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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第二十章 決戦

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港町



 結局港町は完全な無人だった。


 勝手に色々借りるのは申し訳ないばかりだが無人では仕方がなく、宿や役場などに金貨銀貨を置いておくという形で支払いをした上で、部屋を使わせてもらうことになった。


 そうやって宿泊しながら町のことを調べてはみたのだが何も分からず……その途中、大トカゲ達が現れてこんな助言をしてきた。


『旗を掲げ給えよ、そうすればここは君の占領地だ。

 君の占領地となれば、聖地の者達もおいそれと手出しは出来まい』


 裏であれこれと動いている怪しい連中も、大メーアなどの支援を受けている私を表立って攻撃することは出来ないらしく、それは私の仲間や領地も同じことで、占領地もまた同じ扱いになるはずだ……と、そういうことだった。


 町一番の建物……代官屋敷と思われる屋敷に領旗を掲げたなら、それでここは占領地、一時的にだがメーアバダル領ということになってしまうらしい。


 クラウスによるとあまり良い行為ではないようだが、無人のまま町を放置しておくというのも無責任な話、ここは公爵が緊急保護をする、という形で理屈を通すことになりそうだ。


 占領地としたなら、クラウスが中心となって町を拠点化……物資の集積所や、軍馬用の厩舎、兵士達の宿、調理場や湯浴み場を用意し、しっかりとした拠点に仕上げていった。


 元々防壁のある町だったので、防衛に関しては問題なし……まぁ、いざ敵が来たとしても戦えるだけの戦力はあるし、船で逃げ帰るという選択肢もあるので問題はないだろう。


 食料に関しては物資として持ってきたものと、ゴブリン達が漁をしてくれるので問題なし。


 この港町の近く……海の向こうには無人の島がいくつかあるとかで、そこから木の実なんかも取ってきてくれていて、普段に負けないくらいに食卓は賑やかだった。


 そして港の一部はゴブリン族に開放し、子育てや休憩のための場にしてもらっている。


 あくまで私達が占領している間だけのものだが、ゴブリン達はそれでもありがたいようで、早速港のあちこちで体を休めている。


 そうやって拠点化が終わって……そろそろ王都の調査を始めたい所だ。


 おかしなことが起こっているらしい王都、この港町も十分おかしいが王都は更に悪い状況にあるらしい。


 聖地の連中が何かをしたのか、新道派が何かをしたのか……何もかもが分からないので調べる必要があるだろう。


 何がどうなっているか分からない所に、全員で行くのは危険過ぎるので少数精鋭ってことになるだろう。


 まず大トカゲ達が助けてくれる私、補佐としてエイゾウとアルナー、調査を得意としているニャーヂェン族の10人未満で行くことになりそうだ。


 クラウスも同行したがっていたが、それではここが無防備になってしまうので残ってもらい、防衛と管理をしてもらうことになった。


 その代わりという訳ではないが、私達には大トカゲと炎猫が同行してくれるとかで、彼らがいれば不測の事態にも対処出来るはずだ。


 ……と、そんなことを勝手に借りている代官屋敷の一室で窓の外を見ながら考えていると、足音がしてアルナーがやってくる。


「ディアス、そろそろ昼食が出来るぞ。

 考え事は食べながらでも良いだろう」


 そう声をかけてくれたアルナーの肩には炎猫がペタリと足を投げ出す形で垂れている。


 炎猫はそうやって常にアルナーの側にいて、アルナーを守ってくれているらしい。


 私にとっては一番の弱点となりえるとか、人質にするならアルナーだろうとか、そんな理由でのことらしく、アルナーも神々にそうされて嫌な気分はしないのか、素直に受け入れている。


「今日は焼き魚のチーズ香辛料かけだ、贅沢なことだが君等にとってはそれが普通のようだ。

 かつての神話時代のような豊かさを得つつあるようで何よりだ」


 と、炎猫。


 最近では大トカゲも炎猫も普通に食事に参加している。


 アルナーが神様への供え物をしなければと用意し始めたのがきっかけで、普通に味覚があるというか、食事を楽しめるらしくよく分からない力で器用に食器を操って食事をしている。


 トカゲのようでトカゲではなく、猫のようで猫ではなく、味覚やら何やらはほぼ人のそれと同じらしく、人が美味しいと感じるものであれば彼らも美味しいと感じるらしい。


「魚も良いが、肉もな……肉にチーズも良いものだ、たまには肉を焼いて見給えよ」


 と、大トカゲ。


「……まぁ、肉はまた明日以降だな。

 王都までの道の調査ついでに狩りをしてくるから、その成果次第では肉料理が食べられるかもな」


 私がそう返すと大トカゲはどこか嬉しそうにグゴゴゴと喉を鳴らし、代官屋敷の庭へと向かって歩いていく。


 最近の食事はそこに置いたテーブルなどですることになっている。


 勝手に食堂を使うのは気が引けるというのもあるが、大トカゲや炎猫、メイゾウの食事には向いていないというのも理由の一つだった。


 庭に出るとアルナーが持ってきた絨毯などで飾り付けられた独特な光景が視界に入り込む。


 色とりどりの花が咲き乱れる花壇に王国風のテーブルと椅子、そこにアルナーが布を飾るなりしていて……なんとも言えない具合になっているが、アルナー的には悪くない出来上がりらしい。


 そんな庭の隅には簡単な竈が組まれていて……そこがアルナーの調理場となっている。


 代官屋敷には台所もちゃんとあるのだけど、アルナーが言うには狭くて不便、更に掃除が行き届いていなくて、食中毒の危険まであるから使いたくないらしい。


 綺麗な花壇が並ぶ庭に竈なんて作ってしまって良いものかと悩んだものだが……その代わりに庭師の経験のある領兵が花壇の手入れなどをしているので、それで許してもらうことにしよう。


 そんな庭に到着したなら皆で食事をしていく。


 戦いに来たとは思えない程恵まれた、静かで豊かな時間となって……そうやってこれからの戦いに備えていく。


 王都で何があるかは分からないが、ドラゴン戦よりは苦戦するに違いなく、覚悟を決めておく必要があるだろう。


 王都やリチャード王子をおかしくした原因を取り除き、リチャード王子を正気に戻し、どうにか停戦に持っていく。


 そこから先はジュウハ達の仕事になるだろうが、そこまでは私がやらなければならない、私の仕事となるのだろう。


「……草原で食べる魚とはまた違った味わいなのが不思議なものだな」


 焼いた魚に砕いた木の実をまぶしたものを頭ごと口に運んでモリモリと食べながらそんな感想を口にした私は、改めて覚悟を決めて明日の出立に備えていくのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回はいよいよ王都調査へ、となります



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― 新着の感想 ―
ドラゴン相手より苦戦しそう… 確かに、モンスター相手より人間相手の方がめんど…苦戦しそうよね
こうなると神様ももう家族の一員のようなモノですねぇ
ディアスの聖地側も明らかにアクションをお越し始めたんだな(^_^;)。 王都に精神干渉的なフィールドや手段が設置されてるであろう現象に対する対抗措置は必要だよなぁ。<まあディアスだけには効きが悪そうだ…
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