【子供には見せられないレベルですねぇ】
やっとテストのあれやこれやが終わりました! ので更新速度上げられるように頑張ります!
「ま、まぁとりあえずここに泊まっていってもらえばいいんじゃないかな。部屋もあるしね」
という大地の提案によりヨシフとリズも屋敷に滞在することとなった。実際昨日も泊まったらしい。
いまだに体がバキバキと音を立てているリシャットは自分の部屋に戻ってからずっと柔軟を繰り返している。
『どうですか』
「まだ、上手く動かないけど、さっきよりは」
その場で軽く跳ねてみたりしてみる。大分感覚も戻ってきた。
【大丈夫ですか?】
「ああ、ライレンか。手、出せ」
無理矢理にライレンの手を握り、借りた分の魔力を半分返す。
「もう半分は回復しきってからでいいか」
【もっとゆっくりでもいいんですよ?】
「借りは早く返す主義なんでね」
ほぼ龍魔法で使ったのですっからかんになっていた分、回復が遅い。
リシャットの魔力回復速度は年々上がっているとはいえ昔と比べたら蛇口でバケツに水を注いでいたのが一滴一滴バケツの底に溜まっていっているだけのようなものだ。
空になっている分余計に魔力が回復しにくいというものもある。ある程度のロスがでるのでその分中々増えないのだ。
「なんかまだ喉が痛い」
【うわ、グロ⁉】
「そんなにか」
【子供には見せられないレベルですねぇ】
リシャットの口のなかを覗きこんだライレンが悲鳴のような声をあげる。
完全に治るまで喋るのは止した方がいいかもしれない。もう大分喋っているが。
(それにしてもヨシフさん達が俺の居場所を突き止めるとは……)
【あれが原因じゃないですかね】
『あれ、とは?』
リシャットの携帯を暫く弄り、ニュースアプリを開くライレン。
(なにやってるんだ?)
【これですよ、これ】
記事のなかに一昨日の事がかかれていた。とはいってもリシャットが巨大な魔獣と戦った、という話ではない。
あれはあの後警察の方から関係者には口止めをしてもらうように頼んでもらっているし周辺に結界や範囲魔法をかけて他人の目に入らないようにしていたので問題になってはいないはずだ。
【読み上げますねー。昼間に現れた隕石⁉ 突如空に発見された謎の白い光】
問題になっていたのは龍魔法だった。
(あれ、そこまで見えてた?)
【そりゃあもう。直径三メートル程の光線が真っ直ぐ空に伸びていましたから】
『威力計算間違えましたでしょうか』
小さな惑星くらいなら粉微塵に出来るほどの威力を持った熱量の塊である。他の人の目に入らない筈がない。
『確かにこんなもの見たらマスター以外考えられませんよね』
非科学的なもの=リシャットみたいな言い方だが実際そんな感じなので言い返せない。
(とりあえずは放置しとくか)
『ですね』
【それでいいんですかと聞きたいところですが、それが良いでしょうね】
確実に面倒事の匂いがする。こんなものはスルーするに限る。
翌日。
〈行ってきますので、何かあったらあの人に言ってくださいね〉
「それはいいんだが、お前喉治ってないんだろ?」
ここには美織も大地も居ないのでロシア語で会話している。驚きだったがヨシフもリズも日本語が話せたのだ。なんでも知り合いに日本人がいるらしく必然的に覚えることになったのだそう。
〈行くくらいは問題ないですから。では〉
お辞儀をして門をでるリシャット。確かにそうかもしれないけど、というヨシフの呟きは聞こえているが聞こえないふりをした。
【私がついていくの久しぶりじゃないですか?】
(そうだったか?)
『まぁ、最近は欄丸についてもらうことが多かったからですかね』
いつものように電車やバスを乗り継いで学校に向かう。
学校について直ぐに校長室へ行った。事態の報告などその他諸々を済ませるためだ。
コンコン、とノックをすると直ぐに返事が返ってきたのでそのまま開ける。
なにかが飛びかかってきた。
「⁉⁉⁉⁉⁉⁉」
完全に油断していたリシャットはそれを顔面で受け止めることとなり、衝撃に耐えきれずに後ずさる。
『兄貴!』
(壱鉄⁉ なんでここに)
『いやー、親族代表としてきたんだよ。ほら、自分ってば二番目に作られたじゃないっすか』
(そんな理由でか)
ヒカリと初めて一緒に作った武器が壱鉄だったのだ。元々は数の限られた気弾をサポートするために作ったのだが、気弾に集中しつつ狙撃するのも割りと大変だったので自分で考えて動くよう人工知能を作ったのだが。
いざ起動してみたらとんでもないお喋りで戦いの最中だろうがお構いなしに喋りかけてくる。
白亜がとてつもなく無口だったため余計に煩かった。
その癖はいまでも健在である。リシャットが全く話していないのにずっと話し続けている。息継ぎの必要がないので止まる気配もない。
(とりあえず落ち着け。で、なんで来たって?)
『サポートっすよ、兄貴の』
微妙な人材(?)が来てしまったようだ。
「えっと、宜しいですかな?」
後ろから校長に話しかけられ、直ぐにソファに移動する。
喉は極力使いたくはないので筆談だが、それはメールで話してあるので心配はない。
「先日はお疲れ様でした。本当に、本当に助かりました」
〈その件だが、こんなものを見付けた〉
鞄から包丁くらいの大きさのガラス質のような陶器のような、そんな材質の尖った破片を取り出す。危ないので布に巻いてあるが。
「これは?」
〈やつから剥ぎ取った甲殻……の内側部分だ〉
『内側ってことは、つまり?』
〈あのデカイのは自分の重みに耐えられるように殻を何層にも重ねていた。破った感覚だとそれが6層はありそうだな〉
これが六層、となると50センチは少なくともありそうだ。
〈触ってもらえば解ると思うがそれは今までの魔獣の非じゃない硬さだ。やつらも相当本気を出してきたと見るべきだな〉
一層でも苦労しそうなものなのにこれが何重にもなっていたらそれこそリシャット以外の人間は対応することすら不可能である。
〈壱鉄〉
『へ?』
〈結界陣の模様が入った使い回すようのあれ、予備がまだあったりするか?〉
『あ、ああ。あれならないこともないっすね』
〈じゃあそれを持ってきてくれ。数は最低でも10は要る。多ければ多いほどいいな〉
壱鉄に向かってメモを見せた後、校長に向かってなにかを書いて見せる。
〈手始めにここの結界の強化をしようと思う〉
「強化、できるんですか?」
〈ああ。ここの結界、俺が昔作ったやつをそのまま使ってるだろう?〉
「はい」
〈気力の供給は?〉
「週に一回、職員が交代で」
ふむ、と頷きなにかを考えるように眼を瞑る。だが、直ぐにその目を開け、
〈職員の気力で足りるように調整しつつ結界陣を書き換えようと思う。あれは気力さえあれば半永久的に使えるように作ってあるがその分本気で作ったのよりは一枚も二枚も劣る〉
ページを変え、再び文字を書き連ねる。
〈やつらの目に入らないようにもう少し弄ろうかと思う。ここの学校に入るために他人にしてもらうことは増えるがそれでも構わないか〉
「よくわかりませんが、構いませんよ」
〈そんな適当でいいのか〉
「リシャットさんなら、構いませんよ。どうぞ好きにやってください」
相変わらずリシャットに甘い校長だった。




