表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第二十章 決戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

580/580

帰還



――――戦場で エルダン



 エルダン率いるマーハティ軍と、リチャード率いる正規軍が相対したのは当初の想定通り、王国の中央にある平原だった。


 両者共にどこかの街に被害を出そうとは思っておらず、苛烈な結果が待っている籠城戦も望んでおらず、王者を目指すものとして堂々と平原に打って出ての陣張りだった。


 しかしただ平原で睨み合っているだけが動きの全てではなく、両軍共に王国全土に戦力を散らせての展開を行っていた。


 不参戦を決め込んでいる勢力が多いとは言え、一切警戒しないでは隙を突かれてしまうかもしれない。


 だからと睨みを効かせるために、この戦いのために占領した各地の砦に支軍を配置していて……そうなると一箇所一箇所に配置出来る戦力はどうしても少なくなってしまうのだが、どの不参戦勢力もどちらかの軍を積極的に害そうとはしていないので、少数で睨むだけで十分、それで動きを見せることは一切なかった。


 どの勢力も隙があれば噛みつくかもしれないが、隙がないのなら無茶はしない、という方針であるらしい。


 そういう訳で両軍共に、大半の戦力を分散させた上に遊兵にしてしまうという、愚策とも言える展開をさせてしまっていた。


 愚策に至ったのにはそれぞれ理由があった。


 エルダン達はそもそも消耗戦や総力戦を望んでいなかった、相手を恨んでいる訳でも殺したい訳でもない、ただ趨勢を決めるための短期決戦を望んでいて、そうしようと誘いをかけた節がある。

 

 誘いをかけて策を駆使し、どうにか隙を作り出した上で数の不利を覚悟しての奇襲を仕掛ける予定だった……のだが、ディアスという男の存在が方針を大きく変えさせていた。


 完全な味方という訳ではないが、それでもディアスは味方をしてくれているようで、リチャード軍の砦を妙な方向からの奇襲で攻撃してくれている。


 そうなれば当然リチャード軍はそちらに意識を向ける必要がある訳で、あのディアスをなんとかしようと思ったなら、かなりの戦力を分散させてくれるはず。


 そうやって戦力を分散させて減らしてくれるのならば、危険な奇襲という手を使う必要はない訳で……急遽方針を転換、ある程度の徴兵を行った上で、リチャードの二の舞を避けるべし、という方針を取っていた。


 リチャードのように他勢力からの奇襲を受ければ、あっという間の瓦解もあり得る。


 その危険性を丁寧に潰しながらの長期戦に持ち込み、ディアスの暴れっぷりに期待しようというものだ。


 ジュウハはディアスに勝たせるのも、ディアスのおかげで勝つという展開も望んではいない、あくまでエルダンに王者としての勝利をさせるべきだと考えている。


 だが所詮ディアスは少数勢力でしかない。どんなに暴れようともどこかで息切れが起こるだろうし、リチャード側の対策も出来上がることだろう。


 動き出すのはそれからでも良い、それまでは戦力を分散させてでも危険性を減らして、ついでに支配地を広げての持久戦、これが今のジュウハの決断だった。


 圧倒的に数で勝るリチャード軍は、そういったジュウハの考えをある程度読みながらも、あえて誘いに乗っている節があった。


 誘いに乗って軍を分散したとしても数の有利が崩れる訳ではなく、戦後のことを思えば少数での決戦は望む所……自らの支配力を各地に見せつけるという意味でも悪くない策だと考えての決断を行っていた。


 そうしてお互いは睨み合った。


 睨み合った上で……時を待った、お互いにあえて一切動かなかった。


 リチャード軍は、改革で人員増強に成功していた騎士団を中心とした編成を行っており、長期戦でも全く問題はなかった。


 徴兵をほとんど行っていないので農繁期が来ても全く問題ない、内政も市場も順調に動き続けている。


 長期戦を行ったとしても耐え抜くだけの体力は十分あるとの確固たる自信の上での判断で……逆にエルダン側は長期戦には向いていない状況にあった。


 数の不利を解消するために徴兵を行っており、農繁期がやってきたなら内政にかなりのダメージがあることだろう。市場に関しても不安定で、肝心要の西方商圏がぐらつきつつあった。


 ……が、王国中に商売網を持つギルドの支部が出来た上に、ギルドが今回の戦いに合わせて積極的に動いてくれていることである程度の余裕は出来ていて、更には隣領……メーアバダルから大量の食料が流れ込んでくるため、一年二年くらいであれば耐えられないこともない状況にあった。


 あまり健全とは言えないがなんとかはなる。そして相手側後方ではディアスが暴れてくれている。


 ならば持久戦も悪くないだろうと考えてのことだった。


 一方でリチャード軍もディアスの動向に勝機を見出していた。


 ディアスを討てば、捕縛出来れば、なんらかの形で行動不能に出来れば相手の士気を大きく砕くことが出来る。そのままディアスを味方に引き込めば相手の士気崩壊まであり得る話だった。


 しかし相手はあのディアスだ、簡単にいく訳がない……のだが、全くの無策でもなかった。


 そもそもディアスが戦時中に大暴れ出来たのは、十分な補給や後方支援があったからこそ。


 更に優秀な軍師がいての結果であり……その補給を断てば、とにかく消耗戦を仕掛ければ、いずれは動きを鈍らせることだろう。


 膨大な兵力と、十分な時間と、ディアスへの理解を武器にしっかりとした作戦を練って動いていた。


 ……そんな両者の思惑を他所にディアスは自領へと帰還してしまっていたのだが、それにまだ気付いていない両者の意識はディアスに向き続けているのだった。



――――荒野に帰還して ディアス



 大量の物資を船……ピゲルの船にも積み込んでゴブリン達の導きで無事に荒野へと帰還すると、そこには臨時の拠点が出来上がっていた。


 私達が帰還すること、物資が運び込まれることは既に鷹人族達の手で伝わっており、そのための場所を用意したという感じなのだろう。


 到着するなりゴルディアとエリーが駆けてきて、物資の運搬を指示し始め……数え切れない程の犬人族達が渡し板で船に乗り込み、次から次に物資を持ち出していく。


 それに続く形で船を降りて桟橋から臨時拠点へと向かうと、物資の確認をしていたゴルディアが声をかけてくる。


「おう、無事だったか」


「ああ、特に問題はなかったな。

 ……それと事前に知らせた通りウェイズ達と合流したぞ、全員無事に連れてきていて、魂鑑定の結果も心にも特に問題ないようだ。

 このままイルク村で暮らしてもらうことになるから、そこら辺の世話はよろしく頼む」


「ああ、既にウェイズ用の工房の建設も始まってるから、問題はねぇよ。

 ……そしてウェイズ達がそんな風に逃げてきたってことは、あっちの状況は悪ぃみてぇだな」


「ウェイズ達も何が起きているかは理解しきれていないようだが、不気味な雰囲気を感じ取ったのと、ギルドからの連絡を受けて脱出を決断したようだ。

 ……まぁ、人手を受け入れる余裕はいつも以上にあるから問題ないだろう。

 そっちは特に問題ないか?」


「ああ、モンスター連中が来たりしたがな、全部素材にしてやったから問題ねぇよ。

 そしてアレだ、獣人国からの援軍が届いたぞ。

 キコさんと血無しの一団、これはついに領民になりにきたって形だな。それと善意の義勇兵って形で別の一団も到着したな。

 獣王なのか、ヤテンってやつの思惑なのか、本当に善意で生まれた一団なのかはなんとも言えねぇようだが、とりあえず魂鑑定は問題ねぇようだ。

 血無し連中ももちろん問題なし、早速人手として働いてもらっているぜ」


「そうか、人手が欲しい時に来てくれたのは助かるな。

 ……分かった、荷物は皆に任せて私は一旦イルク村に戻ろう、それから挨拶をしてまたいつ戦場に行くかを考えないとな」


「おう、こっちは任せとけ!」


 と、そう言ってゴルディアは背中をバンッと叩いてきて、それに押されて私はイルク村に戻るため、拠点の馬のどれの背に乗るかの厳選を始めるのだった。



お読みいただきありがとうございました。


今回から新章開始


次回は

散々暴れてすぐに帰宅したディアス達のあれこれです


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ディアスの帰還を早く掴んだ方がイニチアシブを取れそうだが、はてさて。
まさかのディアス一時帰還かぁ。てか、タイミングいいのか悪いのか大量の移民が到着したのね。 そして両軍散兵しての持久戦の構えと。とりあえず決戦場近辺の平原の開墾だな(おいっ)割と冗談抜きでこういう長丁…
ジュウハもリチャード軍もディアスどんをよく知ってるだけに現在のディアスどんの状況、状態ってのを見誤ってる様ですねぇ。 これはまだまだディアスどんに引っかき回されそうですねぇ、両軍ともに。 逆にディアス…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ