「なんでリンが一番喜んでるんだ?」
キリのいいところで切ったので短いです。あと眠くてこれ以上書けませんでした………。
後ろのが本音です、すみません………。
「なんでこんな方法で来たんでしょうか……。なんか考え方があまりにも真っ直ぐと言うか……」
「それは同感だ。ハクアを引き入れる手などあるだろうに」
ある、かもしれない。のである。人質をとった場合その次の日に壊滅しているのは間違いないし、白亜は意外と義理深いので恩義のあるこの国からは出ないだろう。
「どうやって断るんだこの場合……」
「一番手っ取り早いのは先客の有無だが……」
「「「……………」」」
全員、無言である。そこに突然ダイが入ってきた。
「白亜!」
「ああ、ダイか。どうした?」
「シアンから聞いたぞ」
「え?」
『言いました』
「あ、そう………」
いつの間に、である。白亜に似てマイペースまっしぐらのシアンは仕事が出来る分、いつもなにか過剰にやり過ぎてしまうのだ。
「主!」
「いや、そんな大声出さなくても聞こえてるから……」
「行かないで!」
「いや、行かないから」
「行くのか?某らはその場合どうなる」
「だから行かないって」
スターリにギシギシと締め付けられている、というか締め上げられている白亜は取り合えずスターリを剥がしにかかる。すると後ろから小さな体が白亜にくっつく。
「リン」
「なんとなく私もくっついておこうと思って………」
「どこにも行かないから」
パッと見女子にくっつかれる男だが残念ながら全員女である。
「それにしても振り切った要求だな。白亜を妻にするとは」
「側室、な?なるつもりなんてないし、そもそも興味がない」
手紙の要求、というか内容は、白亜をキルカの側室に迎い入れるというものだった。ジュードの母がそうであるように側室というのはあまり身分が関係ない。貴族である必要はないのだ。
なので、その場合は所謂玉の輿、である。白亜にとっては寧ろごめん被りたい玉の輿だが。
「それにしてもキルカ様が何故………まぁ、想像はつきますが」
「どんなものだ?」
「ウィーバル国現国王にそうしろと言われた、とか」
「その根拠は?」
「私が少し政治の話をした時に思考に偏りが見られました。恐らくは、逆らえない相手がいる」
「それが、国王だと」
「恐らく、というか勘に近いものですが」
いまだに離れないスターリを剥がそうと力を込めるがスターリも玄武《四神》である。文字通り人外の膂力を持っているので軽くやっても剥がれない。
「ふむ。いい線……というかそれが正しいだろうな。普通ならば平民は喜んで引き受けるものだからな」
なにせ白亜なので。
「こればっかりは国家間の問題になるからな……」
「どうすれば巧い言い訳見つかるか……」
「やっぱり先客が居るって嘘つけば……」
「キルカ様に興味ないって言っちゃったんだよな………」
「「「あー……………」」」
先客、つまり婚約者である。作ろうと思えば割りと近くに沢山候補は居るし、約一名は前々世では婚約者だった。
だが、周囲にそんな噂が一切ない以上、もし作ったとしても速攻でフリだとバレる。
「断る方法ってどうすれば?」
「手紙でいいんじゃないですか?あっちも手紙ですし」
「それもそうか」
そんなことより言い訳である。
「何て言えばそれっぽいかな」
「師匠がどこにもつかない理由って」
「面倒そうだから」
「ですよね」
実にマイペースな理由である。白亜らしいと言えば白亜らしいのだが。
「あ!」
「スターリ?」
「これ!」
ごそごそとアイテムボックスであるポーチの中をかき分けて出したのは一枚の紙だった。
「「「あああああああ!」」」
全員が同時に叫ぶ。そこにあったのは以前スターリが拳闘大会で勝ち取ったギルドへの冒険者引き抜き許可証である。
「確かにこれならどんなものよりも権限が上です!」
「成る程、考えたな」
ホッとひと安心である。別に今回の場合だと引き抜かれたりされる訳じゃないのでギルドも白亜達も損害は無し。実に平和的な解決法である。
「まさかこんなところで役に立つとは……」
「ん。良かった」
特に使い道が無かったために放っておかれていたのが逆に役に立った。人生何がどう転ぶか判らないものである。厳密に言うとここにいる場で人間なのは国王だけであるが。
「ギルドからの移籍書も貰ってくれば万事解決です!」
「良かったぁ………」
「なんでリンが一番喜んでるんだ?」
本人が一番冷静、というか表情が表に出ていないことが逆におかしいのだが。
「さて、これで解決ってことに………していいんだよな?」
「駄目なのか?某としては落ちるところに落ちたと思うが」
「いや、なんかこれだけでは終わらない気がするんだよな……」
嫌な予感ほど当たるものはない。
特に白亜は悪運が相当強いのでその辺りの勘が研ぎ澄まされているのは間違いないだろう。
「……何?断られただと?」
「申し訳ございません。ギルドの方からも認められているようでして……」
「クソ、先手を打たれたか」
先手を打ったのは白亜の配下、というか召喚獣であることをこの二人はまだ知らない。
「もう、諦めた方がよろしいのでは――――」
「口答えするなと、そう言った筈だ」
「っ!」
滑らかに光る刀身をまざまざと見せ付けられ、キルカの体が硬直する。
「しかし、やはりこんなことで諦める訳にはいかない。あやつさえ手に入ればこの世をとったも同然だ」
実際、白亜より強いものはいないのでそれは確かである。ルギリアとはほぼ互角の戦闘力だが、破壊魔法が得意な白亜がかなり遠くからルギリアを狙い撃ちすれば勝てる。
遠距離攻撃は白亜の最大のアドバンテージでもあるのだ。
目がいいので殆ど外す事もない。
「ここまで来て引き返すわけには」
「お言葉ですが、ここで止めておいた方がウィーバルにとって最も益の出ることだと思います」
「怖じ気づいたか」
「………はい。相手はハクアです。私など、敵う相手ではございません」
キルカは白亜の鍛練を一度こっそりと見ていた。圧倒的なまでの強さをそこで目の当たりにし、精神的に少しやられてしまったのだ。
「………私に口答えするなと」
「これだけは忠告いたします。ハクアとは、関わってはなりません。ウィーバルの、何より御自身の身が危ぶまれます」
「…………もういい。お前はリグラートに誑かされて馬鹿なことを言い出すようになってしまったようだ」
「………」
なにも言い返せずただただ黙っているキルカをつまらなさそうに見詰め、剣を振り上げる。
「お前は用済みだ。私に逆らうものは死ね」
キルカはこうなることをわかっていた。そして、これが白亜の言っていた独裁政治であることを強く実感し、自身の弱さと愚かさに歯噛みする。
『わかっていて防げないとは……なんて俺は救われない頭をしているのだろうか』
そう考えたのを最後にプツリとキルカの意識が途絶えた。




