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「ジュード君………見事に吹っ切れたね……」

キリの良いところで切ったので短めです。

「……」

「スターリ」

「近付かないで」


 廊下の端で泣いていたスターリにダイが懐中時計を持って近付く。


「白亜からの………届け物だ」

「……主……から……?」


 ダイにそう言われて初めて顔を上げた。目が腫れていて見るからに疲れている。


「うむ。触れてみれば、わかると思うぞ」


 スターリが懐中時計を手に取ると、目の前には一本の錫杖と手紙が現れた。


 スターリはその手紙にゆっくりと目を通し、錫杖を抱き締めた。


「何とかいてあったか」

「これ……主が作ってくれた武器。飛ぶ」


 錫杖の先端の輪を引っ張ると、カシャン、と音をたてて外れた。どうやらチャクラになっているようだ。


 錫杖の持つ部分も術式が網目のように施されており、神々しいと表現できるような荘厳さがある。


「これ、主も使えなかった武器。私が使う。主よりも上手く」

「うむ。その意気だ」









 その後、白亜が亡くなったとあらゆるところに報告に行った。


 行く先々で皆号泣する。


 ジュードは白亜にこの光景を見せたかった。


(師匠………。貴方がいなくなったことで、これだけの人が悲しんでいますよ。皆、師匠の人柄に尊敬しているんです)


 自分がいなくなっても問題ないだろうと考えるような人に、そうじゃないといくら伝えてもお世辞だと勘違いされて終わりだ。


 本人がいないところでこれだけの人が悲しんでいるということ、それを伝えたかった。


「白亜は………これで良いと思っていたのか、どうなのか……」

「師匠の考えることはよく判らないので………なんともいえませんが」


 ジュードは白亜の懐中時計を握り締めながら小さく笑う。


「でも、僕が今何をすべきか………それはわかる気がします」

「……そうだな」


 いつも白亜はそうだった。


 戦いかたを指導するというより、戦いながら気を付けるべきところを声に出すだけ。


 こうしろああしろとは言うが、決してジュードの戦いかたを自分に似せさせようとはしない。


 問題だけを提示し、後は全て放り投げる。


 雑と言われればそれまでだが、放任主義な白亜だ。いつもこうするにはどうするか、とだけ言って後は放ったらかしだ。


 そのお陰で、ジュードは何をするべきか自分で判るようになっている。


 ジュードにとっては、まだまだ白亜に習っている途中なのだ。


「ダイさん」

「どうした?」

「師匠のお墓………エリウラに作りましょうか」

「?」

「凄い目立つところに、おっきく」

「クアハハハ、流石は白亜の弟子だ」


 ジュードなりの、復讐である。


 白亜は何よりも目立つこととフェレットが嫌いだ。存分に目立たせて帰ってきた白亜に精神的にまいらせようという魂胆である。


 そして恐らくだが、これに白亜は大ダメージを受けるだろう。


「エリウラのあらゆるところにフェレットを配置するとか」

「それはもう単なる嫌がらせだぞ……」


 ジュードの言葉に苦笑しながらそれも悪くないだろうな、とダイも悪ノリする。


 こんな方法じゃないと白亜に悪戯を仕掛けることはできないからだ。


「僕たちになにも言わずに逝ってしまった報いは受けてもらいますよ、師匠!」









「ちょっと大きすぎるんじゃないかな………?」

「いえ。師匠に嫌がらせをするなら、これぐらいのことはしないと!」

「ジュード君………見事に吹っ切れたね……」


 でかでかと白亜の名が刻まれたオブジェ兼墓が町のど真ん中に建てられた。墓のついで感が半端ではない。


 というか、墓には見えない。


「これはちょっとやりすぎではないか……?」

「ダイさんが言ったんじゃないですか」

「そうだったか?」


 広場の殆ど墓のスペースである。というか、墓そのものが広場になってしまっている。子供ならオブジェで遊び始めるだろう。墓だが。


「これくらい大きい方が目立ちますしね」

『いや、やりすぎだろう。これは』


 腕を組みながらオブジェに触れているのは燕尾服を着た老人……いや、人間形態のアンノウンである。


 あれから、ずっと元の形に戻らずこの形態で過ごしている。どうやら魔力などは一切消費しないで変身できるようだ。


『嫌がらせにも限度があると思うのだが』

「良いんじゃないですか? ハクア様はそれだけのことをしましたし」

『キキョウまでも許す気はないのか………』


 温厚なキキョウだが、何も言わずに置いていかれたのは流石に怒っているようである。


「スターリは?」

「錫杖の練習に行くと言っておったぞ?」


 スターリの姿が見えないことにダイが疑問の声をあげると、ルナがそう答えた。


「妾もハクアに任せられた魔法の練習でもやろうかの」


 そう言ってその場から立ち去る。ここ最近、皆白亜に渡された魔法や武器を扱う練習のために直ぐに何処か行ってしまう。


 白亜の残した魔法や魔法具は稀少価値が非常に高く、また扱いづらいので皆使うのに必死なのだ。


「僕も絵を描く練習しに行きますね」

「成果は?」

「この前盾を出したら紙の強度と何ら変わらない物が出せました」

『それは盾なのか……?』

「うっ」


 相当難しいのだ。ハッキリとイメージできてないと先ず具現化すら出来ない上、絵の完成度や魔力の込め方にも大きく出来上がりに差が出来てしまう。


 魔力が多すぎても発動しない、少なすぎると具現化しても直ぐに空気にとけるように消えてしまう。


 よくもまぁ、こんなに使いづらいものを作り出したものだ。


「それもいいですが、お仕事がありますよ」

「え」

「ハクア様がいらっしゃらない分、全てジュード様に回りますよ」


 逃げ出そうと一瞬考えたジュードだが、水路だらけのこの町でキキョウから逃げ出せるはずがない。


「さ、お仕事しましょうか」

「え、えええぇぇぇ………」


 渋っているジュードの肩に、ぽんと手が置かれる。


「さ、仕事しよう」


 ウィーバルの元王子、キルカである。


「き、キルカさん……」

「お前が仕事しないせいで今俺の方に仕事が来てるんだけど」

「………」


 目が怖い。ジュードは白亜に威圧されたときと同じくらいの寒気を感じた。


「え、えっと」

「さあ、行くぞ」

「ぅええええええぇぇ!?」


 半ば引き摺られるようにしてジュードが連れていかれた。


 それを残ったものたちが唖然とした顔で見つめ、誰からともなく笑い出す。


「「「あはははは!」」」


 目の端に涙を浮かべるほど笑ったリンは、広場の中央に目を向ける。


 今はこの場にいない、大好きな友人の笑った顔を思い浮かべながら。

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