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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第二十章 決戦

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神殿



 神殿は荘厳な作りではあった。


 入口には立派な門、その先には意味がないのに並ぶ立派な柱、門にも柱にも彫刻がしてあって、大きさも作りも初めて見るようなものだった。


 当然ながら無人だが、それがまた荘厳さを引き立たせていて……なんだか冷気のようなものを感じながら足を進めていく。


 その間、ニャーヂェン族達が周囲を跳び回って情報を集めようとしてくれるが、これといった発見はないのか、何の報告もないまま足を進めることになり……私が戦闘を行き、アルナーがそれに続き、皆が周囲を囲うように動き回ると、そんな形で神殿の中に入っていく。


 並ぶ柱を通り過ぎて階段を登り、大きな装飾付きの扉を押し開くと礼拝堂が広がっている。


 祈りに来た者達のための椅子が並び、正面には神官が立つための儀式の壇上。


 そしてそこには神官の姿があって私はぎょっとして戦斧を構える。


「……ん? おお? んんん? えぇ?」


 そして思わず声を上げる。


 全く気配がしない中で突然現れた人の姿……しかしそこに生命感は全くなく、感覚としては無人としか思えない。


 ならば死体かとも思うが、神官達は壇上でしっかりと立っていて、微動だにせずにただそこにいる。


 判断に困る、私が思わず上げた声に反応することもない、神官達に気付いたアルナーが弓に矢を番え、皆が慌ただしく戦闘態勢に入っても神官達は一切身動きをしない。


「……石像ではない……と、思うんだが……」


 迂闊に近付いて良いものか迷う、手斧を投擲してみるという手もあるが……それが良いとも思えない。


 あれこれと考えて吐き出した私の声に最初に反応したのは鎧となった大トカゲだった。


『……すまないね、解析に時間がかかった。

 彼らは人間で神官達だ、そして生存している、そのことに間違いはない。

 だから君だけは近付いても構わないよ、君以外はダメだ、取り込まれる可能性がある。

 様子を確かめたいのであれば君だけで近付き給えよ』


 そう言われて私は数秒、きょとんとしてしまう、私だけ? 取り込まれる?


 よくは分からないが、周囲を見回して……アルナー達は私に任せると言う顔をしていて、それを受けて頷いた私は、メイゾウに離れるように伝えてから足を進めて神官達に近付いていく。


 ……近付くことで段々と状況が理解出来ていく。


 いや、分からないことばかりなのだけども、普通の状況ではないことが分かっていく。


 神官達はどうやら透明で大きく丸い……汚れ一つない液体に包まれているようだった。


 立っているのではなく液体の中でその形に固定されているらしい。


 何か透明の……紐か? それが体に繋がっていて、それで固定されているようだ。


 大きな丸い液体の中で紐に繋がれて……何人だ、10人くらいか? どの神官も神官服は無駄に豪華で新道派のお偉いさんであることは分かる。


「……あれはなんだ?」


『……説明に困るね、分かりやすく言うと――――なんだが、君にはそれが伝わらない。

 ……そうだな、出来るだけ噛み砕くとアレは燃料だ、燃料にされている。

 何の燃料かと言えば誰かを活かすための燃料だ、状況から察するに子供達だろう。

 王都中の子供達を神殿の……これは地下だな、地下の部屋で保護していて、その子供達が生きるための燃料を彼らから吸い出しているのだろうね』


 途中不明瞭な部分があったが何を言おうとしたのか……確かに聞き慣れない単語だったが。

 

 まぁ、そこをどうこう言っても仕方ないと考えを切り替えた私は言葉を返す。


「それは……冗談ではないんだよ、な? 気味が悪いと言うか不気味と言うか、子供達はそれで平気なのか?」


『冗談でこんなことを言うまいよ。

 不気味さはこの際、捨て置き給え……子供達の無事は約束しよう、これは我々が使うものと同種の技術だ。

 あの様子であれば数カ月は無事だろう、そのためのアレだろうからね。

 ただしあの神官達の無事は諦めてもらう他ない、彼らはもう絶命しているのと変わらない。

 一度火がついた薪を生木に戻せと言われても、そんなことは我々にも無理だと、そんな説明で理解出来るかな?』


「……こんなものを見るためにここまで来た訳ではないんだがなぁ。

 ……貴方達を疑う訳ではないが、子供達は本当に無事なのか? その確認は出来ないのか?」


『ふむ……まぁ、当然の要求ではある。少し待ち給え』


 その言葉に従って待っていると鎧の一部、つまりは大トカゲの体の一部が変形して鏡になり、鏡に何かが映り込む。


 それは不思議な絵だった、ベッドの上で穏やかに眠る子供達の絵。


 血色は良く幸せそうな寝顔をしていて、呼吸をしている様子も見て取れる。


 中には赤ん坊もいるが、赤ん坊も問題なく呼吸をしているようだ。


 ……しかし動く絵とは、流石神々と言うしかないなぁ。


『この通り無事だ。

 子供達がいる部屋まで案内することも出来るが推奨は出来ない、子供達の安眠が阻害される可能性がある。

 だからまぁ、諦め給えよ。

 ……この光景には少し驚かされたが、これを引き起こした者にも最低限の良識があったようだ。

 ……そして周囲を探って分かったことだが、主犯の姿はここにはないようだ。

 この子供達の親達と一緒にいるのかもしれないね、という訳でここからいなくなった人々を追うことを推奨するよ』


「……王都の人々を兵士にして、自分も一緒になってどこかに進軍しているという訳か。

 本当に何が目的やらなぁ……いや、考えても仕方ないか。

 それで、この神殿と王都はどうしたら良い? また旗を立てるべきか?」


『……そうだね、神殿だけにしておき給え、王都全体は流石に問題もあろう。

 同時にここには誰も近づかないようによく言い含めておきたまえ、誰も燃料になどなりたくはないだろう?

 ひとたびあれに取り込まれたならもう誰にもどうにも出来ない、燃料となるしかないだろうね』


「……分かった、皆には良く言っておくよ。

 しかしこれが新道派の末路か……」


 と、そう言ってから改めて液体の中の神官達を見やる。


 あの中に両親を殺した連中もいるのだろうか? 伯父さんから話を聞いた時にはぶん殴ってやりたいとも思ったものだが、こうなるとただただ哀れでしかないなぁ。


 ……もう何かを言う気にもなれない。

 

 踵を返し、アルナー達の側に戻ってそこで何があったのかを説明していく。


 そして誰もが顔色を悪くする中、神殿から出るように促し……終わった場所を後にする。


 言われた通り旗も立てて、もうそのまま王都を去るで良いかと考えていると、アルナーがコンコンと鎧を叩いてきて、それから指で王城を指し示し、そして懐から大きく複雑な作りの、宝石まではめ込まれた見たことのない鍵を取り出す。


「王城にもしっかり行くぞ。

 王城全てを見る必要はないが、宝物庫には行かないとな。

 ……こうしてピゲルから鍵も預かってきたんだし、その上に無人と来たらいかない訳にはいかないだろう?」


「え? うん? いつの間に??? ピゲル爺から鍵をもらったなら、まぁ構わないんだろうが……いや、それで良いのか? 本当に??」


 私がそう返すとアルナーはニヤリと笑って足早に王城に向かい始める。


「ピゲルが言ったんだ、宝物庫には神器があると!

 あるならば使わないのはおかしいだろう? ディアスがもっと強くなるかもしれないんだしな。

 それにゾルグ達だって稼ぎがなければ困ってしまうぞ」


 ……まぁ、うん、鬼人族達に手伝ってもらっているから、多少はその必要があるのだろうけども……。


 いや、仕方ないか、神器があると言うのなら確保はしておきたいし、ここはアルナーの言う通りにしよう。


 そう決めて私が歩き始めると、他の皆もそれに続いて……そうして私達は王城というか宝物庫に向けて移動を開始するのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回は宝物庫荒らし


そろそろアニメ放映が近付いてきました

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― 新着の感想 ―
荒らしって言っちゃった
こう・・・なんというか・・・ゲームの【勇者】してますなあ(棒
人を操れるなら子供を人質にする必要もない、気もするけど。 いや事が済んだ後に支配する気があるなら、国民をいたずらに減らすわけにもいかないから生かす必要はあるか。 でもこんなめちゃくちゃにしておいて、ど…
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