停戦
さて、戦いを終わらせるのなら停戦交渉とか、そういったものをする必要があるのだが……ここで問題になるのが、今の私は1人だということだ。
上空に何人かの鷹人族が待機してくれてはいるが、彼らは交渉とかに不向きだし……さて、どうしたものか。
誰かを呼びに行っても良いが、しかしその間にまたエルダン達が戦い始めてしまっては元も子もないからなぁ。
急に変な敵が現れるという、おかしなトラブルはあったが、そのおかげで戦い自体は停止していて、出来ればこの流れのまま交渉を始めさせたい。
……うーむ、エイマは連れてくるべきだったなぁと、そんなことを考えていると、上空で待機してくれていたのとは別の鷹人族の集団が現れて、こちらに飛んでくる。
「ディアス様~~! 事情を聞いて応援にきました~~」
その集団の中には、他に比べて小柄で、しかし凛々しく賢そうな目をした鷹人族がいて、その高く響く声は聞き馴染みのあるチャイの声だった。
少し前まではヒナの姿をしていたチャイだったが、今ではすっかりと立派な羽を生やし揃え、空も飛べるようになっていて、喋りも以前と違ってハキハキとしている。
ここまでの長距離はまだ飛んだことはなかったはずだが、それでもわざわざ応援に駆けつけてくれたらしい。
更にチャイは以前作られた、フラン達が乗っていた移動用のバスケットを持っていて……どうやらエイマを連れてきてくれたらしい。
この状況であのバスケットに乗って来るのはエイマくらいのものだからなぁ、フラン達は成長してもうアレには乗れない体の大きさとなったし、まず間違いないだろう。
賢いエイマとチャイがいてくれるのなら交渉もなんとかなるはず……ならばとエイマの到着を待つことにする。
歯車を使ってこちらから向かっても良かったが、まだまだ鎧は修復中……下手に飛んで破片を落としてしまっても面白くないからなぁ。
そうやって待っていると、チャイが私にまずバスケットを渡してきて、それから肩にちょこんと乗ってくる。
「お疲れ様です、ディアスさん。
……で、今はどういう状況ですか?」
そしてエイマがバスケットから顔を出しながらそう問いかけてきて、私はここで起こったことをざっくりと説明する。
「……な、なるほど。
よく分からない部分はありましたが、とにかく黒幕っぽい何かを倒したことで戦闘が落ち着いたと、そういうことですね。
そしてこれから和平交渉の席に両軍の代表を引っ張り込む訳ですか……。
……んー、仮にも王子様を呼ぶとなったら、それなりの陣幕を用意したい所ですねぇ。
……よし、ではボクがエルダンさん達の所に行って、陣地から離れた場所に陣幕を張ってもらえるように頼んできます。
そこをメーアバダルの陣幕ということにしましょう。
どちらの陣営でもない中立の場、そこで交渉を行ってもらいディアスさんの名前でまとめ上げることにしましょう。
そういう訳でディアスさんはリチャード王子さんの所に行ってきてください。
どうにか説得して交渉の場まで連れてきてください」
するとエイマもまたざっくりとした指示を出してくれる。
せ、説得かぁ……初対面の王子様をどう説得しろと言うのか。
ピゲル爺に何か聞いておけば良かったなぁと今更後悔するが……仕方ない。
「分かった、なんとかやってみよう」
そう返した私は、鎧を撫で回して修復状況を確認する。
『……もう大体は終わったから動いて構わないとも。
ただし戦闘は控えて欲しいものだね……まだまだ内部までは修復出来ていないからね』
すると大トカゲがそう言ってくれて、ならばと私は歯車を軌道して宙に浮かぶ。
「わっへぇ!? なんか変な歯車があると思ったら飛べちゃうんですか!?
もうなんでもありじゃないですか!?」
「す、凄い、ディアス様が飛んだ!?」
エイマとチャイのそんな悲鳴を受けながら私は東軍……リチャード王子の陣営に向かう。
途中、弓でも射掛けられるかと思っていたが、しかし兵士達はただ呆然とするだけで何もしようとしてこない。
ただこちらを見上げるだけ……中には膝から崩れ落ちて意気消沈している者もいるようだ。
……こんな状況で戦闘継続は難しいはず、これなら交渉も上手くいくはずと期待を持つことが出来る。
そんな兵士達の上を飛んで進んでいくと、状況を立て直そうとしているのか、慌ただしく指示を出している一団が視界に入り込む。
空を飛んでいる私には気付いているはずだが、それ以上に軍の立て直しを優先しているらしい。
こんな派手な鎧が空飛んでいれば嫌でも視線を奪われると思うのだが、一団の全員がすべきことをしているようだ。
ならばきっと王子もそこにいるはずで、そちらに近付いていってゆっくりと高度を下げていくと、流石に無視は出来ないのだろう、鎧姿の老騎士とマント姿の胡散臭い男が前に進み出てくる。
王子を庇おうとしているのか、それぞれ緊張感をまとっていて……胡散臭い男の方が口を開く。
「め、メーアバダル公、何用でしょうか! もしリチャード様に手を出そうってんなら、ここを通すわけにはいきませんッスよ……!」
そう言いながら男は何故か手の中にあるメダルのようなものをこちらに見せてくる。
……何のメダルなんだろうなぁ、アレは。
ゴルディアが似たようなものを持っていたような……いや、アイサとイーライが持っていたんだったか?
まぁ、とにかく私の用事はあくまで交渉だ、手を出すつもりはないと知らせておくべきだろう。
「私の目的は停戦だ、誰かを害したりはしない。
そもそも同じ国の者同士で争ってどうすると言うんだ。
……どっちの勝ちでも負けでもない、このまま帰ってくれたらそれで良い。
今、そのための交渉の場を作っている、武器を持たずにそこまで来てくれ。
そこでの安全は私が保証しよう」
私がそう言うと、老騎士と胡散臭い男は目を丸くする。
目を丸くしながらも希望を抱いたのだろう、表情を明るくし、その目にもハッキリとした力が込められる。
そして老騎士は王子と思われる人物の下に駆け出して、胡散臭い男はあれこれと質問を投げかけてくる。
「な、なんだってそんな真似を? そんなことしてどんな得が?? もしかして罠にでもかけようとしてるんスか?」
「戦争を止めるため。平和以上の得はないだろう。
……この状況でわざわざ罠を仕掛ける理由はないな」
それらに丁寧に答えると胡散臭い男は膝から崩れ落ち、そのまま安堵のため息を吐き出す。
どうやら胡散臭い男には信じてもらえたようだ。
そして老騎士がこちらへとやってきて……あまり浮かない顔でもってゆっくりと言葉を投げかけてくるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回は交渉本番です
そしてお知らせです!
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アニメ、作品の宣伝番組? が始まりました
これからも続いていく予定ですので、ぜひぜひチェックしてみてください!




