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何だかんだで優しい?先輩方

「戻ってきたぞ地上に。いやはや、あの恐るべきヘルハウンドの前に置き去りにされた時は死んだと思ったがこうやって生きて地上に戻ってこれて良かったよ。本当に」


「あれ?ラックじゃん、生きてたのかよ。お前ダンジョンでドジしてウルフの群れに食われたんじゃなかったけ?」

 いきなりよく俺の事を小馬鹿にする冒険者の一人が話しかけてきた。名前は確かマッシュだったかな。因みに俺よりも5つ年上で冒険者としては先輩にあたる。

 て待て、俺ウルフの群れに食われたことになってるのだが。どういうことだよ。


「え?すみません私ってウルフの群れに食われて殺されたことになってるのですか?」

 いつもの様に丁寧な言葉で話す。俺が対等な感じで話すとキレる人も結構多くて面倒だからな。基本的には自分を下にして話をしている。


「おう。そうだけど。何?違ったの?」

 いや違ったのって、俺生きてるから違うに決まってるだろ。


「はい。実は5階層のボス部屋で運悪くヘルハウンドと遭遇してしまい。それで囮にされてしまい、完全に死んだと思ったのですが運のいいことに土下座をしたらヘルハウンドに見逃して貰えて、そっから命からがら何とかここまで戻ってきたって感じです」

 俺は一応説明をする。

 この俺は土下座をしたら魔物から見逃して貰えるという情報は隠すつもりはない。

 ただし俺が土下座をして経験値とゴールドが貰えるというのと俺の称号については隠すけど。これらがバレたら流石に不味い。確実に利用される。


「ハハハハハハハ。ハハハハハハハ。いや、マジかよ。ヘルハウンドに土下座って、そんで見逃して貰えるって。ハハハハハハハ、まあ確かにラックの土下座は綺麗だもんな。まあ納得は出来るわ。にしても魔物に土下座って、ハハハハハ。やべえ、腹痛い」

 メチャクチャ大爆笑された。

 流石にこれだけ大声で大爆笑されたら周りの人も気が付いて寄ってくる。


 あっという間に周りに人が集まってくる。

 俺は少々面倒に思いつつも全員に向けて同じ説明を繰り返す。

 その過程で皆から笑われて、面白がられて土下座をさせられるが俺はそれを笑って受け入れる。

 これが俺の毎日であり。これが俺の日常であったから。それにプライドゼロの俺にとっては何とも思わない。悔しいとも辛いとも、何とも思わないから。それに土下座程度で機嫌が取れるのは非常に楽だ。


「なあ、ふと思ったんだけどさ。ダンジョンで仲間を囮にして殺すのって普通に大問題じゃないか。しかもその件のパーティーは嘘の報告を冒険者ギルドにしたんだろ。それって虚偽報告にあたるじゃん、良くてギルド強制脱退。悪くて犯罪者として牢屋行きなんじゃないか?」

 一人の冒険者がそんなことを言った。


 その瞬間さっきまでやいのやいのと騒いでいた冒険者達が静まり返った。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・


「確かにそうだな」

 誰かがそう言った。


「ああ、言われてみればそうだな。それに俺達冒険者の中でそういうクズ野郎がいるなんてのは許されることじゃないしな」

 誰かがそう言った。


「そうだな」「そうだな」「それはおかしいな」「ああ、しっかりと罰を与えないとな」「裁きを受けさせないとな」「そのクズどもを引っ張り出さなきゃな」「確かラックの入ってたパーティーは【竜を超えし者】だったよな」「ああ、そうだったな。名前が少々痛いのと、メンバーが3人いてそのうち二人が美少女という羨ましいパーティーだったからよく覚えているよ」「ちょっと俺あのクズどもを引っ張り出してくる」「ああ頼んだぞ」「じゃあ俺はギルドに説明をしてくる」

 冒険者達が声を上げてラックの為に動こうとした時だった。

 一人の冒険者もといマッシュがストップをかけた。


「おい待て、その案件俺に任せてくれないか、せっかくだ超絶面白いものにしてやる。というわけでラックついてこい」


「あ、はい」

 皆が急に俺の為に行動を始めようとしてくれた。その事実に少し驚きつつ俺についてこいって言ってくれたマッシュ先輩についていく。


 てくてくてくてくてく


 マッシュ先輩と歩きながら俺はつい気になり質問をした。


「どうして。私の為に動いてくれるんですか?」


 と。


「あ?そりゃもちろん。お前が気に入ってるからに決まってるだろ。まあ。気に入ってるといっても面白いという意味だがな。いつもヘラヘラ笑いながら土下座して皆を楽しませてくれる。面白い奴じゃないか。そんなお前を囮にして殺そうとしているクズがいた。そりゃ処すしかないだろ。多分他の冒険者達も同じだと思うぜ。まあ?何だこの業界必ずお前みたいないじられキャラってのが一人は存在するんだ。そういう奴がいるだけで場の話題にもなるし。喧嘩・騒動も起こりにくくなるんだよ。といってもお前にとってはいい迷惑だろうけどよ。ハハハハ、でもその分何だかんだで良くしてやってるだろ」


 マッシュ先輩にそう言われて、ふと、今までの事を思い出していみる。


 俺が森で薬草採取の依頼を受けたが、思うように集まらずに困っていたら、効率のいい探し方と綺麗な薬草の取り方を教えてくれた、シンラ先輩。

 依頼に失敗してお金が無くなり困っていたら、笑いながら俺に土下座させてご飯をくれたライド先輩。

 ダンジョンでの荷物持ちを始めてから、何だかんだで最初の方の役立たずな俺を雇ってくれて怒鳴りながらも色々と教えてくれたシュルティ先輩。

 ダンジョンで荷物持ちをしている時に俺が失敗して前に出過ぎて魔物に襲われたところを助けてくれたハイド先輩。後でなんて危ないことをしてるんだと怒鳴って俺を土下座させた。

 そして今こうして俺の為に動いてくれているマッシュ先輩。


 あれ?本当だ。何だかんだで俺は先輩方に助けてもらっている。

 いやまあ少々土下座させたりとか怒鳴り散らしたりとか酷い事をしているけど、それでも俺は先輩達の助けがなければ確実に死んでいる。

 ・・・・・そうか。俺は何だかんだで良くして貰ってたのか。良くして貰ってるのか?これは?


「な。意外と皆お前の事を助けているだろ。少なくともお前は俺のような冒険者の先輩達には好かれている。多分だがお前が俺らに剣術を教えてほしいとか索敵のコツを教えてほしいって言ったら皆笑ってお前に土下座させながら教えてあげるぞ。それくらいお前は気に入られているからな」


「そうだったのですか。ありがとうございます。マッシュ先輩」

 土下座させながらっていうのは余計だと思うが、冒険者にとって技術を教えるというのはかなり珍しいことだ。技術ってのはその人の能力だ。その人の経験だ。それはレベルでは表せない力がある、まあスキルに現れせれるんだけど。そんなものを教えてくれるって。もし本当に教えて貰えるのだったら是非教えて貰いたいな。


「何良いってことよ。それよりもほら、冒険者ギルドに着いたぞ。さあお前を囮にして逃げたクソ共に罰を与えるぞ」


「はい」

 俺はそう元気よく答えた。


「じゃあ。というわけで一旦ストップだ。今から俺の言う通りに動け。いいか?」

 俺が冒険者ギルドに入ろうとしたら止められた。

 そうしてマッシュ先輩からとある事実の計画を伝えられた。

 俺はそれを少し半信半疑になりつつも了承して、今度こそ冒険者ギルドの扉をマッシュ先輩と共にくぐった。

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