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「二人を止めたい」

 キリ良い所で切ったので短めです。


 7話で優良物件が有料物件になっているとご指摘を受けまして。変更しました。


 誤字脱字のご指摘してくださると嬉しいです……。

「危なっかしいな……」


 衝撃に備えて目を瞑っていたスターリがおそるおそる目を開けると、そこには水の最上級精霊、ウンディーネが水でドームを作り出し、スターリと剣聖の周囲を守っていた。


 しかも、ただのウンディーネではない。左目が緑色に光っており、強膜は黒く染まっている。


「主……?」

「ああ。ちょっと見てられなくて出てきた」

「どうして……?ウンディーネ……?」

「お前に持たせた鈴。それに色々細工がしてあってな。俺の一部(・・・・)が入ってる」


 白亜は一度この世界で死んでいる。精霊を生命力に変換して生き延びたが。白亜のいう一部は、その時に入った精霊の事。


「最近気付いたんだが、精霊自身を分離させれるみたいでな……。魔力消費は数倍だが、回復が早い方だから問題ない」


 水で出来た腕をサッと振るとドームが周囲に弾けるように広がって消えた。


「どうする?スターリ」

「二人を止めたい」

「そうか。手伝いは?」

「……」

「遠慮しなくて良いぞ。俺とお前は精霊のではなくとも契約関係だ。力を引き出すことはそう難しくない」

「ん。お願い」

「判った」


 白亜はスターリの横に立つ。それを見ていた観客達が徐々にざわめく。


「君……まさか……あのときの銀髪の……」

「そんなことより、貴方に問おう。殺し合いをやめる気は?」

「え?」

「ありますか?」

「な、ない。ザクロは私の手でこの場で……!」

「………」


 白亜はそのまま男……ザクロに向かって同じことを問う。


「殺し合いをやめる気は?」

「ない」

「そうですか」


 白亜はスターリの方を一瞬見て、


「では、貴方達には頭を冷やしてもらいましょうか。こんな大勢の観客が居るなかで殺し合いなんて少々気分が悪い。それでも互いを許せぬのなら他所でやってください。突き放すようで悪いですが、スターリが傷つけられたら……私が殺しに行きますよ?」


 殺気立った鋭く光る目に見透かされ、固まる二人。


『ら、乱入者!?いや、あれは……まさか、ウンディーネ様!?』


 司会が固まる。白亜はそれを少し一瞥してからどうでも良いとでもいうように視線を戻す。


「乱入するつもり無かったんですが、ね。まさか最上級魔法の魔法玉使われるとは思っていませんでした」


 白亜は周囲に水の玉を浮かせていつでも攻撃できるように体制を整える。


「それでは、貴方達の頭……物理的に冷やさせていただきます」


 戦闘モードに入り、ほんの少し笑顔を浮かべながら、そう言ったのだった。








「ぐはっ……!」

「うぶっ……!」


 ザクロとキュウゲツが真反対に吹き飛んでいく。白亜がザクロを、スターリがキュウゲツを同時に殴ったからである。


「スターリ!魔力を貸す。殺さない程度にやれ!」

「ん!」


 白亜がスターリの手を握り、ブツブツと何かを唱えるとスターリの周囲が光り、放出された魔力の声が白亜の耳に届く。


「主!あっちお願い」

「ん。気を付けろよ」

「絶対負けないから、大丈夫」


 白亜とスターリが別々の方へ走り出す。白亜はザクロへ、スターリはキュウゲツへ。


「この!」

「っと………」


 白亜に向かってナイフが飛ばされるが、実態のない白亜の体はナイフをすり抜けてしまう。


「何!?」

「人間じゃないんでね」


 無詠唱で初級魔法を間隔をほとんど開けずに打ち続ける。キキョウにも出来ないことではないのだが、魔力の問題で普通はやらない。


 魔力が有り余っている白亜だからこそできる芸当だ。


「魔法ならばどうだ!」


 ザクロは特殊魔法のひとつ、空間魔法を使い、白亜の周囲の空間を隔離する。白亜の手がそこに触れた瞬間、手首までがパンッといって弾け飛ぶ。


「降参するしかないだろう!」

「残念ですが……空間くらい、斬れますけど?」


 氷で剣を作り出し、自分とザクロの真ん中の空間に向かって白亜が真っ直ぐ剣を振り下ろす。パキンッと甲高い音がして何かが割れた音が響き渡る。


「な………!?」


 普通のウンディーネではこれはできないだろう。白亜だからこそやってのけてしまうのだ。相手が悪かったと言うしかない。


「頭、冷やして下さいね」


 白亜のその言葉を最後にザクロの意識は闇に落ちた。








「彼は精霊だったのか……?」

「違う。主は女」

「へ?」

「?」


 彼、という言葉を訂正させるスターリ。


「そんなことより、頭は冷えた?」

「最初から冷めきってるよ」

「殺す気、なくなった?」

「………」

「じゃあ駄目。私が、頭を冷やさせる」


 スターリは白亜が出て、もう光らない鈴を指先でつつく。ちりん、と美しく空気を揺らす音に笑顔を浮かべながら短剣を構える。


「目、覚まさせる」


 スターリは目を細めて、体当たりする勢いで剣聖、キュウゲツにぶつかっていく。


「はぁっ!」

「んぅ!」


 重い音が周囲に響く。


「前、手加減してた?」

「君は弱いと思ってたから……。でも、今度は最初から本気だよ」

「それで、いい」


 再び、剣をあわせる。二度、三度、四度。何度も何度も振るわれる剣筋は真っ直ぐ迷いなく。


 銀色の軌跡を空に描き出しながら何度も何度も火花が散り、スターリの鈴が場に似合わず涼やかな音を奏でる。


「こんな場所でなかったら本気で君を勧誘するのに、ね!」

「主よりも弱い相手にはつかない。私の主人は、主だけ」

「それは残念だ、よっ!」


 互いに笑みを浮かべながら斬り合う。二人の集中は極限まで高められており、誰の声も、音も届かない。


 まるで空間だけが切り取られたかのように二人だけがただ剣を振るい、斬りあっている。


 観客は、叫ばなかった。その代わり、食い入るように熾烈な戦いを見詰めている。しかし、その時間も終わろうとしていた。


 スターリは人間ではない。神獣と呼ばれる、契約獣であり、その身体能力は膂力含め数段上だ。体力も。


 次第に剣聖の息が乱れてくる。剣筋がほんの少しブレ始める。スターリがそれを見逃す筈がない。


「もらった」

「しまっ…………!」


 剣聖の鳩尾に、スターリの拳が深々と食い込んでいた。キュウゲツ対ザクロ対スターリの決勝戦は、白亜という介入があったものの、スターリの勝利で終わった。

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