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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第十六章 新たな春風

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新たな……

久しぶりに登場用語解説


・ゴブリン族

 昔存在したという恐ろしく勇ましい鮫を由来とした種族名を持つ魚人族

 魚がそのまま立ったような姿をしていて、勇敢かつ率直、非道を嫌う性格

 イービリスという若者を中心とした冒険隊がディアスと邂逅し、友好関係を構築した


 リンゴ魚という魚を海から定期的に運んでくれていて、対価は洞人族が作った鉄器など


 剣山の巣から帰ってきたエイマは、向こうで書き留めて来たらしい壁画の絵を前に頭を抱え続けることになった。


 壁画の意図が理解出来ず、何を伝えたかったのか理解出来ず……鷹人族に伝わる口伝も、一部以外は理解が難しい内容だったようだ。


 それらを編纂するというのは大変なことのようで……しばらくは頭を抱え続けることになるのだろう。


 ちなみにだが理解出来た一部というのは、この辺りに人間族が現れ国造りを始めたなら協力し、ドラゴンやモンスターを討伐すべし、という内容だったようだ。


 ……私は国造りとかはしていないのだが、鷹人族の価値観では領主も王様も大差ないようで……その言い伝えもあってホーラオは、サーヒィのことを応援しようと決めたようだ。


「……ややこしいのはですね、口伝の中には『神々との約定』と『謎の人物との約定』の二種類があるっぽいのに、どちらも同じ『約定』としちゃってるんですよね。

 神々との約定は非現実的と言いますか、神話のような内容で、謎の人物との約定は現実的かつ、鷹人族のこれからの指針のような内容で……その両方をただ『約定』として言い伝えているものですから区別が大変なんです。

しかも口伝なものですから、伝わるうちに混同されたり入れ違っちゃったりしていることも多いようでして……それらの区別と整理から始めないといけないようなんですよ」


 私達のユルトの中の、エイマのための部屋のような空間……木箱の中にある机を前にしてエイマがそんな声を上げて、話を聞いていた私は「ふぅむ」と声を上げ……それから口を開く。


「……私にはよく分からないが、どうしても難しいようならベン伯父さんに相談してみると良い。

 神話やそれに関する本の解読や編纂は神官の仕事のうちだから、ベン伯父さんなら良いやり方を知っているはずだ。

 ……それにベン伯父さんは、他の人が知らない神話を知っていたりするみたいで、その中に鷹人族の言い伝えと一致するものがあるかもしれないぞ」


 伯父さんは以前、聖地巡礼に成功し、聖典を読んだことがある……ようなことを匂わせていた。


 そんな伯父さんであればエイマが知らないことを……特に神話に関わることを知っているはずで、良い助言役になってくれるはずだ。


「……なるほど、ベンさんですか。

 分かりました、どうしても行き詰まるようならベンさんに相談してみます。

 ……とりあえず今夜の新年を祝う宴には顔を出しますから、それまで頑張ってみます。

 フラン君の方は問題なさそうですか?」


「ああ、うん、張り切って練習していたみたいで……多分今も広場で予行練習をしているんじゃないかな?」


 私がそう返すとエイマは「それなら安心です」と、そう言ってから頷いて……机の上の紙束に向き合い、頭を抱え直す。

 

 そんなエイマの邪魔をしてはいけないかとユルトを後にした私は、広場へと向かい……宴の準備が進む広場の中心でメァメァと声を上げているフランへと視線をやる。


 フランが今やっているのは、今夜の宴で披露する予定の冒険譚語りの予行練習だ。


 空を飛び、鷹人族以外が足を踏み入れたことのない剣山の巣へと到達し、そこで大昔の壁画を目にした。


 その内容を理解は出来ていないが、とても素晴らしい光景だったそうで……そんなフランの冒険譚が今日の宴の主役だったりする。


 そのことをよく理解しているフランは、語りの練習をしながらも大事な部分は語らず、しっかりと秘密にしていて……半端に語られる冒険譚が逆に皆の興味を引いているようで、宴の準備を進めている皆は、その練習に耳を傾けながらソワソワとしている。


 こういった冒険譚は大事な娯楽の一つで、そのために冒険者を支援している領主や貴族も多いらしい。


 大金を出して冒険をさせて、見事冒険に成功した際には、自分や領民の前で冒険譚を語らせ、娯楽とする。


 時には宝物や歴史的な物品を冒険者が持ち帰ることもあり、それらは依頼をした側が買い取るのが定番だそうで、買い取ったものを収集品にする者もいれば、冒険譚と合わせて領民に公開する者もいるとかで……結構な需要があることのようだ。


中には冒険者を生業とする一家、なんてのも存在しているらしく……全く縁遠い生活をしていた私としては驚くばかりの話だった。

 

 そこまでの需要があるなら、領主として冒険者を雇った方が良いのかな? なんてことを思ったが……エイマ曰く、私の普段の生活が冒険みたいなものだからその必要はないらしい。


 定期的にドラゴンを倒したり、不思議な力を持つ武器なんかを手に入れたり、色々な種族と出会ったり。


 それらに勝る冒険譚なんてまず無いんだそうで……そんな私が冒険者を雇うと言うのは、下手をするとかなりの嫌味になってしまうんだそうだ。


 ……そんなつもりは全くないのだけども、そういうことなら仕方ない、雇うのではなく、フランのような身内を応援することにして、どうしても冒険譚が必要となったら自分の話をすることにしよう。


 あまりそういうのは得意ではないのだけども、皆が喜んでくれるのならやる価値はあるだろう。


 ……しかしそうなると1回くらいは本職の冒険者を雇いたい所だ。


 本職の冒険譚の語り口というか、盛り上げるためのコツみたいなのを分かっているのといないのでは、完成度が変わってくるはずだし……多少の金を払うことになるのだとしても、その価値はあるだろう。


 冒険者というと、彼らに話を聞いてみるのも良いかもしれない―――と、そんなことを考えた折、のっしのっしと見慣れた影が川の方からやってくる。


「うむ、どうやら間に合ったようだ。

 メーアバダル公! 新年のお祝い申し上げる!」


 その声の主はゴブリン族のイービリスで、何人かの仲間達と海からやってきたようだ。


 冬の間もゴブリン族はイルク村まで魚を運んできてくれていたのだが、イービリスは海での仕事があるとかでしばらくの間、顔を見せていなかった。


 だけども新年を祝う宴があると聞いてわざわざやってきてくれたようで……イービリス達もまた冒険者であることを思い出す。


 金銭で雇われている訳ではないが、自らの冒険心を糧に冒険をし、故郷で語り聞かせたりしているそうで……イービリス達からも良い助言を聞けそうだ。


 そう考えて私はまず挨拶をしてからその旨を伝えようとすると、挨拶をした時点でイービリスが先に話を切り出してくる。


「ところでメーアバダル公、不躾ではあるが頼みがある。

 我らの同胞を何人か、領民として受け入れてはもらえないだろうか?

 我らの冒険譚に刺激を受けてこの地での暮らしを望む者数名、流れのない陸地での暮らしを望む者数名、この地から更なる冒険を望む者数名、受け入れてもらえるとありがたい。

 ……当人達が強く望んでいるというのもあるのだが、最近になって我らの生活が豊かになったのを知った海の他種族がこの地を意識していると聞き、我らの長がより踏み込んだ関係を望んでいるというのもあってな……もし受け入れてもらえるのなら、ある程度の量のリンゴ魚を定期的に格安で届けることを誓おう。

 ……どうだろうか?」


 それはまさかの頼み事だった。


 予想もしていなかったと言うか何と言うか……実質的に鷹人族の巣の全員が領民になったような状況で更にゴブリン族まで領民になってくれるらしい。


「領民になってくれると言うのなら大歓迎だ。

 何人でも来てくれて構わないぞ、既にイービリス達の滞在でゴブリン族の生活に必要なものは大体分かっているが、更に必要な物があれば遠慮なく言ってくれ。

 格安で届けてくれるのは……ありがたいが、無理はしなくて良いからな?」


 と、私が返すとイービリスは口の端をぐいっと、並ぶ牙が露出する程に上げての笑顔を作り、そうして手を差し出し握手を求めてきて……私がそれに応じるとイービリスは嬉しそうに、本当に嬉しそうに握った手にしっかりとした力を込めてくるのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回はこの続き、宴やら何やらになる予定です



そしてお知らせです

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ジュウハががっつり頑張る回なので、ぜひぜひチェックしてください!

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― 新着の感想 ―
うわぁ、感想欄がシンプルになってる。 ついでに書き込み後の修正もできたら素晴らしいんですけどね (何度か書き込み直後に消してかきなおしてるのは私です) ……エイマ曰く、私の普段の生活が冒険みたいなも…
2分目 一部意外→一部以外かと
まぁ、鷹人族の口伝の編纂はかなりの年数も経って色々混じってる様ですからエイマも頭が痛そうですねぇ。 難解なパズルを解く様なモノですかねぇ。 そういえば『魔高炉』と言えばふと思ったんですけどそれの熱を利…
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