぁ……さて、起きるか」


 大きく欠伸をしながら外に出て井戸水で顔を洗う。氷にでも浸かっていたかのような冷たさの水で目を覚まし、タオルで拭いていると横の茂みから音がした。


「グギャッ」

「ゴブリンか」


 こんな朝っぱらに、と愚痴を吐きながら手の中に出現させたナイフをダーツでもやっているかのような体勢で投げた。


 そんな動きで投げたら避けられるだろうしそもそも力が入りにくいポーズなので刺さっても軽傷である。………普通なら。


 茂みから出てきたばかりで周囲の状況を把握しきれていなかったゴブリンの眉間にナイフが突き刺さる。それの勢いはあの体勢から投げたにしてはとんでもない威力で、20センチ程あった刀身がゴブリンの頭にほぼ全部入って眉間から見えるのは柄の部分だけというとんでもない事になっていた。


 勿論そんな威力のものを喰らってはゴブリンもただではすまない。訳もわからないような顔をしたまま一瞬で絶命した。


「ん」


 白亜はゴブリンの方に近より、出した台車に乗せて森へ走る。


 そして人が普段立ち入らない場所に来たと思ったらゴブリンの死体を置いて台車と突き刺さったままだったナイフを消す。


 蓋になっていたものが消えたことで額から大量の血が溢れ出した。辺りが一瞬で血の匂いになる。


「燃やす………ん? ああ、いいか………」


 なにかに気づいた白亜はそれを放置して家に戻った。数分後、その場所には血の一滴も落ちてはいなかった。






「いくぞ。大丈夫か?」

「多分」

「そうか。じゃあ王都に向かって歩くぞー」


 馬車に乗っていければいいのだが、誰も御者が出来ず、唯一母親が馬に乗れるだけという事態になったために歩きで行くことを余儀なくされたのだ。


 丁度よく商人が来てくれればその馬車に乗せてもらえたかも知れないが残念ながら来るのは来月である。


「疲れたわ……」

「だな」

「………」


 別に疲れてはないがここで疲れてないとか言っても意味がないのでとりあえず黙る白亜。別に空気を読んでいる訳ではない。単に面倒くさいからだ。


 道はあるとはいえ舗装されているわけではないのでどうしても歩きにくい為に体力を奪われるのだ。


 休憩をとりつつ歩いていく。王都の門は割りと早い時間にしまってしまうので馬車を使わない場合だと一晩は街道で越すことになる。


 なのでそこまで急ぐ必要もない。


 何時間か歩き、日も暮れてきたので野宿することに。


「はい、これご飯ね」

「………?」


 手渡されたそれは手のひらサイズの肉の塊だった。白亜が見たことのあるもので例えるとするとチャーシューのまだ切っていないやつみたいな感じである。


 かなりのボリュームのそれにたじたじとしていると二人が小さなナイフを使ってそれを切り、無造作に口のなかに放り込む。


 それを目を丸くして見ていると、


「あら、早く食べないと匂いで動物が寄ってきちゃうわよ? 街道とはいえモンスターも出るんだから」

「は、はぁ………」


 生返事を返してとりあえず両親がやっているように端をほんの少し切って口のなかに入れてみる。


「………しょっぱい」


 チャーシューそのままの方がまだよかった。ひと口含んでみて解ったがこれは肉の塩漬けだ。しかも滅茶苦茶塩! って感じなので塩の味しかしない。


 とりあえずとんでもなく塩辛い。


 正直水で洗ってから食べたい。だが隣の二人はムシャムシャと恐ろしいほどの早さで肉を平らげていく。


「なんで食べないんだ?」

「その……しょっぱくて」

「塩辛い? ああ、確かにそうかもな」

「旅といったらこの肉の塩漬けだけどね」


 この世界ではこれが一般的なのだそうだ。乾パンの方がよかった。というかとんでもなく口の中の水分が持っていかれる。食べないとやっていけないのでなんとか塩の味しかしない肉を6分の1ほど食べきり、水で流し込む。


 喉がいたい。よくこんなの食べられるな、と感心する。


「見張りはどうする?」

「二人で交代でやればいいんじゃないかしら?」

「? ………私も見張りますよ……?」


 戦えるところは一切見せていないので不安がられたが何かあったら起こすから、という理由で納得させた。正直二人におんぶに抱っこは不味い。


 5歳児だから気にする必要も本当は皆無なのだが。


 二人が寝たのを確認して砂時計をひっくり返す。これが落ちたら交代と決めたのだ。


 火が消えないようにたまに枯れ技を放り込みながら徐に空を見上げる。


「………見たことないのしかないな」


 当たり前だがどの星も見覚えのない位置にある。こうしてみると異世界にいるんだなとなんとなく実感するのだ。


 前世に未練はない。自分から死にに行ったようなものなのだから覚悟はできていた。だが、1つだけ気がかりなことがあった。


「ヒカリ達に………嘘ついちゃったな………」


 すぐ帰ってくるから。とそう言って最期の別れになってしまった。恨まれても仕方ないと思う。寧ろ恨んでいてほしい。


 日本に行く予定は今のところないのでもう二度と会うことはできないだろう。そもそも行き来できるのかさえ不明だ。


 もしそれが割りと頻繁にあったら自分の耳にも入ってきそうなものである。


 そんな風に珍しく昔の事を考えていると、暗がりに何かが見えた。


「……?」


 警戒しつつこっそり様子を見てみると狼の群れだった。しかも、目があった。


「あ」


 しまった。そう思ったときにはもう遅い。一匹が小さく吠え、それに反応した狼たちが一斉に臨戦態勢に。


「今日はなんか色々と遭遇する日なのか……?」


 一本、日本刀をその手の中に出現させ、呼吸を整えた。


「………ごめん。父と母が居るんだ。これ以上こられると遭遇することになるから、さ………」


 スッとまっすぐ前に構えて気配を探る。前に3、右に6、左に2。


 動こうとしない白亜にしびれを切らした狼が一匹、牙を剥いて襲いかかる。端から見れば子供が狼に襲われているようにしか見えない光景だ。


 だが、相手が悪かった。悪すぎたのだ。


 白亜は冷静に刃を向けるように刀を逆手に持ち替えてそのまま左に振るう。


 狼が断末魔の声も上げられずに首を茂みに飛ばして地面に落下した。グシャリと生々しい音が辺りに響く。


「…………」


 白亜は指先についた返り血を払い、油断なく刀を構える。その切っ先に一片の震えも見当たらない。まるで今の光景が夢だったかのように何事もなかったかのように。


 だが、飛び散った血と頭部、滑らかに切断された狼の首や白亜の刀にべっとりと付着している赤い液体がこれは夢ではないと無情にも教えてくる。


「グルルル………」

「………別にお前達を惨殺するつもりはない。これ以上仲間を失いたくなかったらここから失せろ」


 低く、地を這うような声色でそう告げると狼達は仲間の遺体を引き摺って帰っていった。この世界の動物はモンスターでなくとも頭がいい事が多い。


 人間の言葉を多少は理解できる動物もいるにはいるのだ。


「戻るか………」


 刀をそこら辺に置くと霞のようにそれが消え去る。白亜は小さな小川を見付けてそこで手を洗い、元の場所へと歩いていった。









「大丈夫だった?」

「はい。特に問題は」


 狼は来たけどあれは問題と言えるほどのものでもないなと内心で舌を出す。騙しているようで悪いが今は戦えることを隠しておきたい。


「じゃあ行こうか。もう今日の昼には着く筈だから」


 鞄を背負い、街道を歩く。すると白亜は茂みに気配を感じた。親にばれないように目をやるとあの狼がいた。


 群れのなかで一番大きかった個体なので恐らくリーダーなのだろう。それが一匹、こちらを見ている。


「?」


 白亜の視線に気付くと狼は小さく会釈程度に頭を下げて森の奥へ去っていった。


「ハクア? どうかした?」

「いえ。なんでもないです」


 もう王都は目の前だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「で、ここから直ぐに王都に行って城に行ったんだったな。そこでジュードに会って今に至るって感じだ」

【なんで親に隠してたんです? 戦えること】

「色々理由はあるけど……まだ自分はそこまで強くないと思っていたからな。もしそれで俺の戦力に期待されても困ると思ってた」

『自分が規格外だといつお気付きに?』

「? 規格外?」

『【えっ………?】』

 え? これで番外編終わると思ったって?


 なわけないじゃないですかー。もうちょっと続きますよ。


 早く本編いけって? ごめんなさいまだ書けてないです。

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