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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第十五章 雪原を駆ける

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冬の狼

名前だけ登場キャラざっくり紹介


・フェンディア

 人間族の女性、神官。神殿で働いていて、主にベンの補佐をしているが……子供好きなようで子どもの世話もしている


・パトリック達

 人間族の男性、神官兵、パトリック、ポール、プリモ、ピエールの4人、中年から若者まで年齢は様々


・スーク婆さん

 人間族の女性、12人の婆さん達の一人、ミルク絞りが得意で、ミルク料理も得意、主にミルク担当


 アルナーと遠駆けをすることになって……と、言っても今の草原は雪が積もっていて駆けるには不向きな状態で、ベイヤースとカーベランにはゆっくり雪原を歩いてもらうことにし……晴れ間の下、なんともゆったりとした乗馬を楽しんでいると、村から少し離れた所を餌場に選んだのか、何人かの領兵と犬人族達に護衛された白ギーの姿が視界に入り込む。


 雪に顔を突っ込んでその下の草を食んだり、ただぼーっとしたり、あるいは体を寄せ合いながら体を休めたりとしていて……護衛の皆に甘えているのか、白ギーのどれかが見張っているということはない。


 馬の警戒心が強いのか、白ギーの警戒心が無さ過ぎるのか……なんとも緩んだ空気が流れる群れの中心で、体を休めていた3頭がゆっくり立ち上がり……その大きく膨らんだ腹を揺らす。


「……今年は3頭も妊娠しているのか。

 えぇっと……確か白ギーの出産は春だから、出産まではまだまだあるのかな」


 その様子を見やりながら私がそう言うと、隣を進むアルナーが声を返してくる。


「そうだな、春になったらまたたくさんのミルクが手に入るとスークや犬人族達が懸命に世話をしていて……毛並みも肌艶も、鼻先の様子も悪くない、あれなら良い子を産んでくれるだろう」


「スーク婆さんは喜ぶだろうなぁ、それにスーク婆さんのミルク料理が食べられるようになったら、目に見えて犬人族の毛並みや皆の体調良くなったしなぁ、皆も喜んでくれるだろう。

 もうミルクなしでは困るというか……白ギーもすっかりと欠かせない存在になってきたなぁ」


「最初は肉にするつもりで飼っていたが……ミルクがあんなに美味しいとなると、肉にするよりは数を増やしていきたいな。

 肉は黒ギーでなんとかなっているし……白ギーとラクダにはどんどんミルクを作ってもらわないとな。

 それに次の冬には馬達も出産するだろうし……そうなったら馬のミルクも飲めるようになるはずだ」


「そう言えば馬の出産は今のところ一頭もないんだな? もうずいぶん長いこと村にいるはずなのに……」


「そこはある程度調整していたからな、妊娠させて数を増やしても良かったのだが、そうすると乗れる馬が減ってしまうしで悩ましいところだったんだ」


「調整……? どうやって?」


 と、私がそう問いかけるとアルナーはにっこり笑うだけで何も返さず……何か特別なことでもしていたようだ。


 アルナーがやりそうなことと言うと……薬草とか薬湯だろうか? それで妊娠を防いでいた……のだろうか?


 そんな事を考えているとにっこり笑ったアルナーは、話を変えるためか別の話題を口にする。


「今年の冬は犬人族が40人と少し、メーアがエゼルバルドの妻達と新参メーアの一部で7人出産だからな、余計なことを考えている暇はないだろう。

 予想外の多産もあるかもしれないし……この冬は忙しくなるぞ」


「……今年は多いなと思っていたが、そんな人数だったのか。

 双子三つ子が産まれる可能性もある訳で……もしかしたら凄い数の赤ん坊になるのかもしれないのか。

 それは確かに忙しくなるかもなぁ……まぁ、赤ん坊の世話で忙しくなるのは大歓迎だし、フェンディアやパトリック達も張り切っているから人手は問題なさそうだな」


「フェンディアはともかくパトリック達まで子育ての経験があるとはなぁ……。

 しかも1人や2人じゃなく、数え切れない程とは……」


「神殿で働いていれば誰でもそういう経験はするものらしい。

 神殿に孤児が預けられることは多いし、特にパトリック達は……良い神官兵になりそうな子供を探す、なんて目的もあったようだからなぁ。

 まぁ、子育ての経験があるのはありがたい―――」


 と、そんな会話をしている時だった、突然私達の前に一頭の真っ白い毛の狼が現れる。


 するとアルナーはすぐさま手綱を操り、カーベランを駆けさせようとし始める。


 そうやって狼を驚かせ威圧することで追い払い……私達は怖い存在なのだと、近寄ってはいけない存在なのだと教えるのはとても大事なことらしい。


 フレイムドラゴンに追いやられて草原に逃げてきた狼のほとんどがそうやって追い払われていて……今回もそうしようとするのだが、狼の様子がどうにもおかしく、アルナーは駆けさせる一歩手前で踏みとどまり、私の方を見やる。


「……逃げようともせず、かといって吠えたり威嚇したりする訳でもなく……弱っている、のか?

 とりあえず私が様子を見るから、アルナーは弓を構えていてくれ」


 そんなアルナーにそう声をかけたなら、ベイヤースから飛び降り……狼の方へ近づくと、弱々しい表情を見せた狼はよろけながら前傾姿勢となって戦闘態勢になり……その動き方というか、腹をかばうような様子で狼が妊娠していることが分かる。


 ……妊娠した姿でわざわざ私達の前に出てきたのか……そんな状態なら普通は逃げようとするはずだが、弱ってそれが出来ず仕方なく戦うために前に出てきた……のか?


「子供がいるみたいだ……アルナー、どうする?」


 追い払うのか放っておくのか……あるいは狩るのか、どうするのが良いのかと悩んでアルナーに聞くと、アルナーは「うぅん」と唸ってから言葉を返してくる。


「狼は害獣だ、メーアや馬……時にはユルトの中の私達すら襲うことがある。

 ……が、狼がいなければ草原は成り立たない、あっという間に黒ギーなどの野生の動物が増えて草を食べ尽くしてしまうからだ。

 増え過ぎたり近付き過ぎたりしたなら狩ることもあるが……どちらかと言うと最近は数が減っているようだからな……どうしたものかな」


「……子供が産まれるまで世話をしてやるとかはどうだ?」


「いや、無理だろう、狼は人に懐かないものだ。

 人に媚びず近付かず……だからこそ狼なんだ、懐いたらそれはもう狼ではなくなってしまう。

 ……出来ることはせいぜい寝床と餌を用意してやるくらいだが、そこに居着いてくれるか、餌を食べてくれるかは……なんとも言えないだろうな」


「ふーむ……それならどこかに避難所のような地下室を用意してやって、その入口に餌を置いてやる、くらいかな。

 ……これから出産が始まるイルク村でそれは無理だろうから……どこが良いか……。

 いずれ北の山に戻るなら鉱山辺りが良い、かな?」


「あの辺りならメーアもいないし悪くはないだろう。

 洞人族達ならいざ狼に襲われてもなんとかしてくれそうだし……仕事に熱中しがちな洞人族なら変に構いすぎるということもないだろうしな。

 ……とりあえず荷車でも用意してあそこまで連れていってやるか……それを嫌がったり逃げたりするようなら、それまでだったということだろう」


 と、アルナーがそう言った所で、事態に気付いたのかマスティ氏族の何人かが、物凄い勢いで雪を巻き上げながらこちらに駆けてくる。


 それから私と狼の間に入り込み……狼と私のことを交互に何度も見やる。


 その表情はどこか不安そうで……私が狼を優遇するというか、犬人族より狼を取ると、そんなことを考えているようにも見える。


「その狼は子供を抱えているみたいでな……可哀想だからなんとか世話出来ないかと相談していたんだ。

 それ以上の意味はないから安心して良いぞ」


 と、そう言ってやって顔を撫で回してやると、マスティ氏族達は安堵のため息を吐き出してから、狼に向けてどこか自慢げな顔を向ける。


 すると狼は事態が飲み込めないというか……どこか呆れているような表情になり、それと同時に私達が自分を害する様子はないということを理解したのか、警戒態勢を解く。


 そんな狼の様子を見てマスティ氏族の1人が、自分のためにと持ってきていたのだろう、革袋から干し肉を取り出し……そっと狼の前に置く。


 すると狼は鼻を鳴らしてそれが何であるかを確認し……周囲を確認し、私達の様子を確認し、精一杯の警戒心を見せてから……そっとゆっくりとその干し肉を咥え、ゆっくりと咀嚼し始めるのだった。

 


お読みいただきありがとうございました。


次回は狼やら何やらです

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― 新着の感想 ―
[良い点] 黒ギー「待遇の改善を要望するぞ~」と書かれたボードを首から下げてデモ中 ディアス「なんだあれ?」 ナルバント「たのまれたものでな。それより一寸した仕掛けが有るのじゃが、見たいだろ?見たいだ…
[気になる点] 真っ白い狼ってのがちと…なんだ、謎メーアの手先の様な? ただの保護色、もしくは冬毛なだけですかね。 [一言] >マスティ氏族達は安堵のため息を吐き出してから、狼に向けてどこか自慢げな顔…
[良い点] 狼飼い慣らせるとしても、すでに犬人族が居るから役割被るもんなぁ それはそうと、出産シーズンの到来だけどアルナーの年齢もそろそろ……いける年齢になるよねぇ?? ディアス、いい加減年貢の納め…
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