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「また、……帰ってきても良いでしょうか?」

「なんか……凄い恥ずかしい」


 白亜は一頻り泣いた後、我に返ってへこんでいた。


「良いじゃない、別に」

「良くはないかな……」


 完全に置いていかれた外野は、


「ばあちゃんが若返ってる……精神的に………」

「海道様……。私、感動いたしました……!始めて人間らしお姿を見せられた気がいたします……!」


 元から別の生物みたいな扱いになっているが、白亜は一応最初から人間である。今はよく判らないことになっているが。


「色々とひかりさんには恥ずかしいところしか見られてない気がする……。昔から」

「そう?私は逆に子供らしいところ見たことないけど」


 子供の期間が短すぎたので、余計にそうなのだろう。


「取り敢えず、中に入りましょうか?」

「え、でも」

「ね?」

「はい………」


 有無を言わさぬような声色に白亜が縮こまる。滅多にない光景だ。というか白亜が縮こまる相手はひかり以外いないので。


 泣いた後なので少し疲れた様子の白亜の隣にグラキエスが座り、白亜の正面にひかり、その隣に宗久が座る。


『これはどういう状況だ……?』

『マスターから話を聞き出そうとしているのでは?』

『なんの?』

『勿論、今までのことでしょう』

『観念した方がいいだろうな』

『アンノウンまでそんなこと言うんだな………』


 白亜は居心地悪そうに身をよじらせながらひかりの方に目を向ける。


「それで。いいかな?」

「………どうぞ」

「さっきどこにいたのって聞いたらはぐらかしたよね?」

「はい」

「今度こそ、教えて」

「………えっと……。転生しました……」


 滅茶苦茶ド直球な発言にグラキエス含めその場の全員が固まる。


「生き返ったの?」

「生き返ったというより……生まれ変わったって方が近いかな」

「顔は一緒じゃない。よくバレなかったね」

「あー……。日本に転生した訳じゃないから……。っていうかよく信じるね俺の言ってること………。突拍子もないことなのは我ながらわかってるんだけど」

「白亜君は嘘ついたら判るから」

「あ、そういうこと……」


 全てお見通しだそうだ。流石はひかりである。


「マジかよ」


 唯一普通の反応をする宗久。それでも適応力はかなり高い方だが。


「というより、ひかりさんに孫がいたところに驚いた」

「君が高校行ってから色々、ね」

「………あえて聞きませんよ?」

「白亜君だって彼女の一人二人はつくってると思ったけど?」

「俺の性格で作れると思う?」

「ごめんね」


 実際白亜のほうも彼女なんてどうでもいいと考えていたので出来るものも出来ないのだが。


「ってことは、日本人じゃないのね?」

「あー……はい」

「どこの国出身?」

「知らないと思いますよ……。地球じゃないですし………」

「「へ?」」


 見事にハモるひかりと宗久。


「地球じゃないってどういうこと……?まさか宇宙人……?」

「残念ながら宇宙渡れるほど文明発達してませんよ。異世界……と言えば判りますか?」

「異世界転生!?ラノベかよ‼」

「私も最初はそう思いましたよ……。スッゴいベタな感じだったので」


 神様に会ってチートもらって転生とか、ベタすぎる展開だ。


「じゃああんたはこの世界の人じゃないのか……?」

「そんなところです。あ、彼もですね」


 隣に居るグラキエスを見ながらそういう。


「氷雨さんも?」

「あ、それ適当にでっち上げた偽名でして。本名はグラキエスです」

「さっきそういえばそんな風に呼んでたな……。あれ?でもグラキエスって氷って意味じゃなかったっけ?」

「ええ。私にはネーミングセンス無いものですから」

「あんたがつけたのか」

「あ、グラキエス人間じゃないですよ?」

「「………は?」」


 人間ということを前提に話をしていたのでそろそろ二人の頭がオーバーヒートしそうである。


「私はヴァンパイアという種族でして」

「吸血鬼!?ファンタジーのド定番だよな」

「え、ええ……」


 グラキエスの体をまじまじと見る宗久。


「吸血鬼の要素なくないか?」

「今は人間に化けております」

「へぇ……」

「まぁ、でも元の姿でも種族が珍しすぎてバレないでしょうけど」

「珍しいんだ?」


 そう聞かれ、グラキエスが説明する。


「ヴァンパイアにはいくつか格がありまして、下から、下級、中級、上級、始祖となっております。私は始祖ですが」


 少し得意気な表情になりながら話す。あまり表だって話す性格ではないので少し珍しい光景だ。


「下級から中級ですと、毎週血を飲まなければ死に至り、飛ぶこともできません。上級ですと月に一度程度ですかね。始祖は飲まなくても生きていけます。血は嗜好品なのです」

「成る程。じゃああんたは飲まなくてもいいんだ?」

「ええ。ですが、やはり飲むのは好きです」


 白亜は少し小さくため息をつく。


「グラキエス……お前、街行って人襲ってないだろうな?」

「勿論でございます」

「なら良いが……」


 大変な会話である。色々と。


「それで、日に当たったりしても大丈夫なのか?物語だと灰になるとかよく聞くけど」

「始祖ならば問題なく。人間に化けている今なら、どんなものも通用しませんよ」

「ニンニクは?」

「ニンニクですか?あまり香りが好きではありませんが、それがどうされましたか?」


 ニンニクは弱点ではないらしい。


「ニンニクとか十字架とか普通のヴァンパイアにも効きませんよ。その代わりにニラが駄目みたいですが」

「ニラ!?」

「こっちの世界とあっちの世界は違いますから、それくらいはズレが生じるんでしょうね」


 白亜の言葉にそれもそうかと納得する。


 突然、つけっぱなしのテレビから警報音のような音が大音量で流れ出す。


「わっ!ビックリした……」


 宗久がテレビに目をむけたので、自然と白亜たちもテレビを見る。


 突然、ニュース番組に切り替わり、液晶の右上に小さく生放送と出ているので、現在の情報なのだろう。


「三型、四型か」

「型ってなんです?」

「なんだ、揮卿台白亜でも知らないのか?」

「?」

「型は種類だよ。一番最初に出てきたやつが一型、その次に出てきた小型のやつが二型」

「へぇ」


 白亜は昨日の小石で倒したのを抜けば一型としか対戦していない。


「ん?じゃああの親玉はなんなんだろう」

「親玉?」

「相討ちした亜人戦闘機ノン・ストッパー。普通のとは大きさも違ったし、あまり亜人戦闘機ノン・ストッパーらしくなかったんですよね。最後数秒で死にそうになったから自爆しましたけど」

「え?じゃああんたの死因は?」

「自爆です。ですがギリギリまで殺しあってましたよ。尻尾でぶち抜かれた時は流石に死ぬかと思いましたけど」


 実際あのままでも数秒で失血死していただろう。


「即死しなかっただけラッキーでした。背中まで貫通していたのでそんなに血はでなかったですし」

「え?え?」


 かなりやばそうな爆弾発言をサラサラと本を朗読でもしているかのように言う。


「緊迫感がないな……」

「終わったことですから」


 再びテレビに目を向けると、高校生くらいの男女が戦い慣れた様子で三型と戦っていた。


「ぁぁああああああ!海道様!皆様ですよ!」

「見えてる。何でこんなことになってるのか判らんが……状況は芳しくなさそうだな」

「難しい言葉使うんだな……」


 どうでもいいところに感心する宗久。


「仕方無い。行くぞ、グラキエス」

「了解いたしました」

「え!?っていうかもう電車はないぞ?」

「ああ、問題ないです。走った方が早いので」

「え?」


 白亜はひかりに押し返された封筒を机の上に置き、外に向かう。


「白亜君?」

「急用ができたのでお暇させていただきます。ありがとうございました」

「今から行くの!?いくら白亜君が超人でも……」

「大丈夫ですよ。海道様は神の領域に達していますので」

「はぇ?」


 意味がわからないグラキエスの返答に唖然とするひかり。


「お邪魔しました。それと……」

「え?」

「また、……帰ってきても良いでしょうか?」


 白亜はほんの少し、小さく笑う。


「ええ。いつでも帰ってらっしゃい。待ってるから」

「……はい」


 ペコリとお辞儀をして外に出る。


「グラキエス。乗れ」

「し、しかし、私があなた様の背に乗るなど……!」

「俺が背負った方が早い。早く乗れ。間に合わなくなるぞ」

「し、しかし……」


 グラキエスにいらっとしたのか、白亜が首根っこをつかんで無理矢理背に背負う。


「え?」

「ひかりさん、宗久さん。また、いつか会いましょう。では」


 全員の思考が停止しているなか、白亜がグラキエスを背負ったまま消えた。いや、それは間違いだろう。


 全速力で、走っていったのだ。空を。


「「ええええええええ!?!?!?」」


 本日一番の絶叫だった。

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