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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第六章 春を待ちながら

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・登場キャラ紹介


・ディアス

 主人公、人間族。子供の頃、降り積もった雪をがつがつ食べて腹を壊したことがある。


・マーフ・ティベ・マスティ

 犬人族、マスティ氏族長。暇を見つけてはちょくちょく雪を食べている。


・メーア夫婦

 野生のメーア。詳細はまだ謎。


・アルナー

 ヒロイン、鬼人族。犬人族を真似して雪を食べようとしたセナイとアイハンを最近叱ったばかり。


 狼は群れを作り、連携をして狩りをする厄介な獣だ。

 

 狼の群れが村や町、人の領域の近くに現れたなら、群れよりも多くの数を揃えて包囲し、一気に狩る必要があり……そういった集団での狼狩りなら何度か経験したことがある。


 その賢さを活かして完璧に近い連携をし、こちらの弱点を見逃さずに狙いすまし、こちらの連携を的確に崩そうとしてくるのが狼という獣で……そうした習性から私の後方にいるメーア達やマーフを狙ってくるかと警戒していたのだが、そういったことは一切無く……それどころか連携をしようとする素振りすら見せず、ただ愚直に私の喉元目掛けて襲いかかってくる。


「遅い!!」


 そんな声を上げながら私が戦斧を振るうと、攻撃を見切る目はあるのか、黒い狼達は回避しようと身体をひねる……が、一匹が回避しそこねて戦斧の直撃を食らい、真っ二つになる。


 先程と全く同じ展開で仲間の命を失って、流石にやり方を変えるなり、逃げるなりするだろうと考えて警戒をする……が、黒い狼達はそうした様子を一切見せずにただ殺意だけをこちらに向けてくる。


「モンスター……か?」


 狼らしくないというか獣らしくないというか……こちらを殺すことだけを考えているのがいかにもモンスターらしい思考だと言えて、私は狼と相対しているのではなく、モンスターと相対しているのだと思考を切り替えて、構えを取る。


「モンスターだというのに異形の姿では無いとは珍しい!」


 そんな声を上げながら雪を踏み越えるために大股でずんと踏み出して、モンスター達の目前へと戦斧を力いっぱいに叩きつける。


 戦斧が地面に突き刺さり雪が巻き上がり、その衝撃でもってお前達では相手にならないからさっさと逃げろと警告を発するが……モンスター達は一切意に介さず、その牙をむき出しにして襲いかかってくる。


 ウィンドドラゴンの時のように毒をもらって高熱を出すのはごめんだと、戦斧を引き抜きながら私は身体をひねって飛び退り、モンスター達の噛みつき攻撃を少し大げさな動作で回避していく。


 そんな私の様子を見てモンスター達は、ただ真っ直ぐに工夫もなにも無い追撃を加えようと突っ込んできて……私はそれを回避しながら戦斧を小さく鋭く振るい、モンスター達を切り裂いていく。


 ただでさえこちらは似た姿の、似た攻撃法を取るマーフ達との訓練でその動きに慣れているというのに、モンスター達は考えるということを全くせず、ただただ雑に無策に突っ込んで来てしまう。


 モンスターらしい攻撃法もなく、異形の力も無く、ただただ愚直に……。


 モンスターにしても獣としても中途半端というか、モンスターでもないというか獣でもないというか……。

 ナルバントが以前、瘴気が魔物を生み出すとか、瘴気に支配されたのが魔物だとか、そんなことを言っていたが……もしかしてこの狼達は瘴気に支配されている途中なのだろうか?


 これからモンスターとなる、なりかけの獣だとするならば、動きの雑さというか、中途半端さにも納得がいく。


「なんだって瘴気なんかに身を委ねた!」


 通じる訳がないと分かっていながらも、そんな言葉が口をついて出て、同時に振るわれた戦斧が最後のモンスターを切り裂き……それで戦闘は終了となる。


 もしこの8匹が純粋な狼だったのなら、こんなに楽には勝てなかっただろう。

 ……そもそも狼なら最初の一撃を見て逃げてくれるだろうから全く意味のない想定だが、狼ならばもっとずる賢く、厄介な戦い方をしてきたはずだ。


「モンスターなんかになるもんじゃぁないな……」


 戦斧についた血を拭い取りながら死体となったモンスター達に語りかけていると……新たな黒い影が山の方から、雪景色の中をゆっくりと歩いてくる。


 その姿を見て、一体あと何体いるんだと警戒心を強める……が、雪をかき分けながら姿を見せたのは足元に転がるモンスターよりも小さな身体をした、私がよく知っている姿の狼達だった。


 狼達は私達のことを警戒し一定の距離を取りながらも、敵対心は一切見せずに静かにこちらを見やり……私の足元に転がるモンスター達へとなんとも言えない視線を送ってくる。


「……お前達の仲間だったのか?」


 通じるはずもないだろうと思いつつも、そんなことを呟いた私が狼達へとじっと視線を送っていると、マーフがメーア達と共に私の側へとやってきて……狼達のことをしげしげと観察し、口を開く。


「……毛に艶がない、冬なのに毛が膨らんでない。顔も身体も痩せ細ってる……です。

 冬が来るのに獲物を獲れなかった。十分な備えが出来なかった冬の身体を作れなかった……と思います。

 ……だから瘴気の誘惑に負けた……んです、多分」


 群れの仲間が瘴気に負けて、モンスターとなってしまって群れを離れてしまって……そんな連中を瘴気から解放してやるつもりだったのか、ここまで追跡してきたらしい狼達は、ゆっくりと振り返り、山の方へと歩き去っていく。


 その後姿を何も言わずに見守っていると、私達の前へと進み出たメーアの夫婦が、覚悟を決めたような真剣な表情をこちらに向けてくる。


「メァー!」


「メァメァー!」


 力強い夫婦の声を受けて私とマーフは……人馴れしていない、言葉を知らないメーアの謎の一言に、ただ首をかしげることしか出来ないのだった。


 

 ―――― 一方その頃。 イルク村、ディアス達のユルト。


 

 ディアスとマーフがメーアの言葉をどうにか理解しようと奮闘している頃、アルナーはユルトの中で静かに針仕事に精を出していた。


 鞣した革を適当な大きさに切り、そこに革用の大きな針を突き刺し、糸を通して模様を作り出し……手に馴染んだ、アルナーが得意とするメーアの横顔を描いていく。


 独特の鼻につぶらな目、くるりと巻いた角にふわふわの毛。


 メーアを知る者が見たなら誰もが感嘆するような完成度で針を進めていく中……何者かがユルトの前へとやってきて、そこから大きな声を張り上げてくる。


「アルナー様! 東から侵入者です! 多分人間族です! なんかフラフラでした、寒そうでした!

 多分放っておくと雪に埋もれて死んじゃいます! どうしましょう!!」


 それは周囲の見張りに出ていたらしい犬人族の声で……針を良いところまで進めたアルナーは、大きくため息を吐き出し……出来かけの作品をそっと側に置いてから立ち上がる。


 そうしてからユルトの壁に引っ掛けてあった冬服へと手を伸ばし、手に取り身につけながら声を返す。


「私のところに来たということは、今クラウスは手が離せないんだな?

 なら私が確認しにいく! お前達も何人か一緒に来てくれ!」


 その言葉にユルトの外で待機していた犬人族は「わふん!」と声を返し……そうしてから遠吠えをし、仲間たちに今のアルナーの言葉を伝えるのだった。


お読み頂きありがとうございました。


次回はアルナーと、以前ちらっと何かがあった誰か編です。


そしてコミカライズ3巻の発売がいよいよ来週となりました!

今回ページ数の関係でSSはありませんが、特典以外にも色々とオマケがありますので、ご期待いただければと思います!

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― 新着の感想 ―
[一言] てか、こんな冬場にこようとするなんて、愚直すぎるで誰かさん。<多分王命でメーアバダルに向かっていた文官さん 自然淘汰、弱肉強食がならいとはいえ、生きるモノとしては悲しいねぇ(-_-;)…
[一言] まあ雪は食べてみたくなるよねえ 雪国の人は違うのかもしれないけれど
[一言] 狼を番犬にするのも良いかもしれませんねぇ
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