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幼馴染みはオネエになりました   作者: 桜井 沙羅
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二十三話目

春樹と一緒に届けられたモーニングをいただく。


私には、ベーコンやふわふわの卵や、さくさくのクロワッサンやらとボリュームたっぷりの朝食を渡されたが、春樹の前にはフルーツやらヨーグルトやらシリアルといった、女子が好みそうな品が並んでいる。


もはや、女子力で負けてもなんとも思いませんよ?


それに、そんなんじゃ、私には足りなそうだし…。


のんびりと二人で朝食を食べ終わると、ゆっくりコーヒータイム。


あーおなかいっぱい。



「さて、なんて話したらいいのかしらね。」


ひたすらくつろぐ私に春樹は切り出した。


おっと、ついのんびりしちゃったよ。

私はいそいで座り直した。


「高校二年生の頃に付き合っていた子がいてね。」


春樹は沈んだ声で言う。


よっぽど思い出したくないんだろうなぁ。


それにしても、春樹ってば、高校時代から彼女いたんか…。


「付き合ってみたものの、どうしてもその子が好きになれなくてね。

お別れして欲しいと話したの。」


春樹は淡々と語る。

ただそれだけなら、きっと春樹はこんなに傷ついていないだろう。


顔は青ざめ手は少し震えている。

私は無意識に春樹の手を握った。


春樹は、握られた手に気づくと少し私に微笑みかけた。


「私は、当時から小さくて、華奢だったからね…。

力も男にしてはあまりなくて。」


春樹は言う。

本当につらそうで、もういいよ、と言いたくなる。


「その子は、とっても私を恨んだみたいなの。

そして、その子と友達の5人組に呼び出されてね…。」


そう言うと春樹は目をぎゅっと閉じた。


「女の子だけだったから特にそんなに警戒はしていなかったの。

せいぜい叩かれたりとかそのくらいだろうってね。」


そこまで言うと、春樹はうつむいた。

私の顔を見て話すのもつらいみたいだった。


「だけど、だけど…。」


春樹はそこまで言うとガタガタ震え出した。

目には涙もにじんでおり、とてつもない恐怖感を感じる。


「春樹、ごめん、 もういいよ。」


とうとう私は我慢できなくなり、春樹を抱き締めた。


春樹はしばらく私に抱き締められたまま、目を閉じていた。


「ううん、最後まで聞いて。」


やがて、春樹はそうつぶやいた。


「彼女達はね、私をレイプしたのよ…。

それまで男が女の子にそんなことされるなんて考えてもみなかった。

被害者だけど、男の場合は大して取り合ってももらえず、逆に女に負けたという蔑む目や、本当は合意なのでは?という態度をとられたりね…。

屈辱的で、恥ずかしくて、自分が情けなく思ったわ…。」


春樹はいった。

私が想像も、考えつきもしなかった過去を。

私は何も言えず動く事もできずにいた。


「あんなにイヤだと思いながら、恥ずかしくて、恐怖を感じていたのに体が勝手に反応してね。

そんな自分がたまらなく汚らわしく思えて、男である自分を嫌悪した。

女の子に対しても、恋愛感情を抱かれる事が恐ろしくてね。

女の子が嫌いになったわけではないけれど、色恋沙汰には巻き込まれたくもないし、男の自分もイヤになったの。

だから、ああいう格好をするようになったのよ。」


春樹は淡々と語る。

ダメだ!って思うのに、私の目からは涙が止まらなかった。


ツライのは春樹であって、話を聞くだけの私なんかよりずっとずっと苦しいのに、私なんかが泣くなんて申し訳なくてたまらなかったけど、どうにも止まらなかった。


春樹はそんな私を優しく抱きしめてくれた。

私が慰められてる場合じゃないのに!!


「もう、女の子には恋愛的な気持ちは抱けなくなっていたし、性的なことは嫌で仕方がなかった。

もちろん、どんなに可愛らしい女の子を見てもそんな気は起こらなかったわ。

周りの人はそんな私を好奇の目で見たり、嫌悪した顔で見たりしたわ。」


春樹はそう言うと、私の顔を覗きこんで微笑んだ。


「だけど、そんな私を利香が癒してくれた。」


春樹がじっと私の目をみて言う。

その目にうつる私の方がよっぽどツライ顔をしていると思うような穏やかな顔だった。


「昔から知っている人達は、私に気付くと物凄い顔で私を見たわ。

中には同情的な顔をする人もいた。

でも、利香は子供の頃の私に対する態度のまま、当たり前のように私に接してくれた。

私の格好がどうであっても、利香は変わらなかったわ。

そして私の恐れる、女の子の狡さや打算が全くなくて本当に子供の時のまま純真で素直だったわ。」


春樹は言う。


「春樹…。」


そうつぶやいたまま私は何も言えなくて…。

そんな私の涙を春樹は拭ってくれた。


「純真で汚れのない利香に対してだけ、いつからか欲望を覚えるようになったわ。

でも、大事で特別な利香にだけはそんな欲望だけで手を出したくはなかった。

恋愛対称としては見れないのに、付き合おうと言ったのは、どうしても利香を手放したくなかったから。

それでも、そういう気持ちがないのに利香に手を出すのはどうしても躊躇われた。

あなたを汚したくないし、気持ちがない男なんかに抱かれるよりも、たくさん愛されて包まれて幸せになって欲しいと思っている…。」


春樹の言葉は確かに私にはツラかった。


こんなに苦しんだんだから仕方がないけれど、やっぱり春樹は私には気持ちがなかったのだ。


でも、春樹は恋愛感情を抱いていない私のためにここまで考えて悩んでくれている。


「でも、堪えきれずにキスはもらっちゃったけれど…。

だけど、利香を本当に思ってくれていて、利香も好きな相手のためにとっておかないといけないと思うわ。

本当は渡したくはないけれどね。」


そう言って春樹は少し寂しそうに微笑んだ。


「春樹は、本当に本当にバカだね。」


私はつぶやいた。


「私は、春樹だけがずっとずっと好きなんだよ。」


私は言った。

春樹からさっき、女の子から恋愛感情を抱かれるのはイヤだって聞いたばっかりなのに酷な言葉かもしれないけど。


春樹は訳が分からないという顔をしている。


「言っとくけど、友達としてとか、家族みたいなとか、そういうのじゃなくてだよ。

子供の頃からずっと好きだった。

春樹を追いかけて学校までいったんだよ。

他の人なんて一度も好きになったことなんてないよ。

私はずっと春樹だけ。」


言葉を選ぶまでもなく、勝手に口から言葉が出てきた。

全然可愛くない告白。


「利香…。」


春樹は呆然としてつぶやいた。


「そもそもさ、さっきから純真とか散々言ってくれるけどさ、その純真な人が好きでもない男と付き合って、ファーストキスまですると思ってるの?

あまつさえ、何もなかったとはいえ、一緒に寝たしね。

私が好きでもない男とそんなことするような女だと思ってるの?」


私は言った。

あれ、告白のはずがなんか怒ってるみたいになってるし…。


「そうよね…。ちゃんと考えてみたら利香がそんなことするはずがなかった…。」


春樹は言った。


「ごめん、ごめんなさいね…。

それなのに、こんな付き合い方して利香を傷つけたわね…。」


「春樹ってば、本当にバカ。」


こいつってば、本当にバカにも程があるっての。


「私、ほんとに嬉しかった。

すごく幸せだった。

春樹と付き合えて、そばにいられて。

春樹はたくさん苦しんだんだから、いいの。

私を手放したくないというなら、このままそばにおいておいて。

私は、春樹しか好きじゃない。

だから、他の人なんていらない。

そりゃ、好きになってくれたらもっと嬉しいけど、今の好きでも充分だよ。

それでもいいの。

キスも、それ以上も、私は春樹とだけしたい。」


私は心から言った。


「利香は告白までもどこまでも素直なのね。」


春樹はそう言うと微笑んだ。

大好きな、大好きな私の春樹の笑顔。


「春樹、深く考えないで。

お願い、私をもらって…。

春樹がイヤじゃなかったら…。」


すごく恥ずかしかったけど、私は言った。

顔が暑くなって、真っ赤になっているのがわかる。


「女の子にこんなこと言わせるなんて、私もダメね。」


そう言うと春樹は、私の手を握った。


「途中で止められないと思うけど、本当にいいの?」


春樹は少し真剣な顔で言う。


私は恥ずかしくてたまらなかったので、黙ってうなづいた。


「えっと、朝だけど…。」


春樹も少し赤くなって言う。


春樹の言葉にますます私は恥ずかしくなった。


「あの…。愛してます…。」


恥ずかしかったけど、覚悟が決まらなそうな春樹に私は言った。


なんか、突然すぎるけど…。


恥ずかしすぎて、声めっちゃ小さくなっちゃったけど…。


私の言葉に真っ赤になった春樹は、再び私を寝室に連れて行ってくれた。

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