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「こっちでも魔法って使えるんだな」

 章を女性なのに青年期にしたのは、単に何て書けばいいのか判らなかったからです。


 何方かいい章題を………!教えてください………!

「あー。疲れたぁ……」


 いつものように玄関に足を踏み入れると、部屋の奥から声が聞こえてくる。


「おかえり」

「おかえりなさい」

「もう勝手に来るようになったな……」


 煙管を口にくわえて椅子に座っているのは、完全に男性にしか見えない女性、しかも日本を救った英雄として教科書にさえ載っている揮卿台白亜だ。


「この前来てからまだ二ヶ月くらいしか経ってないじゃん」

「こっちとあっちじゃ時間の流れが違うんですよ。ここに来るの、こちらとしては二年ぶりです」


 ふぅ、と軽く煙を吐きながらそう言う白亜。


「いつからタバコ吸い出したの?」

「これ栄養剤ですよ。体がボロボロになる頻度があまりにも高くて、無理矢理治してる内に体が栄養を吸収しなくなりまして。流石に毎日点滴をくっつけてるわけにもいかないですし」


 手でキセルをくるんと回しながらそう言う。


「食べ物で補いたくても全部出ちゃうんですよね……」

「どゆこと」

「察してください」


 少食なのだ。


「そういうことで、見逃してください。栄養剤だから副流煙の心配はありませんし、そもそも吸ってるのも煙って言うよりか水蒸気ですから」

「へ、へぇ……あれ?そういえば年って幾つだっけ?」

「19になりました」

「成人もしてないのかよ」


 日本基準だと、してない事になる。あちらでは15歳で成人だが。


「っていうかばあちゃんも適応しすぎだろ」

「白亜君だからね」

「なにそれ」


 不思議なことをやってのけるのも、白亜だから、の一言で済んでしまう人である。


「知らない人が見たら不審者にしか見えないけど……」


 割りと失礼なことをボソッと言いながら戸棚のジャムを取り、机に乗っているクラッカーに手を伸ばす。


 白亜が持ってきたもので、味は薄いが手作りな分サクサクしていておいしいと評判だ。


 宗久がイチゴのジャムの蓋を強く閉めすぎて全然あかず、苦戦していると、白亜が煙管の先を蓋の端にコツコツとぶつける。


「開けてみてください」


 すると、びくともしなかった蓋がするりとほとんど力をいれていないのに回った。


「ふぁっ!なんで!?」

鍵解除アンチ・ロックっていう魔法です。開かない物なら鍵じゃなくても使えます」

「便利だなー!」

「………禁術ですけど」

「今聞いてはいけない言葉が聞こえた気がする」


 それを使いこなす力量と思いきりのよさは称賛に値する。


「こっちでも魔法って使えるんだな」

「じゃないと、私帰れませんので」

「それもそうか」


 ジャムを塗ったクラッカーを口に運びながら席につく宗久。


「今日はばあちゃんに会いに来たのか?」

「それもありますけど、日本にしかない部品の買い出しとか、酒の調達とか」

「そういえば金はあるのか?」

「1000万ほどなら」

「……………」


 その場で作った気力の彫刻がそれほどの価値が出るのも凄いが、それを売りさばく白亜の手腕も中々である。


「白亜君、小学生の時から自分で稼いでたもんね」

「マジで!?」

「ええ。両親死んで施設に入れられそうになりましたけど、全力で拒否したので」

「え、なんで」

「覚えてないんですよね………」


 全力で拒否したことだけは記憶に残っているようだ。


「それにしても老けてるように見えない」

「私ですか?外見誤魔化してるので」

「それは化粧で?魔法で?」

「魔法で」


 当然と言えば当然である。白亜が化粧などと考えられないのも事実ではあるが。


「今の本当の姿見せてよ」

「え………」

「私からも、お願い」

「いいですが……多分引きますよ?」

「どゆこと」


 主に目の色に。


「いいならいいですが……」


 そう言いながら素早く詠唱をする。


「解除」


 一瞬光ったと思ったら少し背の縮んだ白亜がそこにいた。


 白銀という、あり得ない色合いの髪なのに、染めた感じは一切なく、整いすぎて人形にしか見えない顔に妙に合っている。しかも長すぎる程髪が長く、腰辺りまで伸びている。


 目の色は不気味なほど強膜が黒く染まっており、左目が緑、右目が赤という奇妙すぎるオッドアイ。


 しかも、ある一部分が相当デカイ。


「胸デケェ」

「最初に出てくる感想それですか」


 少し苦笑ながらキセルを手で弄ぶ白亜。


「本当に女の子なんだね……」

「ひかりさん、疑ってたんですか?」

「いや、そうじゃなくてなんか、ほら」

「ほらって言われても………」


 以前に白亜が女性だということは知ったのだが、実際に目にして割りと驚いているらしい。


「目、そっちではそんな色なのか」

「いえ、日本と一緒ですよ。黒ですし、強膜も白です」

「え」

「私が少し特殊でして。魔眼なんですよ。わかりますよね?」

「「魔眼‼」」


 ひかりと宗久が身を乗り出して同じ反応をする。


「千里眼とか」

「石化させるとか」

「魅了するとか」

「千里眼はありますけど……石化とか魅了とかは能力や魔法の類いですね」


 予想以上の食い付きだったことに若干引き気味になりながらそう言う。


「因みに、こっちの緑色の方は遠視……千里眼が使えます」

「おお!まじか!」

「すごいわねー‼」


 まじまじと目を見られるのは慣れているので白亜も特に気にしている様子はない。


「それで、そっちは?」

「こっちは物の名前とか調べれるんです。例えば、そこに生えてる草はローズマリー、とか」


 庭の方を見ながら魔眼を発動させる白亜。


「光ってる」

「使うと光ります。周囲が黒いのは現在研究中です」

「魔眼って全部黒くないの?」

「私だけですね。普通の魔眼でしたら目の色が変わるだけですよ」


 キセルを吸いながらそういう白亜。


「なんだかんだ言ってすごいんだな」

「割りと今さらですね………」

「白亜君ってやっぱり絵描きになってたりする?」

「いえ、護衛とか、家庭教師とかやってます」

「へぇ……意外とちゃんと仕事してるんだ」


 また宗久が失礼なことをボソッと言うが、白亜の方も気にしていないのでいいのだろう。


「絵も売りますけどね」

「売れてる?」

「ええまぁ。買ってくださる方も結構いらっしゃって」


 主にファンクラブの会員が。


「家とか立派なの住んでる?」

「家、というか、城の方に住まわせてもらっています」

「え。実は身分とか凄いの?」

「平民です。弟子が王子でして。国王様の御厚意で住まわせていただいています」


 究極の成り上がりである。


 白亜だからこそ成り立つ成り上がりだが。

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