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後編ー②

続き投稿しました。


光陰矢の如し。時が過ぎるのは早いわ。


気が付けば明日は王子様の17歳の誕生日。


王城で誕生パーティーが催される。


私は王子様のパートナーとして今日は王城に宿泊します。


いまから緊張しているのは内緒です。恥ずかしい。




姐さんからシナリオだと明日の誕生パーティでイベントがあると聞いています。


どうやらあの子は未だ諦めずに王子様ルートなるものの攻略を頑張っているそうです。


人間諦めが肝心だよ。教わらなかった?


彼女の執着心‥‥妄執かな。は凄まじい。


ちょっとストーカーっぽい。周囲からは危険人物認定されています。


明日の招待を受けていない彼女です。姐さんの言うイベントは無理でしょう。




シナリオでは王子様がパーティー会場にあの子と入場して私との婚約を破棄するらしいです。


そして声高らかにあの子との愛を周囲に告白しそして祝福される。


パーティー終盤に花火が打ち上げられるのですが、それを見ながら結婚を申し込むと言う何とも非現実的な話ではありませんか。


この身分社会に順序も礼節も無視した結婚に貴族が賛同するわけないじゃない。


なんてご都合主義だと憤慨したらゲームのシナリオだからねと言われた。


そりゃそうだね。






******



王子様の誕生パーティーです。


いよいよ会場へ入場します。


王子様のエスコート。ああ、王子様が王子様に見える。当たり前か。


子どもぽかった王子様が何時の間にか凛々しく立派に。声もイケボです。


ああなんて立派になったことかと涙ぐみそう。おかん的に。


私達の衣装はこの日の為に誂えたお揃いの色合いで装飾品もお揃いの色です。


ペアルック、かなり恥ずかしい。バカップルっぽい。




さて皆から見守られての入場も陛下と主賓の挨拶も無事に終え、後は招待客からの挨拶です。


私は王子様の横で笑っていればいいだけの気安いポジにいます。


ああ、あの子がいないだけでこんなに心安らぐとは。


ある意味彼女は脅威でしたからね。王子様も安心していますね。良かった。




次はダンスタイムです。毎年の事なのに今年は王子様を意識しすぎて妙な緊張が。


王子様とファーストダンス。あーードキドキする!




「私と踊って頂けますか」


柔らかい微笑の王子様が手を差し伸べてくれる。


その笑顔に心臓を鷲掴みされちゃう。わわわーー! 


私は乙女のようにドキドキ胸をときめかせてその手を取ろうと‥…としたら取れなかった。




はっ?! 横から誰かの手が。二ヨっと。


えっ?! 不気味!


さすがの王子様も驚き過ぎてフリーズしている。


恐る恐る見れば王子様の手を取ったのは(くだん)の男爵家の子でした。




これには誰もが驚いた。


どこから入った? えっ警備なにやってんの!? 


ダメでしょ不審者ストーカー入れちゃたら。






「嬉しい! 王子様。私がパートナーですね!」


もう彼女が怖い。彼女の存在自体が怖いわ。


ああ、王子様の護衛、ここまで彼女を近づけて。首飛んだな。社会的にだけど。




「はっ?! 君は…こんなところで何をしている。私の相手は君ではない!」


「えー王子様。真実の愛の相手は私ですよ。ああ、そうか。この女に脅されたんですね」


と、ギョロリと大きな目が私を睨みつけてきた。こわい。



やだ、標的が私になった?!


「ちょっと貴女! 王子様に付き纏わないで。王子様の相手は私なんだから。貴女なんか悪役でしょ。さっさと断罪されなさいよ!」




ええ? 何を言っているのか意味不明過ぎてわからない。


周りの人も驚き過ぎて貴族の仮面が脱げちゃってる。


皆さん驚愕や侮蔑や、異物を見る目で彼女を見ている。


ああ、わかる。わかる。出来ることなら私もギャラリーになりたい。




そんな混乱の中心にいる王子様は長ーい溜息を吐いて冷静に彼女の手を振り払った。


その王子様の表情はうんざりとしていた。


あー、王子様慣れちゃってたんだ。彼女の奇行に。




「君は招待されていないだろう。どうやって侵入したのだ。答えろ!」


王子様はかなりご立腹だ。衛兵も近寄ろうとしているが命令が無いので動けない。




「えー、王子様なにを言ってるの? 

迎えに来ないから私一人で来たんだよ。それって酷くない?」




酷いのは貴女の頭だわ。ああ全くもって教育の成果が表れていない。


と言うよりも一層酷くなってない? なぜ?


私の疑問顔に王子様も思うことがあったのだろう。苦虫潰したような顔になって私を見ている。




「私の質問に答えろ。それ以外の発言は許さない」


王子様の冷酷な声色、初めて聞いたかも。こんな声出せたんだ。


ああ、もうピュアピュアな王子様はいないのね…‥。


ちょっとしんみり遠い目をしちゃった。


そんな私を横目で見る王子様の視線に気づくことなく彼女の奇行は続いていった。




「あー侵入? やだ、違うでしょ。迎えに来なかったから一人で来たんだって!それよりその悪役令嬢を早く断罪して告白イベントやろうよ! 

あっ、その前にダンスだっけ。うふふ。王子様とファーストダンス楽しみ!」




もはや会話すらならない。


これにはさすがの王子様も引いていた。私も引いた。






********



その後、‥‥いろいろあったが、一早く冷静さを取り戻した王子様が衛兵に指示を出して彼女を捕縛した。


彼女の身柄は未成年の女子とあって修道院へ強制収監され、ご両親は監督不行き届きだと処罰を受けた。




一方私と王子様は。


その場を迅速に収束させた王子様に満足された陛下と王妃様からお褒めの言葉を頂いて。


アレな令嬢に疎まれた私には労いのお言葉をかけて下さった。


思いがけないお言葉で正直嬉しかった。


言葉だけでこれほど嬉しくなるものだと実感した。


陛下と王妃の立場の人だけど、純粋に自分の義父・義母となる人達がこの人達で良かったと思えた。






それと‥‥‥


彼女が連れて行かれた後、王子様の仕切り直しでパーティが再開され、


私との婚約は政略だけではなく真に愛する人との婚約だと‥…。


要は「恋愛だからね!」と王子様が発表されました。


驚きよりもは羞恥心が勝った瞬間でした。はい。


この時の私の頭はすっかりロマンス乙女でしたね。ふわふわ夢心地でした。


ああ恥ずかしい。


ドキドキのファーストダンスを王子様の優雅なリードで無事に終え。


いよいよ花火打ち上げか、とぼーとした頭でふんわり考えていると王子様のエスコートで花火がよく見えるバルコニーに。




‥‥思い出すだけで恥ずかしくなる。


あろうことか王子様は膝をついて私の手を取り、愛の告白と結婚を申し込まれました。


ええ婚約しているから結婚するんですけどね。


プロポーズは別物です。乙女の夢です。悪いか!


驚きと喜びと恥ずかしさとロマンス乙女になった私は、


うっとり『はい。よろこんで』とお返事しました。


丁度、その時に花火が打ち上げられて…‥ナイスなタイミングにビックリでした。


ああいい思い出、お墓の中まで持って行けるわ。




その時はうっかりロマンス乙女状態だったので見落としていたことが。


この展開は、シナリオ? ではないでしょうか。


あの子の妄執の元の。






*******



そうして今。訝しい目で王子様を見ています。


なんかね。怪しいと思うの。



王子様。


隠し事していません?


さあ、お返事を。





「あ~ わかっちゃった」とバツの悪そうな王子様。


やっぱり!


「はは。ごめんごめん。騙す気はなかったんだ。でも君も僕に秘密にしていただろう。


結構ショックだったんだよ。君はあの姐さんだっけ? 

彼女には打明けておいて僕には内緒だったんだから。

そうだよ。僕も君達と同じ環境下で生きた記憶がある。前世ってやつ? 

信じていなかったが自分の身の上に起こった出来事だから今は信じてる。

それであの女の奇行が前世の意識に引っ張られ過ぎた結果だったんだと思っているよ。それで僕に聞きたいことはある?」




私はあの誕生パーティーの出来事を尋ねた。


やっぱりあれはイベントを意識してやったんだって。


王子様‥…彼でいいか。記憶を取り戻したのがあの子と接触した時にバチッ

と電気が走ったことで思い出したそうだ。

今世の人格よりも前世の意識が成熟した大人だったため前世の人格が色濃く出ている。

でも今世の人格が消えたわけではなく、成長したと思ってよと言われてしまった。

そんなものか。


それで私と姐さんとあの女の境遇にも気がつけたそうだ。


あの女は酷いわと苦笑いしていたけど‥‥。




「それでね僕は君に打ち明けようとしたんだ。でも君は隠していただろう。

様子を見てそのうち話そうかと考えていたんだ。

なのに君は、僕よりあの姐さんに打ち明けて。

あれ、結構傷ついたね。それで意地悪しちゃった。ごめん」




「ええー。そうか~。私こそごめん。全然気づかずにいたわ。

姐さんから声を掛けられたの。私からではなくて。

ううん、言い訳だねこれ。ごめん」




「いや僕の方こそごめん。あの女のことで君に相当迷惑をかけたから‥‥」


彼は非常に気不味気にしゅんと項垂れた。その姿が可愛い。





彼は初めから私に好意を持っていて。


一緒にいるうちに世話焼きで負けず嫌いでそれでいてシャイな私がどんどん好きになって。


なにより僕の幸せを考えてくれる優しさと献身的な姿に惚れたと言われました。



ああああああああああ恥ずかしい! 真顔で言わないで!


貴方の顔は王子様みたいにキラキラなんだから! 


あっ、リアル王子だった。




でも、おかんっぽいの一言は余計かも。




それでシナリオを知っていた理由が、邪魔な彼女がストーカっぽくなって。


好きな婚約者はストーカーっぽい女との橋渡し役をかって出て。


気が付けば自分よりストーカっぽい女を優先するようになって、自分のことは二の次にされてしまった。




自信を失くしかけたところにゲームシナリオの話を小耳にしたそうだ。

どこでだ。


それで恥も外聞も捨て姐さんに相談したんだって。


はっ? 姐さんグルか!


それからの彼女は恋のアドバイザー役だそうです。


‥‥ごめんなさい。姐さん喪女疑惑ありな人です。


これは私の胸に秘めておきます。女子には秘密があるものです。






最後に彼は謝罪してくれました。


あの男爵令嬢の真意を測り彼女の背後を探る為に自分の側に近付けた。


それによって私に多大な心労を掛けた上に試すような行動をしてしまったこと。


彼から申し訳なかったと後悔の気持ちが伝わってくる。


私は、怒ってもいないし嫌いにもなっていない。


彼女のことがあったから私は彼への気持ちを知ることが出来たのだから。


その点については感謝している。


だから謝罪は受け入れた。




それとこれからは二人の間に隠し事はやめようとお互い約束をした。


私はこれで十分です。






今、彼と私は結婚式の準備で忙しくしてます。


新居となる離宮の準備にも。


王子妃の側近候補の選別に。


女子友との女子会に。




私の日々は充実しています。




そして彼と二人で過ごす時間が最高の幸福を齎せてくれる。


私に優しく微笑んでくれる彼の笑顔。


その眼差しに私への深い愛が。


私も彼に惜しみなく愛情を注ぎます。


愛し愛される喜びを噛み締めて。




幸多い未来と祝福され。


私達は幸せになります。






――――― 完



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