表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/31

追放少女と擬態

契約を交わしてから、数刻。

凪咲とスライムは人気のない草原に腰を下ろしていた。


「ねえ、なぎさ」


小さなスライムが、凪咲を見上げる。


「わたし、人間になりたい、なれるって、聞いたことある、でも、そのためには」


言葉を選びながら、もじもじと身体を揺らすスライム。

凪咲は首を傾げた。


「そのためには?」


「人間のからだを、ちゃんと、ぜんぶ知る必要があるの、だから」


そこで一拍置いて、スライムは意を決したように叫んだ。


「なぎさの、からだにさわらせてほしいの!!」


「え?」


突拍子もない提案に、凪咲はぽかんと口を開けた。

だが、スライムの瞳には真剣な光が宿っている。

下心など微塵もない。純粋に、ただ夢を叶えたくて、必死なのだ。


(ま、まあ……さわるくらいなら、いいか……)


「わ、わかった、好きにしていいよ」


軽い気持ちで許可を出した、その瞬間だった。


ぬるり――。


「うひゃっ!? ちょ、ちょっと、いきなり背中は反則……!」


スライムが柔らかな身体を変形させ、凪咲の背中にぴとりと這い寄る。

くすぐったい。

尋常ではないくらい、くすぐったい。


「ひゃ、あっ、あはっ、だめ、そこっ!」


凪咲は耐えようとするが、くすぐりに弱い彼女の背中を、スライムは執拗に這い回る。

まるで子犬がじゃれるように、ぺたぺた、ぬるぬる、ぺたぺた――。


「が、がまん、がまん……これは、契約の、た、た……」


顔を真っ赤にしながら、必死に堪える凪咲。

そんな努力の甲斐あって、しばらくすると、スライムの身体がふわりと変化した。


ぴちゅん、と小さな音を立て、そこに現れたのは――

凪咲にそっくりな小柄な少女の姿だった。

肌はほんのり透き通り、髪も少しぷるぷるしているが、ぱっと見た限り、完璧な人間の形。


「やったぁ……!」


スライムが、自分の手足を見て嬉しそうにはしゃぐ。


「でもね、なぎさ、このかたち、忘れちゃうの、だから、いちにち一回、また……」


「……また、触るの?」


こくり、とスライムはうなずく。


凪咲は顔を引きつらせた。

(これから毎日、あのくすぐったさに耐えるのか……)


だが、今さら断るわけにはいかない。

これは、自分たちが一緒に生きるための、大事な「契約」なのだから。


「……わかった、が、がんばるよ」


スライムの手を取り、小さく握り返す。

ふにゅ、とやわらかな感触が返ってきた。


こうして、少女とスライムの奇妙な「生活」が始まったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ