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安土饗応作戦 光秀 左近 ケロタンの遠眼鏡  作者: あっちゅ寝太郎


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【序章】 安土饗応大作戦、開幕のファンファーレ


外野の嫌がらせと信長の理不尽な圧力を、光秀の悪知恵と左近の勢い、ケロタンの珍妙な技でひっくり返す!


……だが、おもてなしが成功に近づくにつれ、光秀の瞳には異様な光が宿り始める。

「天下の行く末のため……上様、敢えて怒っていただきましょう」


光秀の胸に秘められた、あまりに切なく、壮大な深慮遠謀とは——?


歴史の結末が哀しいからこそ、今は思いきり笑い飛ばす!

史実のリアルと食文化の深掘りに、光秀の覚悟、そしてテンポ抜群の喜劇を掛け合わせた、命がけの過剰接待サイココメディ開幕!


【序章】

安土饗応大作戦、開幕のファンファーレ


◆とんでもない無茶振り


天正十年(一五八二)五月。


新緑が眩しい近江の国。

絢爛豪華なる安土城。


その天主台のすぐ脇には、

令和の発掘調査でようやく姿を現した、

絵図にも記されていない規格外の巨大御殿が建っていた。


じっとりとした初夏の熱気の中、

その広大な御殿で、

明智十兵衛光秀は頭を抱えていた。


「……天皇をお迎えする、予行演習だと?」


目の前に立つのは、

天下で最も勢いに乗る男、

織田信長。


つい先日、

宿敵・武田勝頼を討ち、

名門武田氏を滅ぼしたばかりである。


信長は豪快に笑った。


「そうだ、十兵衛。


最前線で我らを支えた徳川家康が、

駿河拝領の礼に安土へ参る。


これを天下一の饗応でもてなせ。」


信長はさらに続ける。


「だが、これはただの接待ではない。


この後、余は正親町天皇を安土へお迎えするつもりだ。


家康饗応は、その本番へ向けた国家規模の予行演習。


室町将軍家の『御成』にも劣らぬ格式で、

天下に織田の力を示してみせよ。」


全国から珍味を集め、

織田政権の国力と物流網を示す。


失敗は許されない。


織田家総出の国家事業であった。


その総責任者――饗応役に選ばれたのが、

明智光秀だった。


公家や堺商人との人脈。


有職故実に通じた教養。


そして京都・堺・坂本・丹波を結ぶ、

絶好の地理的条件。


光秀以上の適任者はいなかった。


「……謹んで、お引き受けいたします。」


深々と頭を下げながら、

光秀は静かに覚悟を決める。


だが、その胸中では、


「これは戦だ。」


という言葉だけが、

静かに燃え始めていた。



◆台所もまた戦場


戦場では槍が飛び交う。


だが台所では、

鮮度が飛び交う。


冷蔵庫など存在しない五月。


伊勢の鯨。


堺のタコやハモ。


宇治の茶。


琵琶湖の鮒。


それらを傷ませることなく、

決められた刻限までに安土へ運ぶ。


料理人。


配膳係。


荷駄隊。


船頭。


馬借。


すべてが一つ狂えば、

天下一の饗応は崩れ去る。


まさに兵站戦。


光秀は静かに呟く。


「これは、大戦(おおいくさ)だ。」


その言葉どおり、

やがて彼の周囲には、

個性豊かな仲間たちが集まり始める。


生真面目すぎる男。


天井裏を住み家にする妙な男。


そして、

織田家きっての曲者たち。


誰一人として、

まともではなかった。



◆覆される「腐った魚」の伝説


さて、

ここで少しだけ未来のお話を。


後世には、


「光秀が腐った魚を出し、

信長の怒りを買って解任された。」


そんな話が広く知られている。


しかし、

一級史料『信長公記』には、

光秀の饗応は見事に成功したと記されている。


本作は、

その史実を土台に、


「もし光秀が最高の饗応を成し遂げていたら。」


という視点から描く、

歴史コメディである。


完璧を目指す光秀。


次々に起きる珍事件。


歴史上の人物たちが繰り広げる、

少しだけ騒がしく、

少しだけ愛おしい安土城の日々。


そして、

誰もが知る本能寺へ向かう歴史もまた、

静かに動き始めていた。


「我らの戦、これより開幕。」


光秀のその一言とともに、

安土饗応大作戦の幕が、

今、静かに上がる。


(つづく)

:筆者の想いに寄せて

なぜ島左近なのか。なぜケロヨンなのか。

それは、左近の持つ「武人の潔さ」と、ケロヨンの持つ「健やかな日常の象徴」が合わさった時、初めて信長の「死の気配」に対抗できると考えたからです。

店頭で雨の日も風の日も立ち続けるあのカエルのように、ケロヨンは安土の激動をケロリと見過ごし、左近は主君のために地獄の釜を焚き続ける。

この二人がいたからこそ、光秀は本能寺という「最後の配膳」まで走り抜けることができました。歴史という名の厳しい「処方箋」を、少しでも楽しく、そして美味しく書き換えたい。そんな願いを込めた主役抜擢でございました。

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